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柚木麻子さん『ついでにジェントルメン』で心を浄化

大好きな柚木麻子さんの小説を、1冊ずつ読み進めています。
題して「柚木さんを読破しようキャンペーン」
ま、それは良いのですが…今回はこちら。
『ついでにジェントルメン』

この表紙も美しいですよね。こういうのも読んでいて気持ちがあがります。
さて、こちらは短編集です。
文藝春秋社にある菊池寛の銅像がおしゃべりする最初の短編。
美容整形をしようとしたが、そこで出会った世界の童話集を読んで気持ちが変わり、そして人生が動き出した女性。
女性専用車両にわざと乗り込んで、何がしたかったのか、の男性。

さまざまな場面を切り取りながら、世間を描き出します。
少しずれているようにも見えますが、そのずれを書き出すことで、皮肉にも現実にますます近づいているようにも見えるという不思議さ。

秀逸なのは、とある鮨屋の話です。
隠れ家的な、こだわりの鮨屋。そこは不倫や訳ありを望む男性が女性を連れてくるのにうってつけの店。店を切り盛りする男性から、客にいたるまで暗黙の了解で成り立つホモソな空間です。
そこに乱入?するのは卒乳を記念するという女性。赤ちゃんを括り付けたままです。しかし、その女性のふるまい、オーダーなどは、板前さんの上を行く知識量。が、それがゆえに微妙な均衡が一気に崩れます。
並みいる女性たちも、目が覚めたように自分としての行動に出ます。
ホモソかつミソジニーだった空間が、オセロの盤面が一気に色が変わるかのように変わっていくさまは、心から喝采を叫びたい気持ちになります。

この読書による心の浄化。柚木さんならではの味わいでもあり、これが味わえるからまたやめられないのですね。

大塚にかつてあった「女子専用アパート」の様子をいきいきと書いたものもまた、カラフルで素敵です。は?ということが起きますが、それもまたクリアしていくところに菊池寛が登場。
ちょっと菊池寛ってこんなに現代的なのかしら?と疑問に思ったら、またあの本の出番です。

こちらの本に菊池寛について生き生きと描かれています。
自分でも再読してみようと思います。
厚い本だけど…(笑)

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