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[小説]デブでブスの令嬢は英雄に求愛される 第14話

 パンパカパーン、パーパーパーパンパカパーン!

 早朝から鳴り響く管楽器の音にジュリアはたたき起こされた。玩具のラッパとは違い、随分と迫力がある。
 眠たい目で時計を確認すると時刻は朝4時頃を示している。

「ちょっとぉ、一体何事ぉー?」

 事態を確認しようと目をこすりながら声を上げると、それに応えるようにばたばたとこちらに駆け寄ってくる音が響いた。
 派手な音を立ててドアが乱暴に開く。飛び込んできたのは執事のバルトだった。もう老齢の彼はあまりにも慌てすぎてどこかに腰でも打ったのか、息を切らしながら変な角度にドア枠に寄りかかっている。

「お嬢様! 大変です!」
「大変なのは音を聞けばなんとなくわかるわ」
「とにかく! 窓の外を見てください!!」
「窓の外……?」

 いぶかりながらカーテンを開いて、ジュリアはその光景に絶句した。

 まず見えたのははためく王家の紋章の旗だ。
 その下には大量の騎馬にまたがった騎士達が整然と整列して並んでいた。
 王国近衛兵であることを示す青い軍服に身を包む群れの中で、その先頭に立つ白い馬にまたがった騎士だけが、王家に許される紫色の軍服を身に纏っていた。
 美しい銀色の髪を一つにまとめ、意思の強い金色の瞳が燦めく。
 その双眸が、かなりの距離があるというのに窓越しに除いたジュリアの瞳を射貫いたような気がした。

「…………っ!!」

 ジュリアは思わずカーテンに隠れるようにしてその視線から逃げる。

「ど、ど、ど、どうして! 王女殿下がこんなところにいるのよ……っ!!」

 そう、王国近衛兵達を従えて立つ美しい女騎士はまごうことなくこの国の王女、ミリディアであった。

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