【いまさら】真田丸見た感想

初恋の相手は堺雅人、当時7歳でした。毎週正座待機して見ていた新選組、その第4回に彼は現れました。
あれから12年、永遠の我が想い人が大河主演を務めたわけですが、どうして私がリアルタイムで見なかったのか。はい、浪人していました。
その後もいろいろあってなかなか見る機会がなかったのですが、NHKオンデマンドに真田丸が登場し、自分はニートになったので(!)、絶好の機会ということで真田丸を見始めたのですが。。。

草刈正雄主演?

もともと真田幸村は名前がかっこいいってだけで実際活躍したのは親父の真田昌幸(草刈正雄)ということは知っていが、史実上仕方ないのに加えて全体的に堺雅人の演技に疑問あり(後述)。話を動かす中心は昌幸、秀吉、そして家康なので、信繁は主演というより回し役、バラエティでいうところのMCみたいな立ち位置になっていた。というか堺雅人が草刈正雄に完全に食われてるんだよな。昌幸が九度山で死ぬまでの約40回、ほとんど草刈正雄が主演していました。最後の10話くらいは堺雅人主演だったんだけどそれまでと比べてぐっとつまらなくなったんだよなあ。

名優が揃い踏みの中、雁字搦めの堺雅人

内野聖陽の徳川家康がブチ抜いて印象的だが、北条氏政の高嶋政伸、上杉景勝の遠藤健一など大名たちは皆まさに”大御所”。最も好きなシーンはこの3人+昌幸による、氏政説得失敗シーン。その面子に昌幸は入らんやろという野暮なツッコミをする気が失せる。氏政はどこで道を誤ったのか、いや誤っていなかったのか、考える言葉すら世迷言となってしまうような達観、哀愁があった。あれはあの大御所おじさん俳優ならでは、若人には無理です。
いけすかねえ三成をやってくれた俺たち三谷組の山本耕史もよかった。途中水かぶったのは身体見せたかっただけだと思う絶対。

それに対して堺雅人、始終半沢直樹やらされてて本当にかわいそう。皆好き好きに演技している中、MC半沢はまともに回さないといけないからつまらない演技させられていました。彼の気持ちはわからないけどもっと自由にやりたかったのでは?
同じく半沢きっかけで映画ドラマ界のおもちゃにされている片岡愛之助は真面目で誠実な大谷吉継がとても合っていたというのに。
VIVANTでも感じたが、半沢直樹を演じたこと(そしてそれが爆発的ヒットをしたこと)は”演劇人”堺雅人にとってマイナスの方が大きかったのでは。2012年頃までは彼はもっといろいろ自由にやっていた。同じ押し付けがましさでも、『恋愛新党』みたいな引き出しもあるのにずっとあの顔させられててかわいそう。もう10年経ったし、堺雅人のことを半沢キャラから解放してやってくれ。

戦国末期作品の壁 「俳優の格」

だが最後の10話がつまらなかったのは堺雅人ひとりのせいではないです。もちろん昌幸が死んだからでもない。最大の原因は、出てくる人の格が落ちたこと。
当然ながら戦国武将は年老いて死んでゆき、運よく長生きした家康が世をゲットする頃になると、大名の格が下がる下がる。だって家康より秀忠を立派な俳優にするわけにもいかないし、それは前田でも北条でも一緒。しかも最後傾きかけた大坂に集まるのは負けて落ち延びた浪人たち。そら戦国大名の大御所俳優たちと比べたら、俳優の格も下げざるを得ない。はっきり言って登場人物も演じる人も小粒すぎて、見ていてどうでもよくなってしまう。視聴者はあの凄まじい前半を見ているので興醒めしてしまうんですな。主語大きすぎ?私だけ?

この問題、戦乱末期を扱う歴史作品では避けては通れぬ道だと思っている。基本的に歴史は男の歴史、戦いの歴史。平和な世を生きて歴史に名を残すことは難しく、できたとしてもそれは戦乱の世とは違う軸(体制の安定化や文化)なので、戦乱の世の価値観で見ると格落ち感が否めなくなってしまう。『独眼竜政宗』とかどうやって乗り切ったんだろう。
もちろん2023年の家康みたいに「そもそも主演俳優の格が演じる役の格に追いついていないので、周りも格を合わせざるを得ない結果全体の作品のレベルが落ちる」みたいなものもあるけど、それはまあ、これ以前の問題として。

女を馬鹿or聖母に描く常套手段

大蔵卿局と茶々のことは悪く言っていいんですよ、事実だから。家康の大砲っぶっ放す作戦もこいつらの愚かしさをよく読んでいたとつくづく思う。
けど、ありえないようなおっちょこちょいで猪突猛進な馬鹿に描いたり、男に理解のある聖母に描くのを多用するの、ちょっとしんどかったな。
代表的なのは最初の嫁・梅(黒木華)と幼馴染きり(長澤まさみ)。
梅はずっと聖母キャラだったが制止を振り切って戦いに出て戦死。よくある「お前を守るためにどれだけの人が」パターン。よくある演出だけど、こんなに立場を理解できてない人間いないって。一方きりも典型的なケア役で、馬鹿で騒々しいけど一途に慕い続けてくれるという男にとっては夢のような。長澤まさみだし。
どっちもそんなわけねえだろ。女はリアリティがなく解像度低いことが多々あって違和感がちょいちょいある。男たちはみんなあんなに面白く描くのに?
歴史においては皆「誰々の娘」「誰々の妻」でしかなく、実は役に立っていようが実際は役に立っていなかろうがその程度の扱いでしか書くことができないのだから、もっと丁寧に創作していいのでは。言い換えると当時の女は利口でも出来たことは男の役に立つことまでで、世の中を動かし進めることではなかったのだからこそ、話を進めるための便利なきっかけ役として適当に女ヨイショしたり馬鹿にするのではなく、きちんと独立したひとりの人間として創作してあげてほしいと思ってしまう。
ちゃんと書いていたのはガラシャや阿茶局。やはり歴史に残っていたからかな。

個人的に気に入った役・俳優

大御所おじさん俳優たちのことはわざわざ書くまでもないので割愛。

  1. 直江兼続(村上新悟)
    天地人を見てなかったので知らなかったのですが忠義者大好物なので真ん中ストライク。あと声がいい。村上新悟さんの作品もっと見たい。

  2. 石田治部(山本耕史)・大谷刑部(片岡愛之助)
    三成の基本嫌味に描かれがちなところはきちんと残しながら、三成を応援したくもなるという描き方の塩梅がいい。秀吉の悪の部分を

  3. 武田勝頼(平岳大)
    即死ぬがいい男。歴史的には武田を滅ぼしただけの理由がある人物として描かれているが、彼は無能なわけではなく普通なだけだったんだろうなと感じさせる。俳優が好きなだけかも?

  4. 秀頼(中川大志)
    後半10回の厳しい中では、秀頼役の中川大志くんがかなり頑張ってた。

総評

中1の頃に『文・堺雅人』が発売されてしまったせいで、堺雅人は私の脳味噌の中枢に入り込み、もはや私の一部になっている。私にとって堺雅人は好きな俳優を超えて教祖のような存在なのです。
その聖典での堺雅人と真田丸48回分の堺雅人に落差を感じている。本当にこれですか?VIVANTも見たのでその感想も追って書きますがもっと酷かった。やはりもう一度『新選組』を見るしかない。

同じく三谷作品の『鎌倉殿の13人』も見ました。真田丸を★3.5とするなら鎌倉殿は★4.8。(ちなみにVIVANTは★2.2くらい。)今どちらかを見ようと思っているなら圧倒的に鎌倉殿をお勧めしたい。

聚楽亭、一度見てみたかったな〜。

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