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FC東京vsセレッソ大阪~裏の立役者たち~[Jリーグ第25節]

点を取った人より目立つ波多野豪、ということでセレッソ大阪戦です。

台風の影響で延期になった第25節。ACL出場権を狙う直接対決。

FC東京の前節は湘南ベルマーレ戦。湘南の時間を奪い取るプレスに苦しめられて主導権を握ることができず。後半はディエゴとレアンドロを中心に相手を押し込むものの、終盤に2失点を喫して黒星。連勝は2で止まった。

一方のセレッソ大阪の前節は柏レイソル戦。ACL圏を狙う直接対決はC大阪がボールを保持しながら試合を進めるが得点を奪えず0-0。これで3試合連続の引き分けとなった。

前回対戦は第3節。コロナウイルスでの活動停止明けの試合で、FC東京にとっては今季2試合目。この時はまだまだボールを保持できるチームではなく、後ろから繋ぐよりもロングボールを多く使っていた。後半には青木が退場となるが、スウォビィクの神セーブ連発で守り切り1-0。今季初勝利を挙げた。

詳しい試合内容はこちらから ↓

試合概要

メンバー

・FC東京
連戦ということで前節からは3枚変更。長友、安部、レアンドロに代えて中村、松木、アダイウトン。アダイウトンはガンバ大阪戦以来5試合ぶりのスタメン。

・セレッソ大阪
出場停止の鳥海に代わり西尾がスタメン前節からの変更はこの1枚のみ。奥埜、原川辺りがいないからか、清武がCHで起用されている。

(1)大外から壊す

前節は湘南のハイプレスによって完全に抑え込まれたFC東京。その試合のレビューでも書いたが、今のFC東京のビルドアップが機能するかは、相手の守備の振る舞いにかなり大きく左右される。ビルドアップ隊が時間を奪い取られると簡単にプレスに嵌ってしまう。逆にある程度の時間を与えられれば、保持を安定させて前進することができる。そのレベルには到達してる。

つまり時間を奪うプレスは今のFC東京には効果抜群。だからといって全てのチームが湘南のようなハイプレスをかけられるわけではない。前置き終わり。

ここから試合の内容。C大阪の被保持は4-4-2。湘南のような時間を奪うプレスではなく、CBの前に立つ感じ。ドリブルでは運ばせませんよ!っていう設定。今のFC東京はこれくらいの守備なら安定してボール保持ができる。ということで前半はFC東京ペース。

FC東京の保持のポイントは左サイドの関係性。SBの佳史扶とWGのアダイウトンはどちらもサイドに張ってプレーしたいタイプ。これまでの試合では佳史扶が内側、アダイウトンが大外でプレーすることが多かったが、この試合では逆。佳史扶がサイドに張り、アダイウトンが内側に絞ることが多かった。

内側を取るアダイウトンには右SBの松田が対応。この松田の守備の矢印は強めにアダイウトンの方に向いていた感じ。これによって空いた大外のレーンに佳史扶がどんどん駆け上がり、そこにロングボールを送っていく。ここは上手く2対1を作ることができていた。

17分10秒の場面

(2)相手を動かすIH

FC東京のビルドアップが上手くいかない時は、ほとんどがSBのところでプレスを嵌められる場合。ただ、この試合ではそのような場面はあまりなかった。その鍵となるのがIHの立ち位置。

この試合ではIHの塚川と松木がCBの横や相手2CFの斜め後ろ辺りなど、低めの位置に降りてくることが多かった。IHが低めに降りることでSBは押し上げられて、より高めの位置を取ることができる。また、CBに加えてIHが3枚目のビルドアップ隊となると、2CFでは対応しきれなくなる。これにより、SHが3枚目としてIHの対応に向かう。これでSHの守備の矢印を前に向かせることができた。

この2つによって、SBはSHを超えてSH-SB間に潜り込む。SHを超えてパスを貰えたことで、いつものようにSBのところでプレスが嵌ることがない。更にC大阪のSBを高い位置まで引き出すことができた。

2分00秒のビルドアップ。塚川が上門の斜め後ろを取る。塚川にSHの為田が引き付けられたことで、中村はSH-SB間に潜り込み、木本からパスを受ける。為田が超えられたため、中村にはSBの山中が出てくる。ここから塚川→ディエゴと繋いで、サイドの高い位置の渡邊まで届けることができた。

2分00秒の場面

山中が引き出されているため、C大阪は最終ライン3枚で対応。渡邊から逆サイドでフリーのアダイウトンや佳史扶に展開できれば、一気にゴールという形だったが、パスは出なかった。渡邊は多分見えていたと思うので、ボールを強いキックを蹴れる位置に置けなかった感じ?

このように自陣でプレスが嵌ることはなく、敵陣までは前進できたFC東京。ということで次は敵陣での保持。

すでに書いたようにこの試合では佳史扶が大外、アダイウトンが内側の関係。なので両SBがサイドに張り、3トップがライン間を取る形が基本。今までの試合ではセットして守られる展開では、相手のブロック内に侵入できないことが多かった。

しかし、この試合ではライン間を取るアダイウトン、ディエゴ、渡邊の3人でC大阪の2CHに影響を与えながらブロック内部に侵入できる場面も。ここは3対2の状態。2人が影響を与えて、もう1人で縦パスを引き出す形。

6分40秒の場面

ここの渡邊のバックステップで縦パスのコース作り出す動き。こういうのマジで好き。

3トップ以外にもIHがCHの前に立つことで影響を与えて縦パスのコースを作り出す場面も。

37分00秒の場面

清武と鈴木から見ると前には2IHがいて、背後には3トップがいる。2人の周りに5人の相手がいて対応しきれない。SHやSBが絞ると大外から前進される。FC東京はC大阪が守りにくいバランスで選手が立ち、動くことができていた。

最後にトランジションの話を少し。C大阪はボールを奪うと最前線のタガートへボールを送る。シンプルなハイボールでも、高い位置を取るSBの裏へのボールでも。とにかくタガートへ送る。

このタガートは森重がしっかり抑え込み、木本と東で回収できていた。前節は町野にぶち抜かれた森重だったが、今回は完璧。後ろの3人がトランジションで優位を取っていたため、前半の特に30分以降のFC東京はずっと俺のターン状態で試合を支配することができた。

(3)中身は4-4-2っぽい被保持

次にFC東京の保持。とは言っても、FC東京の守備はまあいつも通りな感じ。IHの松木と塚川がCHの清武と鈴木をマークにつき、3トップで4バックに向かっていく形。CBに対するプレスはディエゴが内切り、WGが外切りで。いつも通り。

これに対するC大阪の保持。C大阪は保持時に4-4-2から4-3-3のような形に可変。CHの鈴木がアンカーポジション、清武が少し高めに右IH、CFの上門が左IH気味の位置を取る。

前半はC大阪の保持の局面は少なかった。その中でも良い前進に繋がったのが松木の背後を取る場面。右IH役となった清武が降りてきて松木を引き付け、その背後に右SHの毎熊が絞って顔を出す形。

5分。C大阪のこの試合最大の決定機の場面もこの形から。右IH役の清武がアンカー役の鈴木と同列くらいまで降りる。それに連動して右SHの毎熊が内側に絞る。松木は清武について行ったが、毎熊が背後を取ってきたので、そのケアを優先。瞬間的に2対1の状態。これで清武がフリーで前向き。清武からライン間のタガートに繋ぎ、毎熊が裏に抜け出す。

5分00秒の場面

毎熊のクロスにファーサイドで為田が合わせたが枠を外れた。

ここからはFC東京目線で。FC東京はGKのキムジンヒョンまで積極的にプレスに出ていく。キムジンヒョンはキック精度も高い選手。GKだからと言って自由にさせてはいけない。実際に26節のヴィッセル神戸戦では、同じくキック精度の高い飯倉を放置した結果、守備を破壊されたし。

しかし、前半のFC東京の守備において悩ましかったのが、このGKへのプレッシングの部分。相手にプレスをかけられた時でも、キムジンヒョンは落ち着いてWG裏のSBまで飛ばしてくる。特に左SBの山中を狙うことが多め。WG裏を使われた時には、相手の中盤をマークしていたIHが頑張ってスライドするのがFC東京の守り方。そのため、山中まで飛ばされた時には、右IHの塚川がスライドすることになる。

しかし、塚川がマークについていた鈴木は可変でアンカー役になっている。アンカー役の鈴木をマークしながら、サイドの山中までスライドするのは距離的に無理。遠すぎる。

20分20秒の場面

かと言って鈴木にはマークを付けずに、GKまでプレスに行く人が、コースを消しながらの対応にすると、上手く背中を取られる。FC東京としてはGKまでプレスに行く時、鈴木にマークを付ければ山中まで飛ばされる。逆にマークを付けないと背中を取られて前を向かれる。悩ましい対応。

なんか上手いこといかないFC東京は30分過ぎ辺りからここを修正。キムジンヒョンがボールを持った時には、ディエゴが鈴木をマークするようになる。ついでに清武にも東が出て来る。これでIHの塚川と松木はWG裏のSBまで飛ばされても、素早くスライドできる。そしてGKにはWGがCBを背中で消しながらプレスに出ていく。

40分30秒の場面

これでキムジンヒョンはSBまで簡単に飛ばせなくなった。綺麗な修正だったと思う。

形は4-3-3だけど、中身は4-4-2(4-3-1-2)っぽい守備。WGが2CFでIHが両SHみたいな。自分は4-4-2で相手のSBのところで嵌める方が好きなので、来季は4-4-2に可変する守備もできるようになってほしいと思ったり。

(4)行ったり来たりしたい

後半。C大阪は鈴木に代えて石渡を投入。Jリーグデビューらしい。

両チームの変更点を見える前にFC東京が先制。起点は森重がC大阪のロングボールを跳ね返したところから。セカンドを拾った松木からサイドの佳史扶へ。ファーへのクロスを渡邊がコントロールしてから、流し込んだ形。PA内
に人数をかけることができたため、4対3の数的優位。渡邊がフリーになることができた。

C大阪としてはSBまで繋げても、その先がない。SHが縦のコースを作っているが、そこはFC東京のSBに潰されるポイントなので使えない。CFが降りてきて斜めのコースを作ってあげても良かったところ。

で、後半。C大阪は保持、被保持共に修正。

まず被保持。前半は低い位置に降りて3枚目のビルドアップ隊となるIHに、SHが引き付けられていた。その結果、SBのところから前進された。ここを修正。後半はこのIHに対してSHが出ていかず、しっかりサイドに蓋をする。代わりにCHがIHを見る形。

57分40秒の場面

次は保持の方。C大阪の保持時に前半は4-3-3に可変していたが、後半は清武と石渡がそのまま横並びになる。前半途中からディエゴがアンカー役の鈴木をマークする形になってから、FC東京の守備が安定していたので2CHにしてディエゴのマークをブレさせる。あとは単純に鈴木から石渡に代わったのも理由としてはありそう。

2CHを横並びにするとFC東京はIHをそのままCHまで出してくる。これは小菊さんも想定内だろう。そうしたらアンカー脇にできるスペースでSHやCFが縦パスを引き出す!こんな感じだったと思う。

しかし、このスペースでは東、木本、森重でしっかり止めて見せた。

51分30秒の場面

特に東のフィルター力が高すぎる。オフェンスの選手だった東がアンカーにコンバートされると守備が魅力の選手になるって面白い。

こんな感じでどちらも試合を支配しきれずに、前半よりも行ったり来たりする展開。0-0であればもっと火力のある行ったり来たりが見れたのだろうが、FC東京は早々に先制したため、あまり火力を上げず。テンション低めで時間が過ぎていく。

そんな中でFC東京が追加点。中村のクロスに再び渡邊がボレーを叩き込む。1点目の同じくSBのクロスにファーで渡邊が合わせる形。

動画なかった。

渡邊のマークは毎熊が担当だったのだろう。しかし、直前の選手交代とシステム変更を味方に伝えていてマークにつく前にクロスが上がってきてしまった。毎熊としては不運だったと思う。

その直後に3点目。みたび渡邊がクロスに合わせてハットトリック。

1点目と同じく、ここもC大阪はサイドの先がないところから。今度はパトリッキに渡したところで潰されてカウンターを喰らった。西尾のパスは完全に嵌めパスだから出したら不味いんだけど、めちゃくちゃ緩いパスを渡してしまった。他に前の選択肢がないことや2失点目の直後とかいろいろな原因がありそう。

最後にはフェリッピの移籍後2点目も転がり込んで4-0。快勝です。

おわりに

前半は完全にFC東京がボールを保持しながら試合を支配。しかし、得点は決まらず。後半にC大阪が修正して行ったり来たりするようになってから4得点。アルベルさんの理想は前半のサッカーだけど、FC東京にとって得点が期待できるのは後半のサッカー。

まあ前半のような試合ができるようになっている時点で成長しているのは明確なので、ライン間などでの細かいプレー精度が上がれば得点という結果に繋がってくるでしょう。

この試合で注目されるのは4点を決めた攻撃陣。特にハットトリック達成の渡邊がヒーローなのは間違いない。この中でも東、木本、森重の3人が素晴らしかったように思う。この3人がC大阪の攻撃をほぼ完璧に抑え込んでいたため、前半のようなずっと俺のターンで試合を進めることができた。個人的にはこの3人が裏の立役者だ。

試合結果
2022.10.12
Jリーグ第25節
FC東京 4-0 セレッソ大坂
味の素スタジアム

【得点者】
FC東京
 48' 渡邊凌磨
 76' 渡邊凌磨
 77' 渡邊凌磨
 83' ルイスフェリッピ

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