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「りんご音楽祭のオーディションを台湾でやりたいんです」ー突然の電話から始まった、アジア圏アーティストのブッキング【ココが変だよ!りんご音楽祭 vol.10】

長野県松本市で毎年開催される音楽フェス、「りんご音楽祭」。15年目となる今年は9月23日−24日に開催決定!

主催者のdj sleeperを中心に、運営メンバーや、出演者へのインタビューなどを通じて、りんご音楽祭について紐解いていくpodcast「ココが変だよ!りんご音楽祭」。お相手を務めるのは、2001年生まれのフェス初心者、長崎航平。根掘り葉掘り、りんごの魅力を探ります。

「りんご音楽祭2022」開催後、最初の収録となった第10回目のゲストは、台湾を中心にアジア圏からのアーティストをブッキングしている寺尾さん。りんご音楽祭との関わり方、海外アーティストのツアーマネジメントのお話から、台湾と日本のローカルでの音楽シーンまで、お話を聞きました。

台湾に拠点を持ち、アジア圏のアーティストをりんご音楽祭にブッキング。

寺尾さん(左)と、聞き手の長崎(右)

長崎 おひさしぶりの「ココが変だよ!りんご音楽祭」。2022年の本番後、最初の収録です。今回も、今までの収録と同様にゲストをお呼びしてお話を聞いていきたいと思います。早速ですが、自己紹介をお願いします。

寺尾さん 「大浪漫唱片 BIG ROMANTIC RECORDS」というレーベルを運営しつつ、ライブハウス「月見ル君ヲ想フ」を東京と台湾で運営をしております。寺尾と申します、どうぞよろしくお願いします。

長崎 よろしくお願いします。寺尾さんは、普段はどんなことをしているんですか?

寺尾さん 普段は、会社として全国各地のライブハウスやレーベルで、コンサートプロモーターみたいなことをしています。その全体の統括をしながら、個人としてはレーベルの仕事を中心にしているような感じですね。

長崎 台湾と東京にライブハウスがあるということでしたが、コロナ禍の間も台湾には行っていたんですか?

寺尾さん コロナ禍の間は全然動けなくて、台湾の家を畳んで一度東京に戻ってきて、台湾の事業は現地のスタッフに任せていました。去年の末ぐらいからようやく行き来ができるようになってきたので、今は大体月に1回ぐらいは台湾に行っています。

長崎 りんご音楽祭や、主催のsleeperさんとはどういう関わり方をしているんですか?

寺尾さん 特に決まった役割というのはないんですよ。正直、ちょっと自分でもよくわからなくて(笑)。

長崎 (笑)。例えば、去年のりんご音楽祭には寺尾さんも関わっていたんですか?

寺尾さん 去年のりんご音楽祭でいうと、台湾の「deca joins」というバンドと、タイの「KIKI」というバンドは僕がブッキングしたアーティストです。

「りんご音楽祭のオーディションライブを台湾でやりたいんです」主催者・sleeperからの突然の電話

長崎 コロナの前から、寺尾さんはアジア圏のアーティストのブッキングをしていたんですか?

寺尾さん そうですね。台湾を中心に、何年間かにわたってアジアのバンドをブッキングしていました。コロナで海外アーティストの渡航が厳しくなったので一度途絶えていたんですが、去年は久しぶりにブッキングができましたね。

長崎 そもそも、寺尾さんがりんご音楽祭と関わりだしたきっかけは何だったんでしょうか。

寺尾さん 僕は台湾で10年くらいお店をしているので、しばらくずっと台湾にいたんです。その時に、りんご音楽祭主催のsleeperさんから「りんご音楽祭のオーディションを台湾でやりたい」って連絡が来たんです。

長崎 「RINGOOOO A GO-GO」ですね。当時、寺尾さんとsleeperさんとは面識があったんですか?

寺尾さん その時は多分ほぼ面識がなかったんです。いきなり台湾に電話がかかってきました。

長崎 いきなりきたんだ!(笑)

寺尾さん 多分、誰かを仲介して僕の連絡先を知ったんでしょうね。日本のフェスのオーディションを台湾でやるというのは今までなかったので、すごい面白いなと思って「やりましょう!」って即答して。sleeperさん、イケイケじゃないですか。「向かうところ敵なし!」みたいな感じで突っ込んでいく。台湾でオーディションにまつわるいろいろなイベントをして、その中からバンドを一つ選んでりんご音楽祭にブッキングする、みたいなことを2年くらいしたんです。

長崎 それは何年くらい前の話ですか?

寺尾さん まだコロナ前の、6〜7年くらい前ですね。それがりんご音楽祭と僕の関わりのそもそもの始まりです。オーディションをしていくうちに結構いいバンドも応募してくれたりもしたんですけど本当にアマチュアなバンドとかがいろいろ出てきて。こちらでセレクトはしたんですけど、割といいバンドって、自分たちで日本ツアーをできたり、日本のフェスにもブッキングされるような感じの流れが起きたりし始めたんです。

長崎 なるほど、いいバンドを集めるのが難しくなってきたんですね。

寺尾さん そうなんです。自分も元々その分野の仕事もしていたので、オーディションで選ぶのもなかなか苦しいぞと。それに、渡航ビザとかいろんな面を含めて、海外から日本に来てりんごにしか出ないというのはなかなか難しい話なんです。なので、直接こちらからバンドを決めて、ツアーで来日するタイミングでりんごにも出させてもらうという流れに途中から切り替えたんですよ。

長崎 アーティストのツアーの一環でりんごにブッキングする形になったんですね。

寺尾さん それがなかなか調子が良くてですね。こちらも自信を持ってバンドを紹介できるし、sleeperさんも気に入ってくれて。sleeperさんをはじめ、りんごのクルーも台湾のイベントにきてくれて台湾でDJをしてくれる流れも生まれましたし、オーディションはしなくなったけれど、お互いにゆるやかに連帯しているいい関係がコロナ前まで続いてきたんです。

りんご音楽祭を切り替え地点として、「KIKI」と「deca joins」の2バンドのツアーを組んだ2022年

「そばステージ」に出演した「KIKI」

長崎 コロナで一度途切れたものの、今年につながったんですね。今年は2バンドブッキングでしたが、ツアーの一環にりんごを組み込むというのはどういう動きになるんですか?

寺尾さん りんごを切り替え地点として2バンドのツアーをくっつけました。KIKIは大阪の方からツアーをして、りんごのステージがセミファイナル、最後に東京公演。その後、入れ替わりで台湾のdeca joinsがりんごから日本ツアーを始めるという流れですね。

長崎 じゃあ、寺尾さん的には割と忙しいスケジュールですね。

寺尾さん そうですね。ツアーが2つも続くなんてコロナの間はなかなか考えられなかったことですし、久々にいろんな筋肉を使いましたね。でも、楽しかったです。

長崎 寺尾さんご自身も、りんご音楽祭には毎年来ているんですね。

寺尾さん そうですね。台湾のバンドをブッキングしていた頃から、基本的にツアーマネージャーみたいなことをしていたので一緒に来ていましたね。

「りんごステージ」に出演した「deca joins」

長崎 寺尾さんは、コロナ前から長年りんごをみてきたと思うんですが、それを踏まえて昨年のりんごはどうでしたか?

寺尾さん イメージはそんな変わっていないです。コロナの前もコロナの後も、お客さんのノリがいいですね。バンドも好きだけど、DJとかクラブ系も好き、みたいな、バランスがちょうどいいイメージがあります。バンドのグルーヴとかにも反応してくれるお客さんが多いので、そっち系のバンドを紹介しようともしていましたし、実際にお客さんの反応がいいと、すごく嬉しいですね。連れてきたかいがあったなと感じます。コロナ前もコロナ後も、自分の仕事としては非常に満足度が高いです。

りんごはお客さんの反応がいい。「日本のフェス=りんご音楽祭」になる海外アーティーストにとってはいい滑り出しに

長崎 多分、りんごを通じて台湾やタイのバンドを知って、「なんだこのバンドは!?」となるお客さんも多いと思うんですが、逆にバンドのメンバーの皆さんのりんごに対する反応ってどんな感じなんですか?

寺尾さん 彼らも日本のフェスに出まくっているわけではなくて、ほぼ初めての日本でのフェスだったりするので、お客さんの反応がいいのはすごく大事ですね。むしろ、彼らからしたら「日本のフェス=りんご音楽祭」になるんですよ。みんな「楽しかった〜!日本のフェス最高!」って思っていると思いますよ。

長崎 それはありがたいお言葉でもあり、責任重大な感じがしますね。

寺尾さん まあね、でも、巡り合いですから。KIKIは、ライブ前から期待値がかなり高かったんです。2020年くらいかな、sleeperさんのお導きのもと、コロナ禍の中で松本に遊びに行ったんですよ。街にあんまり人がいないような時期にそばを食べたりとか、松本のレコード屋さん「マーキングレコード」に行ったりしたんです。それで、「マーキングレコード」さんでKIKIのレコードが結構売れてるみたいな話が出て、りんごのお客さんも含めて、松本の人もバッチリ好みかもしれない!って。

長崎 開催前から手応えがあったんですね。

寺尾さん そしたら、当日のライブのお客さんの反応もやっぱり良くて。KIKIは、ライブの後に松本の街に行って道端で飲んでたらしいんですけど、りんご帰りのお客さんが通りがかって、「ライブよかったよ!」って話しかけられたり、ハイタッチされたりしたみたいで、めちゃめちゃうれしかったって教えてくれました。

長崎 へー!アーティストとファンが街でコミュニケーションが取れるってすごくいいなぁ。

長崎 毎年りんごにいくつかのアーティストをブッキングしている上で、寺尾さん的な選ぶポイントはあるんですか?

寺尾さん うーん、ありそうでないというか……。一応、りんごのお客さんに受けそうなアーティストを考えるんですけど、まず前提条件として日本ツアーを組めるかどうか次第なので。その上でsleeperさんにプレゼンをしています。まあ、断られるとは思ってないんですけど(笑)。

長崎 (笑)。それだけ自信のあるバンドをピックしているんですね。

寺尾さん 日本ツアーを手掛ける時点で、自信持ってお勧めできるバンドなので、どこに出してもいいと自信持っているのは間違いないです。それを正面から投げると、いつもsleeperさんがドーンと打ち返してくれるんですよ。

松本、台湾。ローカルなシーンでの「ケ」としての音楽のあり方

寺尾さんが下北沢にお店を構える「大浪漫商店」。

長崎 ここまで、りんごとの関わり方や昨年のエピソードをお聞きしてきたんですが、もう一つ大きなテーマとして聞きたいなと思っていることがあるんです。りんごを開催している長野県松本市は東京から少し距離のあるエリアで、sleeperさんはパーティーハウスの「瓦レコード」を運営しながら日々過ごしていて、「ハレ」のイベントであるりんご音楽祭に対し、「ケ」の音楽的な部分に対する難しさがあるそうなんです。寺尾さんは、台湾や日本のクラブやライブハウスをみてきた中で、ローカルでの音楽のありかたについてどう考えていますか?

寺尾さん 「瓦レコード」はやっぱりすごいなと思いますね。古民家ですし、運営方法も面白い。大都市にはない魅力みたいな部分を感じています。運営の難しさがあるのはなんとなく想像できるんですが、あの規模の街ではそれでもうまくやってる方だと思いますね。台湾とかと比べちゃうと、なかなかないことですよ。

長崎 台湾のローカルにも、ああいう場所はあるんですか?

寺尾さん 瓦レコードみたいなオルタナティブなスペースは、台湾の地方にも生まれるんですよ。でも、割と早いサイクルでなくなっていく定めというか。

長崎 台湾でそういうスペースが長続きしない理由はあるんでしょうか?

寺尾さん 瓦レコードって、ちゃんと防音してるじゃないですか。長く続ける前提で、しっかりリソースというかお金をかけていると思うんですよ。台湾だと、ちゃんと防音するというよりは、とりあえず先にやっちゃって、警察を呼ばれて謝るのを繰り返して、最終的に何かが爆発して終わるみたいなことがほとんどだと思うんです。

長崎 防音や苦情の面でいうと、街との関わり方もめちゃくちゃ大事な気がします。やっぱり、sleeperさんが日々街に出ていろんなお店に行っているからこそ、お互いうまいこと譲り合って回っているのが感じられて。

寺尾さん フェスと一体って感じだもんね。フェスがあるからこそ、街に人を呼んで経済効果をもたらしている。そういうプラスの部分をしっかりアピールできてるってことなんじゃないですかね。

「どこの国からきた」という情報よりも、「音」に反応してもらえるかどうか

長崎 今年もりんご音楽祭を開催するんですが、寺尾さんとしてりんごに求めることや、変化していった方がいい部分とか、逆にここは変えて欲しくないなという部分があれば教えていただきたいです。

寺尾さん 続けていくことがまずすごいことだと思います。公園の上でフェスをやって、夜はふもとの街でパーティーみたいな感じっていうのは、崩さずに続けて欲しいな。まあ、今のりんごのままでいいんじゃないですかね。

長崎 今後の寺尾さんのりんごとの関わりとしてはどうですか?

寺尾さん もちろんアジアのバンドをいろいろ日本に呼びたいと思っている中で、ツアーの中で、日本のフェスに出て、ラインナップの中に名前が載るというのは、我々にとっても、バンドの自尊心にとってもすごく重要なフックになるんです。どうしても限界はありますが、出したいアーティストはめちゃくちゃたくさんいます。できればもっとブッキングして、りんごに連れていきたいですね。なんなら、アジアステージがあってもいいんじゃないか、なんて期待していますよ。

長崎 それが実現できたらかなり面白そうですね!

寺尾さん 結構、りんごのお客さんって音に正直だと思うんです。どこの国からきたみたいな情報って実はそんなにいらなくて、「音」に反応するかどうか。そこでせめぎ合いたいんです。りんごでダイレクトな反応をもらえたら、バンドとしても自信につながると思いますし、どこでもやれるようになるんじゃないかな。これからも、できる限りいっぱいブッキングさせて欲しいですね。

長崎 今年のブッキングも楽しみにしています。寺尾さん、今日はありがとうございました!

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