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【ショートエッセイ】翳りゆく展望台

上空300m、そこからこの巨大な街を一望できる。
ぼくはお袋は車椅子に乗せて、360°パノラマを見て回る。
お袋はぼくに気兼ねして、申し訳なさそうな顔をしている。

展望台はガラス張りで一周するのに30分くらいかかる。
ぼくは車椅子を少し進めては立ち止まり、少し進めては立ち止まり、それを何度となく繰り返す。

お袋は15歳で田舎から出てきて、住みたくもない眼下の街に何十年も住み続けてきた。
苦労してぼくらを育ててくれたから、この街のあちこちに出掛けて行くこともなかった。
そんなお袋にこの街への執着などあるのだろうか。

でもお袋は何も言わずにじっとこの街の風景を眺めている。ぼくが車椅子を動かすまで・・・。

車椅子を動かす間隔が少しずつ長くなる。
いつのまにか展望台に夕陽が差し込んでいた。


ある休日、高齢の母と出かけて息子が思ったこと、、、。


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