この100日の間、きっと多くの人が注目し、その結末を待ち焦がれたであろう四コマ漫画「100日後に死ぬワニ」。
Twitter上に投稿された四コマ漫画がなぜこれほどまでに反響を呼んだのか。
心理学の見地から分析したい。

**「100日後に死ぬワニ」とは？ **

この記事をご覧いただいている諸兄には不要のことかと思われるが念のため。「100日後に死ぬワニ」とは主人公の「ワニ」とその友人の動物たちの日常を淡々と描く、きくちゆうき氏による四コマ漫画のことである。掲載媒体はTwitterで1日に1話ずつ投稿された。2019年12月12日より連載が開始され、2020年3月20日に最終回である100日目を迎え、連載は終了している。

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バズった要因その①カウントダウン効果**

毎日必ず1話ずつ投稿され、リアルタイム進行で、〇日後に死ぬ運命が決定づけられているワニの死ぬまでの日常を描くこの漫画。
特筆すべき点は、四コマの枠外に明確に示される「死まであと〇日」の文字にある。
100日後という明確な期限があり、その期限に向け「あと〇日」とカウントダウンをとることは人の心を動かす作用をもっている。
我々も日常生活でカウントダウンをする機会があるだろう。
カウントダウンが持つ効果の一つに「緊急性をアピールすることで、行動を促そう」というものがある。ネット通販などで見かける「セール終了まであと〇時間〇〇分」という表示は見る人に切迫感を与え、「あと〇時間〇〇分以内に購入しないと損をしてしまう」という印象を与えることができる。
人には「損失回避の法則」という、得をすることよりも損をすることを嫌う性質がある。
この場合のカウントダウンでは「損をしてしまう」までの時間を明示し、強く意識させるため、損失を回避する行動を促すような効果をもっている。
だが今回の「100日後に死ぬワニ」のカウントダウンは違う。
1年に1回、世界中でカウントダウンが行われる日がある。
そう、大晦日だ。
新年を迎えるカウントダウンは期限に到達する高揚感を促進させ、またカウントダウンをする人たちと同じ時間を共有する一体感を造成する効果をもつ。
今回の「100日後に死ぬワニ」の死までのカウントダウンは後者の効果が色濃く表れている。
カウントダウンがゼロに近づくにつれ、マスコミでも取り上げられ、投稿へのRT、いいねの数は加速度的に増加した。また「死まであと10日」を切ったときから、多くの著名人がこの漫画に言及をし始めた。
明確な「100日」という期限に向け、カウントダウンを行ったことは、Twitter という場において、大きな高揚感と、ともにカウントダウンを見守る一体感を生み出したのである。

バズった要因その②カリギュラ効果

「100日後に死ぬワニ」。
このタイトルで一番キャッチーな部分は「死」だろう。
「死」は誰にでも必ず訪れるものであり、かつそれは予測不可で突然やってくる。
実際この漫画のワニは「死まであと1日」時点では元気な姿をみせていた。
「死」はそれほどにも我々の近くにある存在なのだ。
だが、それを普段から意識して生活している人は数少ない。それどころか、「死」を不浄や穢れとして、タブー視してきた歴史がある。
「死」は我々の近くにありながらも目を背けられ、また遠ざけられてきたものだったのだ。
だが、タブー視されればされるほど、触れたくなる心理現象がある。
それが「カリギュラ効果」だ。「押すなよ、絶対押すなよ」と言われると押したくなるダチョウ倶楽部のアレである。
「死」は非常にセンシティブなテーマだが、その分見る人を惹きつけるエンターテインメント性をもっているのである。

カウントダウン効果とカリギュラ効果を活用したヒット作

「100日後に死ぬワニ」をバズらせた2つの心理効果についておさらいしておこう。
カウントダウン効果は明確な期限があり、その期限にたどり着くまで高揚感と一体感を作り出すことであり、カリギュラ効果はタブー視されているものには触れたくなる心理的作用が働くことをいう。
「100日後に死ぬワニ」以外にもこの2つの心理効果を最大限利用し、ヒットを連発してきた作品がある。
その作品とはそう、「出会って4秒で合体」である。
「出会って4秒で合体」とはAV業界に即ハメというジャンルを確立させた偉大な作品群のことである。
撮影現場などで打ち合わせをしている最中、突然全裸の男が現れ、驚いている女優におかまいなしに挿入する。それが「出会って4秒で合体」である
明確な期限があり、R-18作品という、日常社会では忌避される性的な要素が盛り込まれているこの作品群はヒットを飛ばし続けている。
もちろんこのほかにも、心理学的素養を盛り込みヒットした作品は数多くあるので、ぜひ探してみてほしい。
それではみなさま、よき倫理を。
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