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だからコミュ障を自由にさせちゃダメなんだって

9月の第4日曜日。ああ、お祭りの日だなって。

今日のお話も、公務員時代のこと。そりゃあ10年近くもいたわけだから、思い出も豊富にある。


一介の役場職員だった僕は、よく行事の手伝いをしていた。地域のちびっ子たちを楽しませるお祭り、お盆に行われる伝統行事の夏祭り、若者たちの手で実現した冬のイベントなど、お祭りというお祭りの手伝いをしてきた。宮川大輔に勝るとも劣らないお祭り男だ。
お祭りはいいぞぉ。スタッフとして参加することで、住民の方とも触れ合うことができるし、スタッフ同士の交流も深まる。コミュ障かつ町外出身者の僕にとっては、人とつながるための絶好のチャンスというわけだ。事実、その甲斐もあって人脈はかなり広がったし。お祭りはいいぞぉ。

そして、毎年9月の第4日曜日、町内で最大のお祭りがある。今年でいえばまさに今日だ。
大物歌手やお笑いタレントのステージショーをはじめ、郷土芸能の披露、露店の出店など、さまざまな催しが盛りだくさんとなっている。ザ・お祭りと呼ぶにふさわしい。間違えた、ジ・お祭りと呼ぶにふさわしい。

このお祭りには、「餅撒き」という目玉イベントがある。櫓の上からばら撒かれる餅を、地上でキャッチするというものだ。
このように書くとめでたい感じがするが、現実は凄惨そのもの。まるで金貨でも降ってきているかのように、みな一心不乱に餅を追いかけるのだ。血眼になって餅を奪い合う人々の姿は、飢えた獣さながらの様相を呈している。餅の中には当たり券が付いているものもあり、それ目当ての人が多かったような。なんと強欲なことか。

そんなビッグイベントともなれば、スタッフの数も相当なもの。役場職員もかなりの人数が駆り出されていた。


ある年、お祭りの役割分担をしている頃に、担当者から連絡があった。僕はどこの担当になるのだろう。駐車場かな?餅づくりかな?それとも露店?ワクワクソワソワしながら待っていると、担当者は僕に言った。

「今年は人員が足りそうだから、アルロンは出なくていいよ!当日はお客さんとして楽しんでおいで!」



なんですと?



やばいやばいやばいやばい。非常事態である。僕はお祭りの手伝いが好きなお祭り男であるからして、客として参加するのは、なんというか、その、あの、えっと、こまっ、困るわけで、なぜか、なぜなら、なぜならば、

僕はコミュ障だからぁ!(泣)


一人でお祭りに行って、どうすりゃいいのさ!知り合いはほとんどスタッフだし、客として来てたとしても家族サービスの真っ最中だろうし、コミュ障に一人お祭りは危険すぎるのだよ!!!!!
そりゃあ彼女の一人でもいれば違ったさ!さぞかし楽しかろう、楽しかろうよ!でもね!僕は!ぼっちなのであるからして!!!!!

脳内でパニくりながら、「あっハイ、わかりました」とすました顔で答えた。


困ったことになってしまった。
とはいえ、上司や同僚や後輩が汗水垂らして働いているときに、家で口開けてボヘーっとすることなどできない。
迎えた当日、とりあえず会場に向かった。

会場には、約3万人の人、人、人。人混みはかなり苦手だが、なにもせず引き返すわけにもいかない。群衆を掻き分け進みながら、スタッフの中に顔見知りを見つけては会釈、顔見知りを見つけては会釈をした。仲の良い人のところで落ち着きたいが、仕事の邪魔をするわけにもいかない。かといって、一人でいるのは心細すぎる。


本当にどうしよう。


悩んだ挙句。
近くの露店でクレープを買い、会場をぐるっと一周して、そのまま帰宅した。
そして、生クリームのほとんど入っていないクレープを齧りながら、来年以降は絶対にスタッフに立候補しようと誓った。


なんと アルロンが おきあがり サポートを してほしそうに こちらをみている! サポートを してあげますか?