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中小企業診断士の気になる数字:「社会生活基本調査」に見る学習しない社会人

「社会生活基本調査」とは

 大雑把に言えば、総務省が5年に1度行っている「日本人は生活において何に時間を使っているのか」の調査です。
 この調査から社会人がどれだけ学習をしているのか、学習に時間を使っているかを見てみます。

社会人(=有業者)の平均学習時間は6分/日ほど

 1日1,440分のうち「学習・自己啓発・訓練(学業以外)」に費やしている時間を年齢層別に見ると、20〜24歳は平均で16分/日となっていますが、25〜29歳では大きく減って平均で8分/日、以降は30〜24歳で平均7分/日、そこから上の年齢層は平均6分/日という状況です。

 20〜24歳はまだやる気や向上心があるのか「学習・自己啓発・訓練(学業以外)」に費やしている時間が他の年齢層よりも多いですが、そこから上の層では、家庭を持って自分の時間が取れなくなる、仕事の責任が重くなって長時間労働になっているなどの様々な理由があると思いますが、事実として「学習・自己啓発・訓練(学業以外)」に時間を使わなくなります。

図1:社会人(=有業者)の平均学習時間

出典:「令和3年社会生活基本調査 生活時間-全国(調査票A)」第4-1表より抜粋

社会人(=有業者)で学習をしている人の割合は20人にひとりほど

 平均時間の短さを見れば、学習をしている少数派と全く勉強をしていない多数派に分かれており、平均であのような時間になっていることが容易に想像できるかと思います。
 実際に行動をしている人の割合である「行動者率」データを見ると20〜24歳でも10.3%、35~39歳以上の年齢層では5%程度しか「学習・自己啓発・訓練(学業以外)」をしていないことがわかります。

図2:社会人(=有業者)で学習をしている人の割合

出典:「令和3年社会生活基本調査 生活時間-全国(調査票A)」第4-3表より抜粋

社会人(=有業者)で学習をしている人の平均学習時間は2時間ほど

 実際に「学習・自己啓発・訓練(学業以外)」をしている人の中での平均学習時間は20〜24歳で約2.5時間/日、それ以上の年齢層で約2時間/日となっています。

図3:社会人(=有業者)の学習時間(全体平均・行動者平均比較)

出典:「令和3年社会生活基本調査 生活時間-全国(調査票A)」第4-2表より抜粋

学習しない社会人

 10〜20人にひとり程度は平均2〜2.5時間/日を学習に費やしている人がいる一方で、多くの社会人がまったく学習していないという統計結果でした。

 会社に所属するというメンバーシップ型の文化がいまだに強いため、所属する会社で使われている価値(どれだけ明文化されていない社内ルールを知っているか、過去からの業務の進め方や手続きを踏襲できるかなど)の方が重要であり、相対的に学習による市場価値の向上は優先されていない傾向にある、長時間労働で学習時間が確保できる環境にない人が多い、転職の際に重視されるのが能力よりも経験年数であるなど、理由は色々と想像できますが、何か別のデータを探して検証したいと思います。