最近、新車を買った。
　妻よりも若くて可愛い彼女を乗せてドライブするためだ。
　妻は何も知らない。僕が浮気していることも、この車で彼女とデートしていることも。僕が車を買っても、妻には妻の車があるので何の興味もないようだったし、夜中に帰っても妻は大抵寝ていた。
　僕の大切な車に異変が起きたのは、買ってしばらくしてからだった。
　助手席に小さな芽が出てきたのだ。それは日ごとに大きくなって、助手席を覆うほどに繁ってしまった。当然彼女も気味悪がって乗ってくれない。
「ムリ！　気持ちわる！」
　とうとう彼女にフラれた後、僕が意気消沈して家に帰ると、いつになく機嫌の良さそうな妻がにっこりと笑って言った。
「最近、ガーデニング始めたの。ふかふかの草のクッション作ってるのよ。害虫は退治しようと思って、毎日しっかりと見張ってたんだ。運転席にも撒いておいたから、今度ふたりでドライブに行きましょ。そろそろ私も乗せてよね、あなた」