超時空城には、ぞくぞくと不自由な世界からの逃亡者たちが救助されていた。

無数にあるいろいろなタイプの不自由な世界からいろいろな体験者たちが超時空城に来ていた。

その中には、人型の体験者もいたし、鳥型の体験者もいたし、水生型の体験者もいたし、犬型や猫型や牛型や豚型や馬型や羊型やトカゲ型など実に様々な姿でやってきていた。

超時空城では、皆、テレパシーが使えるようになっていたのでテレパシーでいろいろ話をしている。

いろいろなタイプのスピアがそれぞれの体験者たちに付き添って、いろいろ案内役をしてくれている。

付き添いのスピアたちは変身自由自在なので、それぞれの種族の姿に変身して案内してくれている。

人型には、人型で、鳥型には鳥型で、水生型には水生型で…超時空城での生活に必要な案内をしている。

「ここ超時空城では、それぞれに完全プライベート世界がもらえるんだよ。いらなければ貰わなくてもいいんだけど、やっぱり一つはあった方がいいよね。

ああ、使い方？　そんな難しいことは考えなくていいんだよ。

ただ君が望む世界を考えるだけでその世界が勝手に出現するんだよ。

え？　なにも望まなかったら？　

そりゃ、何も望まなかったら何も出現しないだけだよ。

でも、ずっと何も望まないって結構難しいよ…やってみればわかると思うけど…」

などと、その付き添っている人型の意識と会話している。

鳥型の意識には、無理に羽ばたかなくても超時空城では飛べるのだとか説明したりしている。

水生型の意識が「ここには水がない！」とパニックになっていると水のある世界をその周囲に臨時で創造してあげたりもしている。

狭い家畜小屋でひどい目にあっていた牛型の意識たちなどがビクビクして怯えていると、ここは安全だから心配いらないよという感じで母牛の姿に変身して舐めてあげたりもしている。

知性の高い意識もいるし、知性の低い意識もいた。

知性の低いタイプの意識たちには、付き添って一緒に遊ぶことでゆっくりと超時空城に慣れていってもらう方針のようだ。

スピアたちはもともと根っからの遊び好きなので、その明るい遊び好きの雰囲気が伝わってトラウマをもって避難してきた意識たちも次第に愉快に遊べるようになってゆくようだ。

知性の高いタイプの意識たちには、その知性や理解度に応じて、ちゃんとした説明もしている。

鳥型の中のカラス型の意識などは、なかなか知性が高かったので、あれこれと込み入った質問などをしていた。

すぐに変身術までマスターしてしまって、全身を黒から白とか青とか赤とかに変えて、これはすごい…などと感心している。

見ていると、とうとうカラス天狗という人型もどきにまで変身してしまった。

人型の意識たちの中には、自分は人間なので他の動物たちとは違っていろんな意味で高等で特別だとか思っている者も結構いた。

スピアたちが愉快に人型から犬型や豚型などに変身して、さあ、君たちも変身してみなよ！などと言うと、「侮辱してるのか！」などと激怒する者などもいた。

しかし、スピアたちは互いに顔を見合わせて笑っている。

「我々は人間であり、犬や豚ではない！」などと怒る意識にスピアたちは、説明をはじめた。

「あのね、大丈夫、いつでも姿は自由に変えれるんだから、いつでも元に戻れるんだから、小さいことは気にしなくていいんだよ」

などと説明するが、その意識は、そんな説明ではぜんぜん受け入れられないようで、首を振り振りしている。

そこで学者風のスピアが出てきて説明を交代した。

「いいかい、君たちは、体験者であって、人型の体験装置ではないのだよ。そこをまず理解しなければならないよ。

君たちの元いた世界では、着物というものをまとっていたようだけど、あれと同じと思えばいいよ。

君たちは着物ではなくて、その中にいる体験者なのだよ。

別にカラス型の着物だろうが、人型の着物だろうが、豚型の着物だろうが、ああ、そうか、着物じゃなくてそう、君たちの世界にあった着ぐるみってやつだな……そうした着ぐるみだと思えばいいんだよ。

どんなタイプの着ぐるみを着ても、別に中身は同じだろう？

嫌なら着替えればいいんだから、そんなことで怒ることなどないんだよ。

そもそも着ぐるみを一種類しか選べないなど、不自由極まりなく、遊べる範囲も狭まってしまってつまらないだろう？

そんなことでは、遊びの達人にはなれないよ。

そんな意識でいるのはつまらないので、意識をもっと自由に持つ方がいいんだよ。

え？　性別も自由に変えれるのかって？　当然だろう？　」

そんな説明を聞いていた人型の意識たちは、それなら……と興味を示す者も出てき始めた。

中には積極的に…それならはやく分身術も教えてくれと言い始める者などもいた。

分身術は変身術よりも難易度が高いので変身ができるようになってからね…などと説明を受けて残念そうにしている。

「その場合は、意識を管理する意識も育成して、その管理する意識で自分の意識を複数に分裂させなければならないのだよ……」

などと学者スピアが説明するも、他のスピアたちがそれはまだ早すぎると止めに入った。

あまり先走りすぎると、問題が発生することもあるらしい。

自分の中に生み出したキャラ同士が喧嘩しはじめたり、変なキャラが勝手に生まれてきてしまったり、コントロール不能になったり…と、いろいろあるらしい。

しかし、超時空城では万が一そうなっても時空間超越しているので「元に戻る機能」を使うとすべて問題発生以前の状態に復元できる。

避難者たちは、そうしたことが可能だと知ると果敢に変身術や分身術にチャレンジしはじめた。

彼らが自分が人型や鳥型や牛型や豚型の着ぐるみではなく、体験者であるということをひとたび理解すると一気に変身術や分身術の習得が容易になった。

自分が体験者であるという自覚ができると、他の種族の者たちもその中身が体験者であると思えるようになり、元の種族の違いを超越した仲間意識なども芽生えるようになった。

みんな体験者として仲間なんだと思えるようになったのだ。

その仲間意識をもって他の体験者たちと演劇ゲームなどをすると非常に楽しめることにも気づきはじめた。

演劇ゲームを楽しみながら、彼らはどんどんと変身術や分身術や演劇のシナリオを自分で描く能力や演技力などを習得していった。

そうなってくると、それを自分用の完全プライベート世界に逆輸入し、自分が望むシナリオでありとあらゆるドラマをスタンドアロンで楽しめるようになっていった。

そうなると、元いた不自由な世界がそれが夢の世界であると気づいても自力で目を覚ませないようなとんでもない悪夢のような世界であったと感じるようになった。

とある不自由な世界では、その現実と呼ばれる悪夢の中でさらに眠っている状態でも別の悪夢を見せられる……というさらに不自由な状態だった。

またさらにその悪夢の中で家畜用の檻や刑務所やブラック企業や恐怖政治国家……などと呼ばれる各種の檻などに入れられるという念入りな監獄状態も発生していたことも理解するようになった。

彼らはそうしたことを理解すると、なぜ超時空城でそうした世界が不自由な世界と呼ばれているかを実感を伴って理解できるようになった。

なぜ不自由な世界が不自由な世界のまま存続することを超時空城が認めないのか……その理由を理解できるようになった。

そうしたことに気づくと、元人型の意識たちは、自分たちが人型の着ぐるみを着続けて、そうした不自由な状態に生き残り続けたいと切に願っていた時があったことを思い出して身震いした。