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【ゼミの紹介】データサイエンス学部の法律ゼミ

立正大学データサイエンス学部 准教授 南部あゆみ

データサイエンス学部で法律に触れてみる。

■「だます」を考える

 南部ゼミは、データサイエンス学部内の情報法ゼミです。そのためゼミ生の中には、法律の勉強は初めてというメンバーもいます。今回は、そのような南部ゼミでおこなったレクリエーションの1つをご紹介します。

 Xは、Yが所有する版画(本件版画)について、売買の交渉をもちかけた。本件版画は、世界的に人気のある作家の作品であるが、Yは「本来なら200万円の値がつくところだが、状態が良くないので150万円でおゆずりします」と言った。Xは本件版画を150万円で購入した。
 しかしその後、Xが本件版画を200万円で転売しようとしたところ、相手方から「この作家の版画は500~600万円が相場であり、200万円で買えるはずがない。信用できない。」と断られた。
 Xは本件版画を鑑定に出し、贋作(=にせもの)であることが判明した。贋作の価値は1000円ほどである。本件版画には作家のサインが入っていたが、これも印刷されたものであった。

 この場合に、売主Yが買主Xをだましたといえるか否かを話し合うゲームです。ただし、判断するには事実(情報)が足りません。そこで、グループごとにカード(シナリオカード)を何枚か選びます。例えばY(売主)の人物像カードには、美術品の輸出入販売業者/個人コレクター/美術品を大量に相続したが全く興味のない素人の3枚が用意されており、ここから1枚を選びます。
 次に、手元にそろったカードの情報をもとに、直感的に「だました」と言えるかどうかを判断してもらいました。ゼミ生たちが、悩むことなく「だましただろう」と判断したのが、Y(売主)がプロの業者・X(買主)が美術品に関しては素人の消費者、という組み合わせです。逆にゼミ生たちを悩ませたのは、Y(売主)が素人のカードのときでした。そこで次に、なぜ直感的にそう判断したのか、理由を考えてもらいました。

シナリオカードの一部

■自分の直感を分析する

 話し合う中で、まず「だました」というためには、売主がウソをついている必要があることに気づきました。さらにウソをつくということは、売主は版画が贋作だと分かっていたはずだという意見が出されました。そのため売主が素人の場合、ゼミ生たちは「贋作だと気づいていない=ウソをついていないのではないか?」と悩んだのです。
 同じように、「だました」というために必要な、買主の条件も考えます。このように、次々と「自分がどの点を判断材料にしたのか」を探していきました。

■〇〇とは何か

 法律は、言葉をとても大切にします。例えば、だますことを欺罔行為(ぎもうこうい)や欺く行為(あざむくこうい)と言いますが、これには①ウソをつくこと②相手がウソを信じることを要します。また、例えばウソだと分かっていながら訂正しないのは欺罔行為といえるのか等、様々なケースを検討します。
 上記のゲームは、法律の勉強に必要な、言葉に対する姿勢を経験するための試みでした。他にも「業界内では、売主は、偽物ばかりを扱う要注意人物として知られていました。」などの意地悪なカードを多数用意し、手元のカードを入れ替えながら、結論とその理由を考えていきました。

■法律ゼミではあるけれど

 南部ゼミは法律を取り扱います。しかしゼミ生は法律に詳しくありませんし、法解釈論を繰り広げる予定もありません。それよりも、自分たちが日々使っているデータやインターネットの問題点について、考えるための方法を学んでほしいのです。
 問題を素通りせず、ウソの情報に流されることなく、自分で苦労して考えるというのは、情報があふれる状況では極めて難しいことです。だからこそ、そのための道筋をゼミという場で身につけてほしいと願っています。

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