見出し画像

2002年からの武術エッセイ

月を指す指の形や手の形を事細かに説明しても、その指が、その手が月を指していなければ、まるっきり見当違いとなる。

曇った日の夜空、そぼ降る雨の夜空を指差して、月が出ているときに指差した形そのままに空を指差したからといって、月が出てくるはずもない。

大切なのは、月が出ているときに指差す、指や手の形ではなく、月を指差すこころ持ちである。

最初に月ありき。
そして、心あり。
次にその思いを伝える形式としての指、手・・・・。

月を見ないで、その心持を形式のみで伝えることは不可能である。
たとえ、どんなに美しい指で、手で月を指差すかたちをつくってみても、その指先が月を夜空に輝かせることなど、ありはしない。

2005年4月記す。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?