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【本のご紹介】 森口佑介 「自分をコントロールする力」

森口佑介 「自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学」 (講談社現代新書 2019年)

 最近手元に届いた「教育心理学年報 第62集」(日本教育心理学会)にも、論文が2本掲載されていたように、心理学界では近年、非認知スキルあるいは社会情動的スキルに関心が集まっているようで。

 本書は、一般の方でも「非認知スキル」を理解するのに格好の入門書。社会生活におけるパフォーマンスでは、狭義の認知スキル(学習や記憶、測定されたIQなど)よりも、(ここでは「自分をコントロールする力」といった)非認知的能力が大切なのだ、と説きます。

ただ、「非認知スキル」「社会情動的スキル」「実行機能」といった諸概念の、定義や関係性がまだ定まっておらず(学問的には)混乱気味であることは否めません。本書は、「非認知スキル」≒「実行機能」≒「自分をコントロールする力」という前提で論じていますが、それも少々“怪しい”と感じられます。

 この“怪しさ”は、著者自身の問題よりも、この分野自体が学問的に未成熟であることに由来していると思うので、その限界を踏まえた上で読んでみれば、有意義な発見があるかもしれません。

 以下有料部分(当面の間、無料公開です)では、上記の「諸概念の定義や関係性の曖昧さ」について記しています。よろしければご参照ください。


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