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どこかで つぼみがひらいた つぼみは ひみつのじゅもんをつぶやいた そのじゅもんを かぜがはこび どこかで さびしくたちどまっているひとの みみたぶをそっとなでた それはあまりにささやかで そのだれかはきづかないけれど だいじょうぶ だいじょうぶ なぜだか そんな気がしてきて どこかのだれかは あるきだす あしもとを 月がてらしている
かれていく やさしいいろになっていく にがいおもいでも カフェオレいろになって とけていく ぼやけていく うすれていく
風のない しずかな午後 足元にいちまいの枯れ葉がおちてきた ひとつぶの涙のようにおちてきた こんにちは さようなら この世のすべては こんにちは さようなら
おもちゃのぶどうのような ちいさな実を くちいっぱいにほおばって かおやらてやら むらさきにそめた こぎつねが そこいらへんにいたらいいのに とおもいながら むらさきしきぶのわきとおりすぎたら おとといきいたふうりんくらいに かすかなかすかな こんっというこえが きこえたきがした
散る散る満ちる 満ちていく きょうという日のどこかにも しあわせがきっとかくれている
じぶんには もう 光はいらないのです ねむりながら やさしい灯台になって あたりをてらしています
枝からはなれた枯れ葉が 北風の子とあそびました おいかけっこして おしくらまんじゅうして あそんであそんで あそびつかれてねむっています
ふゆがれの木が ほおきになって 空を掃いています 浮遊していた だれかのためいきも 青空に溶けていきます
おひさまのひかりをうけて うまれたての おひさまのこどものように ひかっている わらっている きのうとも あしたともちがう きょうのひかりをあびて
冬芽のおなかを ぱかっとわれば ちいさな春がかくれている その春のなかには さらにちいさな夏が そして夏には秋が 秋には冬が… マトリョーシカのように 季節は次の季節を内包している どこまでも どこまでも この星のつづくかぎり
ちりそうでちらない 線香花火のおしまいの火玉のように 柿の実がひかっています 火花の舞う あの かすかな音が どこからかきこえてくるようです
すてきな地図がありました どこかにきっと こんなまちがあるのです 鐘がなったり 焼きたてのパンのいい匂いがしたり 猫やら亀やらがあるいていたりするのです
かれはが おちて くだけて まざって だれがだれだったか どこでどうしていたか だんだん わからなくなって いつしか 生も死も とけあって みんなで おなじ ゆめをみている
枯れ葉が はらりと舞いながら 心の底におちてきた 枯れ葉は 言葉になって 心の底から舞いあがり 空へとんでいく 架空の、 あるいは ほんとうの空へ