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【授業紹介】地域経済へのアプローチ

立正大学データサイエンス学部 教授 西崎文平

地域の経済に関する理論やデータの扱い方を学ぶ『地域経済』の授業を紹介します。

■小さな島の歴史に学ぶ

 この科目は、受講者が地域経済学の要点を理解したうえで、都道府県や市町村などのデータを使った分析ができるようになることをめざしています。授業では、地域経済の動きを説明するための理論モデル、我が国で実施されてきた地域政策などを紹介しつつ、それらを検証するためのデータの読み方、扱い方を解説しています。
 とりわけ理論モデルは教科書を読むだけでは頭に入りにくいので、できるだけ直観に訴えるストーリーを示し、受講者の記憶に残るように心がけています。たとえば、地域の経済成長には「域外から稼ぐ力のある産業」の存在が鍵になる、というモデルがあります。このモデルを理解する一助として、瀬戸内海に浮かぶ人口3000人程度の直島(なおしま)町をとりあげました。直島はリゾート地として知られていますが、金属精錬工場の企業城下町として発展してきました。その歴史はじつにドラマチックで、公害・環境問題や世界経済の動きへの対応といった論点が凝縮されており、受講者にはそれを追体験しながら「地域の発展はいかにして可能か」を考えてもらっています。

直島の風景(筆者撮影)

■コロナ禍と地域の景気

 国内の各地域はたがいに幅広く交易をしており、お金や情報の行き来も盛んなため、景気の良し悪しは、おおむね連動する傾向にあります。東海地方の景気が悪いときは関東地方の景気も悪いのがふつうです。それでも、景気の動きにズレが出ることはあり、その要因が何かを探ることは重要です。最も基本的な要因は産業構造の違いで、たとえば東海地方の経済は自動車産業がけん引しているので、海外の景気が悪くなって自動車の買い控えが起きると、日本車の輸出も減って他の地域より大きな影響を受ける、という具合です。
 コロナ禍は日本経済に大きな影響をおよぼしましたが、地域経済への影響にはやはり違いがありました。まず、感染者数など直接的な影響に地域差がありました。また、コロナ禍は飲食・宿泊などのサービス産業を直撃したため、そうした産業に依存している地域は影響が大きくなりました。製造業では、中国での工場閉鎖、世界的な半導体不足などが、関連する業種での生産の停滞をもたらし、業種構成の違いをつうじて地域差を生んだとみられます。こうした現象は数値データでも確認できますが、商売に携わっている方々の声を分析することで、ストーリーを組み立てながら理解することができます。

コロナ発生直後の現場の声(内閣府「景気ウォッチャー調査(2020年1月)」より作成)

■研究テーマを考える

 以上のように、地域の経済成長や景気の動きについてモデルやデータの扱い方を学びながら、受講者は地域経済のさまざまな論点を知り、各自が興味をもつテーマをみつけていくことが期待されます。そこで、授業がある程度進んだ段階で、今後研究を深めてみたいテーマを各自にあげてもらうことにしています。日本経済の構造的な課題から、実家のある町の将来展望まで、多くのテーマが寄せられましたが、それらのキーワードをまとめると、地域間の所得格差や人口移動への関心が強いようです。このような作業をつうじて、受講者は、これまでに学習した内容を整理するとともに、必要なデータの有無など実際上の問題を意識するようになってほしいと考えています。

「受講者が今後研究を深めたいテーマ」のキーワード

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