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抜けをつくり、ゆらぎを取り込む

海や川をぼーっと眺めるのは、気持ちいい。

これは普遍的な事実であって、ここに意を唱える人はほとんどいないと思います。自然に限らず、龍安寺石庭のような空間に対しても、人は心地よさを感じ、長時間たたずんでしまうもの。一方で、ビルに囲まれた都市の隙間空間では、なかなかこういった感覚は得られません。しかし、公園まで足を伸ばせば、いくらか安らげたりもします。

これはなぜなのか?心地よさに共通するものはなんなのか?

その規則性がわかれば、意図的に心地よい空間を作り出せるはず。もちろん、理由となる要素はさまざまあるとは思いますが、ぼくなりの答えは一つ持っています。

それは、空間的な「抜け」があることと、同時に、「静の中における不規則な動」つまり「ゆらぎ」があること。

この考えに基づくなら、「抜け」と「ゆらぎ」を生活空間やワーキングスペースに取り込むことで、空間の心地よさを向上させられそうです。

龍安寺石庭。
石庭の向こう側は少し下がったところに池があって
そこから吹き上げてくる風が木々を揺らしています。

海や川は言わずもがな、開けた場所に絶えず水が揺れ動いていますし、龍安寺について言えば、石庭の向こう側にゆらめく木々が見え、その上部には空が抜けています。

京都市内を流れる鴨川沿いにつくったワーキングスペース。
川の流れが視覚にも聴覚にもほどよいノイズとなり、ゆらぎをもたらしています。
(この場所が気になる方は、ぼくのプロフィールリンクをチェック!宣伝です。笑)

上の写真の物件も、窓の外には、川の風景とその向こうを行き交う人々や車がほどよく遠くに見えていて、山向こうまで見通せて、なんだか心地よい。

緑が見えた方がより気持ちよい感じはしますが、ゆらぎは必ずしも自然のものでなくとも、車や電車でもいいのかもしれません。

意識せずとも「抜け」と「ゆらぎ」のある環境下にあるのが理想ですが、そうでなければ意図的につくりにいきましょう。

建築の設計段階であれば、隣地の植栽がゆれているのが見えたり、電車や車が通るのが遠くに見える箇所に視線の抜けをつくってあげるとよいでしょう。これは設計のプロが、最初にプランを考える際の足掛かりとなる考え方でもあります。

自邸からの眺望。時折、遠くに電車や新幹線が通るのが見えます。
自邸書斎。斜め前方に開口を設けているので
テラスや外の動きが垣間見え、閉塞感がありません。

ただ、借家だったり会社のオフィスだったりで、そんな好きにできないよ!ということの方が多いですよね。

そんな場合に一番簡単に「ゆらぎ」をつくる方法は、モビールや風鈴を吊ること。風にゆらゆら揺れるものが、目に入るところにあるだけでも、思った以上に癒しを感じられるはずです。

「抜け」をつくる事例も一つ挙げておきます。外からのぞきこまれるような場所でもないのに窓ガラスに型板(見通せないもの)が採用されているなら、それを透明ガラスに換えるのはありですね。閉塞感がかなり軽減されます。通常でも一枚あたり2万円もあれば換えられますが、最近は窓の断熱補助金がすごく手厚いので、断熱性向上と併せて一石二鳥の改修になるかも◎

真鍮作家さんのモビール

こうした一工夫を加えることで、今ある空間も、心地よさを向上させていくことはできます。

自宅でのリモートワークがなんだか息詰まる、オフィスの窮屈な空気感が苦手、という方は、ぜひ「抜け」と「ゆらぎ」を意識してみてください◎

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