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匿名超掌編コンテスト!結果発表♡

板野かもさん主催の企画、匿名超掌編コンテストの結果が発表されました!Twitter上で開催されておりまして、私も参加しておりました。

参加のお誘いをいただいてから結果発表まで、Twitterを毎日ながめ、みなさまの作品を拝読し、投票し、500文字の可能性にうなり、驚き、感嘆し、また拝読し、投票しなおし……とても楽しい時間を過ごしていました。

そして、結果発表!

なんと嬉しいことに、私の作品が4位に入賞しました!やったー
6位までが入賞だったのですが、もう1作品は惜しくも7位!残念だけれど、大健闘です。noteのみなさまにも、私の参加作4つ、お読みいただきたく、記事にしました。よろしくお願いします♡


4位入賞作

【交差する朝】

保育園に連れて行くために息子と一緒に家をでる。遊びたいさかりの息子は、今私が鍵をかけたばかりの玄関の、インターホンのチャイムを押す。ピーンポーン。いたずらしないで、と言いかけたとき

「はい」

インターホンごしに返答があった。私はぞっとした。家には誰もいないはずだし、今のは私の声だった。息子はもう興味をなくして歩き始めている。気味が悪かったが聞き違いだろうと自分に言い聞かせ、息子と保育園へ向かう。

息子が私の手を振りほどいて走り出す。大きな交差点を渡ろうとしたときトラックがスピードをあげて向かってきた。危ない! 私は慌てて追いかけたが間に合わない。息子は私の目の前でトラックにはねられた。救急車で運ばれる。意識不明の重体だった。

翌朝、呆然としたままお見舞いに行くしたくをしているとチャイムが鳴った。こんな朝から誰だろう。
「はい」
何の返答もない。まさか……と不思議な感覚に襲われる。物は試しだ。
「待って! 今日は保育園に行っちゃだめ!」
叫んだ。一瞬の静寂。
「ママ?」
振り返ると息子がいた。元気な姿で、怪我もしていない。
「昨日は保育園お休みしたけど、今日は?」
私は息子を思い切り抱きしめた。


7位の作品

【異星人食料問題】

異星人は困っていた。地球人を食べすぎ、食料がなくなってきたからだ。他の星で食料を探してもいいが、地球人ほど美味しい物はない。
異星人の王は会議を始めた。なんとか食糧難を乗り切らなければ。
「地球人養殖計画の担当者は?」
王が言う。
「そろそろ到着するかと思います」
そこへ、地球人養殖計画の担当博士がやってきた。
「恐れながら報告したします。何度も試しましたが地球人は養殖に向いておりません」
「何?」
「基本特定のつがいでしか繁殖せず妊娠期間は10ヶ月。産むのはほとんど一人ずつ。養殖に時間がかかりすぎます」
王は困った。自分たちが先に滅んでしまう。
「そこで私から提案がございます」
「言ってみたまえ」
「地球人は、食物を育てることが得意です。地球人の旨味はその食物由来です」
「つまり?」
「地球人の食物を我々も食べればいいのです」
「地球人を食べずに、地球人の食物を食べる?」
「仰る通り」
「我々には食物を育てる能力はない。よし! 地球人どもを解放し、食物を作らせろ。今後、地球人を喰らうものは死刑だ!」
異星人の王は声高に宣言した。

地球人養殖担当の博士は部屋に戻り、異星人の皮を脱ぐ。
「……長い闘いだった」


43位の作品

【試合終了】

今日の試合に負けたら引退する。38歳、独り身の、おんぼろボクサーだ。でも勝ったら、彼女にプロポーズすると決めている。リングサイドで見守る彼女が見える。大丈夫だ。必ず勝って、ファイトマネーで豪華な指輪を買ってやる。待っていろ。

試合開始のゴングが響く。俺は燃える根性を胸に、若いチャンピオンにくらいつく。まだまだ負けてたまるか。俊敏な相手のリーチをかわし、グッと踏み込む。パンチの応酬はやまない。

セコンドが投げ入れたタオルが白くスローモーションに見えたのと、俺がマットに沈むのは同時だった。12Rの残り10秒。俺は無残に倒れていた。ちくしょう。終わってみれば惨敗だった。セコンドに引きずられるようにリングを降りてグローブをはずす。椅子に座ると体中が痛んだ。
「お疲れさま」
優しい声に顔をあげると彼女がいた。ちくしょう、目が腫れちまってよく見えねえ。
「よく頑張りました」
彼女は、髪を結っていたリボンをほどいて、俺の左手の薬指に巻いた。
「これからもよろしくお願いします」
彼女が俺の手を握る。ちくしょう、涙でかすんでよく見えねえ。試合は終わったが、俺の人生はこれからみたいだ。


80位の作品

【試食で試作】

派遣でバイトをしているスーパーの試食コーナーに毎日来る男の客がいる。私がウインナーを焼いていると、必ず「仕事、何時に終わるの?」と話しかけてくる。かなり年上の、おっさん。服装は少しだらしなくて、小太り。気持ち悪いし怖いから、愛想笑いをしてやりすごす。本当はバイト先を変えたいけれど、大学の研究も忙しいから、自由な時間に働ける派遣バイトは気にいっている。時給もいいし、あの男さえいなければ、良いバイトなのだ。

男は今日も来た。
「仕事、何時に終わるの? 待ってるからお茶しようよ」
「そういうのはできない決まりなんですよ」
「そんな硬いこと言わないでさ」
「いやー、そうもいかないんですよー」
私はホットプレートで焼いたウインナーを男に勧める。
「こちらどうぞ」
「ふふふ、ありがとう」
そう言うと男は「あーん」と口を開けた。私は震える手でトングをつかみ、男の口の中にウインナーをそっと置いた。
「おお熱い。うまい! ありがとう」
笑いながら男は帰っていった。

翌日から男は来なくなった。ニュースである男が死んだと報じられている。大学で研究している薬品の効果を試すことができて、私はほっとした。これで単位がとれそうだ。


以上4作品の応募でした。
とても細やかな配慮をしてくださる運営さんで、楽しく参加できました。匿名だとどなたの作品か本当にわからなくて(笑)そこも楽しかったです!また匿名コンテストがありましたら、ぜひ参加したいと思います♡
企画運営の板野かもさん、お誘いいただいた涼雨さん、私の声かけで参加してくださったみなさん、本当にありがとうございました。そして私に投票してくださった方々、感謝いたします。

おわり!

おもしろいと思っていただけましたら、サポートしていただけると、ますますやる気が出ます!