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【本のご紹介】 中北浩爾 「自公政権とは何か-『連立』にみる強さの正体」

中北浩爾 「自公政権とは何か-『連立』にみる強さの正体」 (ちくま新書 2019年)

 中北先生の著作を立て続けに3つ(本書含め)読んだ。

 結論からいうと、これまためちゃくちゃ面白かった。政治というものが“ちゃんとした”学問の対象となるのだと、初めて知った気がします。35年前に出会っていたら、政治学志していたかも、というくらい笑。お勧めです。

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 自民・公明両党の協力と連立は、野党時代の中断をはさんでおよそ二十年(本書出版時点では16年以上)続いており、政治的には一強状態である。対する野党は、かつて民主党が社民党・国民新党との連立維持に失敗し、その後多党に分裂し政治的結集の可能性は限りなく低いままである。本書は、自公政権の強さを支える「連立」のあり方を丁寧に探る。

 「連立」とは、選挙における候補者調整や各種選挙協力(選挙ポスターに友党有力者と一緒に写るなど)、政策のすり合わせと調整システムの構築、内閣や議会でのポスト配分…など、さまざまな要素を含む営みである(初めてちゃんと理解した…)。自公政権は、不足を互いに補い合い(地方に強く個人後援会や各種団体の固定票をもつ自民党と、都市部に強く創価学会の強固な地盤を持つ公明党)、必ずしも近くない政策距離を調整する仕組みを機能させる、巧みな連立方策をとっていることが明かされる。さらに、自民党のマイナーパートナーへの深い配慮にも言及している。自民党の“懐の深さ”は、自社さ政権(村山富市総理)でも発揮されていたという。

 対して、野党の側には、稚拙な連立方略が目立つ。本書では特に、小沢一郎氏の強引ともいえる政治手法にたびたび言及しているが、そもそも「連立」をめぐる様々な調整が不十分で、マイナーパートナーへの配慮も不足していた様子が伺える。

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 紹介したい内容は多々あるにもかかわらず、書き手(私)の力量不足がもどかしい。ぜひ手にとってもらいたい。新書としてはややボリューミー(約360頁)だけど。

 ちょっと毒吐きますが、私の相談室「りら カウンセリング&コンサルテーション」が立地する東京・小金井市は、ごみ処理問題(自前の処理施設を持たず、市外に搬出して処理してもらっている)や市庁舎移設問題、公設保育園廃止をめぐる混乱、都道建設の停滞…などなど課題山積なのです。にも関わらず、各党・会派(特にそれぞれの“反対派”)が一歩も譲らず市議会が膠着しているので、何らかの調整システム(や人望のある人)が機能することが強く強く望まれるのですが…。その意味でも、本書はいろいろ示唆を与えてくれました(地方政治には、選挙制度に由来する別の難しさがあるようですが)。繰り返しますが、お勧めです!

(おわり)

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