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夏至が近づくときにまた


 この頃はすっかり秋になってしまった。
今年の夏は自分にとって出産という人生最大のイベントがあったから、季節が変わってしまうことが余計に寂しい。

 私は日が長い時期が大好きで、今年は臨月に差しかかっていたけど、友人達と夏至パーティーをした。

 コロナ以降ほとんど会えていなかった友人達は、私が分かりやすい妊婦になっている姿を見るのは初めてだった。

  夏至パーティーと言うのは、「1年で夜が一番短い夏至の日に電気をつけずに過ごしてみよう」というエコキャンペーンのような呼びかけで私が子どもの頃実家でやっていた。

 わざわざ実家の一階の自営業の店まで電気を消して、近所の友達と家族と暗闇の中で蝋燭を灯してご飯を食べて楽しかった思い出がある。

 そんなことを思い出して、子供が生まれたら出来ないからどうしてもやりたいと私が言い、颯人くん(夫)と大好きな友人2人を呼んで家中に100均で買った蝋燭を置いて日が暮れるのをゆっくり楽しんだ。 

 まだ明るいうちから家にある材料でラタトゥイユを作って、友人が買ってきてくれた焼き立ての食パン1斤をちぎったり、またもう1人の友人が持ってきてくれた彼女の恋人作のチャーシュー(これがまためちゃくちゃ上手い)を分け合って食べた。

 皆大学時代の友人なので、卒業後方々に散ってしまった友人にゲリラでビデオ通話をしたりして、気づけば23時だった。

 残っていた友人が自転車で通りを走りすぎていくのを見届けたあと、私たちはカラカラになったり皿に溶け出したりしている蝋燭たちを片付けた。
真っ暗になってしまったから、まあいっか、と電気をつけた。

 蛍光灯がつくとさっきまで蝋燭の光っていた部屋はどこか別の場所だったみたいに感じる。

 きっと、来年からは夏至が来るたびに、ああもうすぐ娘の誕生日だなぁと思うようになるんだろう。
それを今から楽しみに、冬をぬくぬく生き抜くことを考える。

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