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父公認の、母の恋人たち(ポリアモリーの子どもから見た母の恋人)

母と3人の恋人。

まるでケラさん(ケラリーノ・サンドロヴィッチ)の舞台のタイトルのよう。フランス映画の女優みたいにコケティッシュな緒川たまきさん演じる女性に翻弄される3人の恋人たち。

大倉孝二さん演じるちょっと抜けてて憎めない年下の恋人や、
みのすけさん演じる一見、まともそうで非常識な恋人……。

そんな戯曲があれば見てみたい。でも現実は芝居みたいに美しくない。


母の恋人(1)はイジリー岡田似

母はずっと父と婚姻関係を残したまま
恋人(1)も、恋人(2)も、恋人(3)も
いわば父公認で付き合っていた。

綺麗な言葉で言えば「ポリアモリー」の関係。
ポリアモリー夫婦の子どもから見た母の恋人たち。

母の最初の恋人は、イジリー岡田似だった。
『ギルガメッシュナイト』でイジリー岡田が
「問題ルルル」とボケても、笑うどころか
泣きそうになる。

『探偵ナイトスクープ』の「おじいちゃんはルー大柴」という
依頼で、ルー大柴を見ると大好きだったおじいちゃんを
思い出して泣いてしまうという女の子が出てくる回があった。
https://www.asahi.co.jp/knight-scoop/archive_result.html?target_id=6&page=10
私にとってのそれが、母の恋人だ。
私はイジリー岡田さんを見ると、母の恋人(1)を思い出す。

母の恋人を思い出すと、生理的に受け付けないけれど
嫌うことはできないみたいな気持ちになるのだ。

母の恋人(1)は大学生

母の恋人(1)は、私が小学生の時に家庭教師として
教えに来ていた大学生だった。母が36歳の時で、恋人は23、24歳。
12歳ほど年の差があった。

当時、父の仕事の都合で仙台に住んでいた。わざわざ
私立小に通っていたのに、私は不登校気味になった。
自宅で勉強するために家庭教師に教えてもらうことになった。

家の近所にあった大学の掲示板に、『家庭教師募集』の
張り紙を掲示させてもらい、応募してきたのがIさんだった。

Iさんとは、1年間、一緒に暮らした。

みんな、思考停止したはずだ。もう一度言う。
中学一年生になった私と、母と、大学生のIさんと3人で暮らしていた。

なぜなら父にまた辞令がおり、関東に戻ることになったからだ。
父は単身赴任することになり、父が出て行った家に転がり込んできてのが
大学生のIさんだった。

ある時、家の近所のファミレスに母に呼ばれ、行ってみると
Iさんが座っていた。何も言わずに二人は食べ始め、
母がポツリと「つきあっているの」と言った。
私が12歳の時だった。

芸人の品川庄司の品川さんがテレビで、
「ある日突然、母から恋人を紹介された」
というエピソードを語っていたことがあった。

品川さんが一時期、バッシングに遭い、「嫌いな芸人」
として名前が挙がっていた時期に、品川さんを見ると
(私と同じ経験をした人)と共感し、心の中で応援していた。

話を戻そう。
結局、3人での暮らしは経済的破綻を迎え、父の住む関東に母と引っ越した。

終わりを迎えるかと思ったら、遠距離でもしばらく母と恋人(1)は続いていた。覚悟のない不義は、どこまでも続く。

一軒家の2階の窓から恋人(1)を逃がすことになった話は、また別の機会に。

恋人(2)とゴダールの映画を観に行くと言って家出した母

私が17歳くらいの頃から、母は家出を繰り返すようになった。
この話を人にした時に、私が家出をし始めたのかと誤解された。

何度でも言う。母が家出し始めたのだ。

母はいつしか、恋人(2)と付き合い始めていた。
恋人(2)は、レスラーの橋本真也選手に似ていた。

ある時、スポーツ新聞の一面を飾る橋本選手の写真を見て
「Mさんだ!(恋人2の名前)」
と驚いたものだ。

話を戻そう。

夜中になると、恋人に電話を掛けるために「買い忘れがある」と言って
コンビニまで外出し、公衆電話から恋人に電話を掛けていた。

母の外出はどんどんエスカレートしていって、
「ジャン・リュック・ゴダールのオールナイトを観に行く」
「ビートルズのレコードを聞きに行く」
と、
理由にもなっていない理由を並べ、家族が止めようが、私の父が暴れようが、人生の優先順位が恋愛なのだから、止められるわけもない。

母は見たこともないルイヴィトンのボストンバッグを持ち始め、
週末になると帰ってこなくなり、たまに服を取りに帰ってきたら
今度は平日に家にいなくなった。

私が高校3年生くらいから家出が始まり、
20歳の頃にはほぼ完全に出て行った。

母が家出しようが、私と父の生活は続く。
私は母の不在を周りに隠しながら、
学校に通い、普段通りの生活を送っていた。

恋人と2000万円使い果たした母

母は、この恋人(2)と暮らすため
私の父が離婚時に渡したマンションも、
祖母が亡くなった時に相続した金沢の不動産も
全て売り払い、2000万近く(親戚談)を使い果たした。

母の恋人(3)は外人

母の恋人(3)は、スウェーデン人だ。
母の恋人は(1)も(2)も(3)もすべて年下だった。

スウェーデン人とは、曾祖母の介護で金沢に帰っている時に
知り合ったと聞いた。

それがなぜか首都圏にある、私の父が母のために
買い与えたマンションに一緒に住んでいたらしい。

ここまで読んでくれた優しい読者のために
もう一度言おう!

母は金沢からスウェーデン人を連れて
配偶者(私の父)が買い与えたマンションに
一緒に暮らしていた。

もう何がどうしたらそうなるのか……。
母がスウェーデン人の身元引受人から
家庭裁判所で訴えられていたと後から
知らされたのは、私が25,6歳の頃。

この話はつい最近まで、誰にも話せなかった。
だって、もうここまできたら虚言の域。
誰も信じてくれないはず。

飲み会で「親が毒親だったの」って言いながら
「好きな服が着られなかった」「やりかった仕事や趣味を反対された」って語っている、出自の良い女性を見ると
焼き鳥の串をぶつけたくなるよ……。

身寄りもなく、お金を使い果たして亡くなった母
でも母とかかわった男性たちは、父も含め 一様に
母の悪口を誰も言わない。

周りが何と言おうが、母の人生は決して惨めではなかったと思う。


ありがとうございます。著書を出版できるよう、資料購入などに使わせて頂きます。