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スカスカの豆腐みたいな


ビックリした。
自分の記憶力の弱さにだ。

いや、あの時東京に行ったのはもちろん覚えているけれども、涼が手土産にゆし豆腐を持って行ったことが全く記憶からすっぽ抜けているのよ。
今考えてもそんな面白いこと忘れてるなんて、どうなんだ俺の記憶力。

正直、豆腐に関しての記憶というか思い出もかなり薄い。
君が書いていた、巨大な食缶を天秤棒でぶら下げて売り歩く豆腐屋さんの姿も見たことが無いんだけど、まぁそれは住んでる地域差もあったのかもしれないね。
ウチの場合は真喜屋の記憶と近くて、近所の商店のレジ近くに分厚いまな板の上にドカンと置かれた巨大な白い塊。その上には濡らした木綿の布がかけられていて、お客が求めると店のおばちゃんが菜切り包丁で切り分けてた……と思うんだが、その記憶も曖昧だ。
買った豆腐はどうやって持ち帰ったのか。ビニール袋等に入れてもらったのか、自分で鍋とか容れ物を持って行ってたのか、そこすら覚えてない始末だ。
よっぽどテレビドラマで見た、ラッパを鳴らしながら自転車で売り歩く東京下町の豆腐屋さんのイメージの方が脳にこびりついているようだ。

いつの間にか、巨大な白い塊は姿を消し、平たいバットの中に豆腐やゆし豆腐がビニール袋に入れられ並べられている光景になり、さらにはプラのケースに納まった、真喜屋言うところの<水の中に漂うか弱い>感じの「島豆腐」という商品に取って代わられた。

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そう、「島豆腐」だ。昔からそんな風に呼んでた?
昔はただ単に「豆腐」だったんじゃないか?
「島ぞうり」じゃなくて「ぞうり」だったし、「沖縄そば」じゃなくて「そば」だったんじゃないか?
(あー、ぞうりじゃなくて「サバ」とか、そばじゃなくて「すば」だ!という話はまたややこしくなるので、ひとまず勘弁してくれ)

本土復帰後、法律のなんやらで<水の中に漂う>状態で売れ!と言われたものの、なんじゃかんじゃあって、今まで通り売ることが認められたって話は、いくら歴史に暗い俺でも知ってるけれども、「島豆腐」って呼び方はきっとその後に言われるようになった(あるいは一般的になった)と思うんだよね。
つまり、絹ごしや木綿豆腐とはまた別の「島豆腐」というカテゴリが出来てしまったんじゃないかと。
(えっと、昔っから島豆腐って言ってましたよ。というんなら、これまた勘弁してくれ。なにしろ俺は記憶力がスカスカの豆腐みたいなもんなんだ)

まあそれはそれでいい。無意味に「沖縄の豆腐も<豆腐>と呼べ!」なんてったら、ややこしい諍いが起こるのは間違いないし。それに「島豆腐」という地位、いや称号を得たんなら、それは誇るべき事だ。
でも、アチコーコーの豆腐は姿を消してしまって、<水の中に漂うか弱い島豆腐>が残ってしまったりするのは、なんだか変な感じだねえ。

ヨシミでした。
ではまた。
2022/02/03

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