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マーケティングレンズ vol.7 - マーケティングとデザインの関係を学ぼう

こんにちは!マーケティングレンズ運営の太田です。

有志が集まって多面的にマーケティングを学ぶコミュニティ、マーケティングレンズ。発足から半年以上が経ち、なんと今回で7回目をむかえました。

今回取り扱うテーマは、マーケティングとデザイン。スキンケアブランドAesopのメルボルン本社でクリエイティブディレクターを務めた経験のある白鳥浩子さんをお招きし、白鳥さんご自身の経験をもとに、マーケティングとクリエイティブが一緒にストーリーを形づくっていくためのヒントを伺いました。

白鳥浩子さん プロフィール
家具・空間のデザイナー・メイカー・ディレクター。
東京造形大学で家具デザイン、ロンドンのチェルシー大学で空間デザインを専攻後、英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)のデザインプロダクツを2006年に修了。スキンケアブランドAesopのクリエイティブディレクション経験から、現在はクリエイティブディレクション、ブランドコンサルテーションも手掛ける。デザインコレクティブスタジオOKAYstudioの創立メンバー。

それでは、第7回イベント「マーケティングとデザインの関係を学ぼう」をレポートします。

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デザインとマーケティングの関係

白鳥さん:もともとのバックグラウンドは、家具や空間といった立体系のデザイン。なので、設計したときに、ある程度のレベルで施工の話はできますし、小さな小屋くらいなら自分で建てられます。様々なブランドに関わってきましたが、Aesopとは10年くらいのお付き合いがあり、10年のうち2年ほどはメルボルンの本社でクリエイティブチームのトップもつとめています。デザインの観点から「どのようにブランド性を高めて、ビジネスを成り立たせていくか」を考えてきました。

今回のテーマは「マーケティングとデザインの関係」ですが、本当はデザインとマーケティングは共通の傘がなければつながることが稀なグループだと思っています。

でも会社やブランドという文脈においたときに、その二つはつながって、ストーリーを一緒に作っていく共同制作者になる。

今回のサブテーマは、ストーリーと〇〇づくりです。デザインの人間は「ストーリーと『もの』づくり」をおこなっていて、マーケティングの人間は「ストーリーと『こと』づくり」をしていると考えています。そして、ものづくり、ことづくりの両方がないと、そのストーリーは実現しない。

ということで、ものづくり、ことづくりいずれもの観点から今までやってきたことをお話します。

Case1. 人とつながるイベント

こちらは、イギリスの大学院時代にデザイナー仲間と関わった「人とつながる」イベントの写真。人とつながる機会作りとして食の場を、空間、コンテンツ、メニューまで全て作っています。(飲食店を営業するライセンスがないという状況を逆手に取り、デザインしたテーブルマットの購入=参加費とするなどのシステムの工夫も)

このイベントは、参加者はゲストを一人のみしか連れてこれないルールで運営されていたため、必然的に数珠つなぎにコミュニティが拡大してゆきました。

大学院の友人たちとOKAYstudioを創立したのもこの時期です。それぞれ個人でやりたいけど、大学院を卒業したばかりでお金がなく場所もなかった。解決策として、共同で場所を借り、機材を購入し、展覧会にもグループとして参加することでPR、ロジスティックのコストや労力をシェアし効率を上げ、6人それぞれが活動できるような仕組みをつくりました。

PR、と考えずPR的に事を考えていたのだな、と後々思い返します。今でもOKAYstudioという名前は存在しており、ゆるいからこそ、ずっとつながっていけるという関係を仲間たちと築けています。

Case 2. コトをつくるDIYというイベント

ビザの関係で日本へ戻ってからドーナツ屋さんのブランドづくりなど少しつづ面白い人・プロジェクトに関われるようになってきた中、「ものをつくる」だけではこと足らず、「ことをつくる」活動もおこなうようになりました。

その一つが、「DIY」というイベントです。本屋さんで編集者の人、ミュージシャンでWEBデザイナーの人、グラフィックデザイナーでアートディレクターの人と私(白鳥さん)という4人組みで企画。自分たちの強い部分をいかしながら、広義な意味でのクリエイター(物をつくっている人から、コーヒーを淹れる人まで!)を60人くらいあつめてイベントをおこないました。

このイベントでポイントだったのが、このイベントだけに使用できる特別な貨幣「i(愛)」をつくったこと。「ものをつくる愛情(i)を交換する」という考えかたで、このイベントに参加するためには、特別な貨幣「i」へ換金する必要がある、というフレームワークです。場所づくりやプリントづくりなど様々なクリエイションが生まれ、非常にクリエイティブな取り組みとなりました。

ちなみに、写真に写っているグラフィックの絵柄は、DIY(Iはハートの形)をもじった形になっています。

Case 3. Aesopでのブランドづくり

そんな活動をおこなっているうちに、とうとうAesopにも巻き込まれるようになりました。

創業者とはイギリスにいたときに知り合っており、今では10年以上の付き合いになります。

相談をうけた当時から、本質的に何がしたいかという哲学をしっかりと持っているブランドでした。ただ、まだ小さな会社だったため、カウンターを出している百貨店などを相手に強いスタンスが取れず、ブランドとして意図しないリクエストを受けることもしばしば。たとえば百貨店に「うちのお客さまへは、必ずリボンをつけなくてはいけない」と言われた時に、現場で「Aesopの哲学からそれはやらない」と戦いきることができなかったのです。ブランドとしては本質的に何へ到達したいかを明確にもっていたので、その哲学をローカルに言語化していく手助けを始めたのがブランドとのお付き合いのきっかけです。

当時のAesopは、マーケティングという部署は存在していましたが、一般的なデータ分析や計画からブランドの方針を主導していくという雰囲気ではなく、より広いエリアの人々が「素敵なものや素敵なことをつくりたくて、それを表現していくそれがマーケティングカレンダー」というような環境で、私自身広義のマーケティングというものをその体験から学んでいったように感じています。

たとえば、クリスマスのギフトパック。コスメブランドだとクリスマスにはコフレをつくるのが一般的ですが、Aesopは「せっかくクリスマスという人が集まるタイミングで仕掛けをするのであれば、お客さまと一緒にコンテンツをシェアしたい。何か一つのテーマに関して一緒に考え始めるきっかけをつくりたい」という考えかたをもっていました。

そこで、とある年に設定したテーマは、「フューチャリスト(未来派)」。フューチャリストは動きや機械がテーマのムーブメントだったので、その音楽や詩をビジュアル化してパッケージにいれたり(上図)、中にフューチャリストについてのコラムを記載したり、マリネッティさんという癖のあるリズムの暴力的な詩の朗読を店舗で流したりと、世界観のつくりこみをおこない、集まるお客さまと一緒にフューチャリストに関して考えるスターティングポイントをつくりあげました。

共有している哲学をもとに、Aesopというストーリーのコマをつくっていく作業を、クリエイティブもマーケティングもそれぞれが自然におこなうようにしていたのです。

ストーリーを作っていくという営み

ブランドやストーリーをつくる作業は、更地に新しい街をつくる作業に似ています。土地があって、ここに人を誘致したいという意図がある。

「ここが街です」と場所を定義したら、マーケティング・クリエイティブの両方が、自分たちの感性で商品やデザイン、キャンペーンやイベントを配置していくような営みです。

街の中に新しいストーリーを作るときに、先に枠組みが必要になります。たとえば、BAKEさんでRINGOというブランドをつくった時に意識したのは、先にアイデンティティを明確化すること。

それまでのBAKEさんは、まず商材をつくり後からパッケージや店舗がついてくるような進めかたのため、後からブレてしまうリスクがありました。そこでRINGOでは、先にコンセプトを言語化し、ブランドに必要な物を洗い出して書き出すようにしていました。

街づくりは一人では実現できないので、枠組みづくりの段階から、多くの人間を巻き込んでいく必要があります。枠組みをみんなで合意した上でしっかり形づくり、シナプスができてから、それぞれの分野のプロフェッショナルが肉付けをしていくことによって街ができていく。ストーリーはそのように構築できると考えています。

ブランド表現をさぐる上でヒントとなる擬人化

ブランドの表現を検討するにあたって、役立つ視点が擬人化です。「Aesopさんの性格だったら、その表現ははずかしく思うのではないか」「Aesopさんだったら、そのイベントに足を運びたいか」こういった視点を持つことによって、なにがブランドにとってOKで、なにがNGかをチームで共有することが可能になります。

擬人化することは、自分がその場所や商品に対してしっかりと接してはじめて可能になります。その場所や商品の魅力を言語化していくことによって、可能性を広げていくのです。

こういう時にはこう表現する、と固めてつくってしまうと、アイデアが広がりにくくなってしまいますが、パーソナリティを規定しておけばブレずに表現の幅を広げることができます。たとえば、「この子は普段はこのような格好だけれども、ハレの日にはこんな格好もするんだ」という風に、割と突飛な表現もパーソナリティを理解することで、チームで腹落ちがしやすくなるので、おすすめです。

マーケティングの観点もデザインの観点も踏まえた上で、まずは枠組み(ブランドのアイデンティティ)をかためて、そこにそれぞれが肉付けをしていくことで、ひとつのストーリーを一緒につくりあげることができると考えています。

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以上が、白鳥さんに伺った「マーケティングとデザインの関係」に関するインプット編の内容になります。

インプットをいかして、「この夏のキャンペーン」を考える

白鳥さんに伺ったインプット編をふまえたワークショップのお題は、参加者それぞれが自分のビジネスにおける「この夏のキャンペーン」を考えることです。

インプット編でたくさんのインスピレーションをいただいたこともあり、それぞれのビジネスやブランドがどのようなパーソナリティをもっていて、だからこんな施策なのだ、とディスカッションが活発に行われていました。

なによりも印象的だったのが、参加者の皆さんがわくわくしながらワークを進めているように感じられたこと。「クリエイティブ」というと一見限られたセンスのある人しか手が出せない領域に思えてしまい、「クリエイティブ職」ではない人にとってはアイデアを出すハードルが高くなってしまいます。今回は、擬人化の視点をいかしながら、こんなアイデアもいけるかなとそれぞれが楽しみながらアイデアを出しているように感じられたのが運営にとって嬉しい一幕でした。

白鳥さん、ありがとうございました!

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次回のマーケティングレンズ実施に関しては、facebookページでご案内しますので、ぜひ以下のリンクから「フォロー」いただけると嬉しいです。

過去のイベントレポートは、以下よりご覧ください。

vol.1: Marketing Lens キックオフ
vol.2: 商品やプロモーションを考えるきっかけを捉えよう
vol.3: 「ファンがつく企画」ができるまでを学ぼう
vol.4: アイデアを実行する段取り方を学ぼう
vol.5: 他者とのうまいコラボレーションを学ぼう
vol.6: お客様に寄り添うブランドになる取り組みを学ぼう

今後もマーケティングレンズを、よろしくお願いいたします。

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