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「子供が売られない世界をつくる」人たち

しばらく住んでいた広島をはなれ福岡の実家に戻ると、NPO法人「かものはし」からーー2018年年次報告書ーーと書かれた冊子が届いていた。

雨に打たれたのか、それは裏山、或いは橋の下に捨てられたエロ本のようによれていたが、たった今「法案の頓挫から生まれた『対話』という一縷の希望」というレポートを読んで、この団体に(毎月千円だけだが)数年間寄付してきて本当良かったなあと思った。

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この団体を知ったのは確かFacebookの広告ページだっと思う。
「子供が売られない社会を作る」という文句、そしてしっかりとした目的意識と活動と共に僕が興味を惹かれたのは、彼らが活動するカンボジアという国名だ。

カンボジアのシェムリアップという都市は、タイの首都バンコクに住んだ一年8ヶ月の間に5回程訪れた思い出深い街だ。アンコールワットのある街、というとピンとくるだろうか。
特に当時この街で触れ合った子供達のことは今も強く印象に残っているし、彼らに大いに癒されもした。そして同時に、この国の子供達の悲しい状況も伝え聞いていた。

「かものはし」は現在、活動の中心地をインドに移動し、日本でも活動を始めるとのこと。
カンボジアでは「ほぼ目的を達成した」からなのだそうだ。

丁度一年前の東南アジア旅行で感じたのは、(18年ぶりとはいえ)カンボジアの凄まじい発展振りだ。
恐らく、彼らが目標達成出来た理由は、彼らやその他の団体の活動と共に、カンボジアの経済発展も大きかったのだろうと思う。

思い出に浸っていてるうちに前置きが長くなったが、この冊子に掲載されているインド事業部ディレクターの清水友美氏の「法案の頓挫から生まれた『対話』という一縷の希望」というインド事業レポートの話だ。

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これがとても良い。

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概略としては「かものはし」と関連グループが関わってきた人身売買阻止の為の法案が国会で審議されるに至った(!)ものの、セックスワーカー系のグループの反対もあり廃案になった。しかし「かものはし」と目的を同じくするグループのリーダー4人がセックスワーカー系のグループに呼ばれて彼らの会議に参加して様々な、新しい認識、思いを得て帰ることになったそう。

清水友美氏は文中で、(人身売買阻止の法案を作る際に)「意図せず、彼ら・彼女たちのアジェンダ(※行動計画、議題など)を自分のアジェンダにすり替えて」(年次報告書p12)いたのではないかと思い悩む。そして、その後廃案を経て、セックスワーカー系のグループが、彼らが法案から排除されていたことにより自分たちの立場、権利が危うくなるのではないかとの不安を持っていたことに気付いた。
清水氏らはそれを糧として、そこから「次の5年」に向けてスタートをきるつもりらしい。

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お世話になった大学の先生は「学問とは、賛否の前に立ち止まることだ」と言っていた。
簡単に賛成、反対を決めるのではなく、様々な観点から様々な立場について考える。
学問とは人類の知恵の結晶だ

ある善行が全ての人を救うとは限らない。
場合によっては「革命」的行動でしか解決しないこともあるだろう。
しかしそれらは多くの犠牲を生み、社会に傷跡を残す。だからこそ立ち止まり、思い、悩み、最良の一歩はどこにあるのかを考えなければならない。

清水氏らの態度は、とても優れた学問的態度と思う。
彼らの着実な歩みがカンボジアを前に進ませ、インドを前進ませるのだろう。

繰り返しになるが、この団体に寄付していて本当に良かったと思った。


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