マガジンのカバー画像

みちくさ幻想日記

381
道端でみかけた草花の写真と、ほんのひとことふたこと。
運営しているクリエイター

記事一覧

だいじょうぶ

どこかで つぼみがひらいた  つぼみは ひみつのじゅもんをつぶやいた  そのじゅもんを かぜがはこび  どこかで さびしくたちどまっているひとの  みみたぶをそっとなでた  それはあまりにささやかで  そのだれかはきづかないけれど  だいじょうぶ だいじょうぶ  なぜだか そんな気がしてきて  どこかのだれかは あるきだす  あしもとを 月がてらしている

カフェオレいろ

かれていく やさしいいろになっていく にがいおもいでも カフェオレいろになって とけていく ぼやけていく  うすれていく

こんにちは さようなら

風のない しずかな午後  足元にいちまいの枯れ葉がおちてきた  ひとつぶの涙のようにおちてきた こんにちは さようなら この世のすべては こんにちは さようなら

こぎつね

おもちゃのぶどうのような ちいさな実を  くちいっぱいにほおばって  かおやらてやら むらさきにそめた こぎつねが  そこいらへんにいたらいいのに  とおもいながら  むらさきしきぶのわきとおりすぎたら  おとといきいたふうりんくらいに  かすかなかすかな  こんっというこえが きこえたきがした

散る散る満ちる

散る散る満ちる 満ちていく きょうという日のどこかにも しあわせがきっとかくれている

やさしい灯台

じぶんには もう 光はいらないのです ねむりながら やさしい灯台になって あたりをてらしています

北風と枯れ葉

枝からはなれた枯れ葉が 北風の子とあそびました おいかけっこして おしくらまんじゅうして あそんであそんで あそびつかれてねむっています

ほおき

ふゆがれの木が ほおきになって 空を掃いています 浮遊していた  だれかのためいきも 青空に溶けていきます

柿の実

おひさまのひかりをうけて うまれたての おひさまのこどものように ひかっている わらっている きのうとも  あしたともちがう きょうのひかりをあびて

マトリョーシカ

冬芽のおなかを ぱかっとわれば ちいさな春がかくれている その春のなかには  さらにちいさな夏が そして夏には秋が 秋には冬が… マトリョーシカのように 季節は次の季節を内包している どこまでも どこまでも この星のつづくかぎり

線香花火

ちりそうでちらない 線香花火のおしまいの火玉のように 柿の実がひかっています 火花の舞う あの  かすかな音が どこからかきこえてくるようです

つたの地図

すてきな地図がありました どこかにきっと こんなまちがあるのです 鐘がなったり 焼きたてのパンのいい匂いがしたり 猫やら亀やらがあるいていたりするのです

かれは

かれはが おちて  くだけて まざって だれがだれだったか  どこでどうしていたか だんだん わからなくなって いつしか 生も死も とけあって みんなで おなじ ゆめをみている

枯れ葉の言葉

枯れ葉が  はらりと舞いながら 心の底におちてきた 枯れ葉は  言葉になって 心の底から舞いあがり 空へとんでいく 架空の、 あるいは ほんとうの空へ