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映画を楽しむということ

 下まつ毛が長すぎる…。
 映画をみるようになったきっかけはこれだった。たまたま上映されていた映画をみる機会があったのだけど、俳優さんの顔がアップになるシーンで下まつ毛の長さに驚きながらそこがかわいいと思った。恐らくこの情報だけで作品の特定ができそう。この時みたのはアベンジャーズ(1作品目)だった。アメコミについて何も知らないから星条旗の服を着てる人は戦い方が地道で大変そうだな、としか感じてなかった。でも下まつ毛の人が気になったので帰ってアイアンマンをみた。下まつ毛をたくさん見れるどころではない。トニースタークという男の全てがかわいかった。ジャーヴィスとの掛け合いもかわいい。ペッパーやハッピーとのやりとりもかわいい。あだ名センスもかわいい。かわいいの渋滞。
 この頃のMCU(MCUという略称も浸透してない頃)はまだディズニーではなかったころで次の作品は本当にくるのかどうか、というのは公開される作品のヒット次第という感じだっただろうし、新作を匂わせる終わり方をしても完全に鵜呑みにもしていなかった。今じゃ当たり前になったよね。

 きっかけが俳優さんの顔のパーツだったので、そこからは俳優さん繋がりで色んな作品をみた。だんだんと映画をみることに慣れてきたころは俳優さん繋がりから抜け出して気になったものを手にとるようになったしドラマもみるようになった。面白いのかつまらないのか、よくわからないものや下品すぎるものも当然あるけれど、ほどよく規模が小さい作品はみていて心地よかった。映画鑑賞しながらふけていく夜が好きになった。映画という媒体を通してこの体験が好きなんだと思った。

 この辺りで私が感じたのは規模の大きなエンタメ作品よりもドラマ性のある小品集のような映画を撮りたい俳優さんや監督さんが多そうだなぁ、ということ。好きなアングルからカットを撮って影響を受けて培ってきた知識と経験を活かした脚本を綴って演じたいんだろうな、って。でも好きなことをするにはお金がかかるし知名度も高くないと観客も来ない。だからこそヒットを当てなきゃならない。好きなことをするって肩の力を抜くようなフレーズのようで難しい。現にアベンジャーズで私のような人間が映画をみるようになったのだから。

 "映画が楽しい"という感情に対して壁にぶち当たったことがある。それは俳優さんの訃報が続いたとき。
 それなりに長生きしてやり遂げていて…だったらショックはそれほど大きくなかったと思う。しかし、まだ若くて未来もあってこれから先も楽しみだな、と思ってた方々が次々と事故や病気で他界した。さすがにきつかった。当たり前なんだけど実在する方を応援するということはこういうことと向き合わなければならないのか、と実感した。

 それからは映画と距離を置いている。

 映画って情緒を揺さぶられるし内容によってはストレスもかかる。私はね。物語だからその作用は意図的に組み込まれているので当然のことなのだけれど、受け取るにはそれなりに気持ちに余裕と体力がないといけない。さらに楽しむには物語にある余白について考えて没入したい。
 今はその気力がない。
 数をこなす、という鑑賞が私には向いてないっぽい。また映画を手に取れる時はどんな時の私なんだろう。

 楽しい内容を書こうとしたけれど無理でした。でも私のような落ち込みを経験した方がいたなら、あなただけではないよということが伝わればいいと思う。