気まぐれに辿り着けない海のこと
気まぐれに辿り着けない距離に住んでいるからか、海に行きたいと思うことはかなり多い。そのとき思い描く海は早朝であったり、夕方であったり、夜中であったりするけれど、いつも決まって周りには誰もいない。私ひとりが、波打ち際に立っていて、座っていて、時折歩いている。海。たぶん、私にとってのそれは「ここではないどこか遠く」の象徴なのだろう。
それでも人生で数えるほどには海に行ったことがあるのだ。家族で潮干狩りや泳ぎに行ったり、友人と江ノ島に行ったりしたこともあるのだ。でもそういう海は観