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逃れがたい無花果フリーク

私は、果物を材料に使ったごはんをこよなく愛している。

酢豚のパイナップルが許せないとか、なんでサラダに柿が入っているんだとか、気持ちはわかる。わかるのだが、私は好きだ。ハンバーグに載ったほんのりあたたかいパイナップルの、ふわっとやわらかい酸味が好きだ。柿とクリームチーズを細長く切って、生ハムで巻いたものは本当に美味しいから一度食べてほしい。口の中で渾然一体になった瞬間を永遠にしたくなることうけあい。

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ところで、今が旬のいちじくの話をしよう。
私はいちじくがとても好きだ。何ともいえない、やわらかさとあまさ……じゅくじゅくと豊潤な果汁。

独特の実の部分は、実は花なのだそうだ。内側に花をつける形を、隠頭花序(いんとうかじょ)と呼ぶ。まるで花をつけずに実をつけるよう。そこから「無花果」とあてられたそうだ。隠頭花序、なにか秘密のおまじないみたいな響きがして好き。

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露地物のいちじくは8月から10月に旬を迎えるのだそうで、この時期はよくお目にかかれてとてもわくわくする。

私は「メルヘン」という名前のサンドイッチやさんがとても好きで、あわよくば理由をつけて買いに行くのだけど、この間行ったらいちじくのサンドイッチが並んでいた。

メルヘンにはたくさんの種類のフルーツサンドがあって、私はいつも迷いに迷ってひとつ選ぶ(イチゴと甘夏とか、マスカットとかミックスとか、いろいろあるのだ。次は絶対、鮮やかにみっちりつまったマンゴーを買いたいとか思いながらも、誘惑が多すぎて実現していない)のだけど、いちじくは初めて見た。

大胆に真ん中にひとつ入り、半分に切られて断面が見えている。生クリームがふんわりとまわりをおおっていて、いちじくの厚みで中央が少し膨らんでいる。比較的白くてやわらかそうなサンドイッチだった。
普段は散々迷うのに、秒で決めた。

わくわくと会社で包みをはがす。
かぶりつくとやっぱり柔らかくて、いちじくそのもののせいなのか、果汁か何かが混ざっているのか、生クリームがあまく香る。じゅんわりと果汁があふれる。幸せ。一瞬で消える食パン2枚。あまりに美味しくて後輩ちゃんに一口勧めてしまい、ほんの少しだけ後悔した午後一時。

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ところで、昨日は所用で新潟に行ったのだけど、おなかを空かせてたまたま転がりこんだお店で
「いちじくとゴルゴンゾーラのピッツァ」というサイコーなお昼ごはんを食べた。
そもそも、ピザはおいしいし、チーズも美味しいし、いちじくは最高なのでこのピザが美味しくない訳がない。さらに蜂蜜もかかる。勝利である。確定された勝利。

私はクワトロフォルマッジというチーズの権化みたいなピザ(4種類のチーズをこれでもかとのせて焼いて、蜂蜜をかけてたべるやつ)がすごく好きだ。好きなのだけど、ひとりで食べるとややチーズに負けて、頭のてっぺんから足の先までチーズの気持ちになってしまいがち。

このいちじくとゴルゴンゾーラのすごいところは、いちじくの包容力だった。たっぷりの果汁でいいかんじに小麦粉とチーズの圧を加減してくれるところ。一面に載る大量のいちじくをにこにこと眺められるところ。
しあわせとは、ええ、ここにあるのでした。

そもそもここのピザ、生地がもっちもちでとても美味しかったのでたぶん大当たりだったみたい。

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この3連休は食に恵まれすぎていたのでその更新もしたい。
少なくとも2kgくらい増えてそうなのだけど、測ってないから実質シュレディンガーなのです。

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