グアム島唯一のメタルバンド、"Surrender The Thief (サレンダー・ザ・シーフ)" ジャパンツアーの記録 ~メタル未開の地から世界へ~

グアム出身のメタルコア/デスコアバンド、Surrender The Thief (サレンダー・ザ・シーフ) の初来日ツアーは無事に終了しました。 彼らにとって初めての海外ツアー、1年以上掛けて準備してきたこのツアーは、RNR TOURSにとってもかけがえのない経験となった。慣れない事ばかりだったかもしれないが、持ち前のハッピー・バイヴスで周りを明るく楽しい雰囲気に包み込み、ダンサブルでヘヴィなメロディック・デスコアサウンドでフロアを盛り上げた。ツアー中、彼らとは毎日のように食事を共にし、様々な話をした。こうして海外アーティストとお互いのシーンの状況や文化を話し合う時間は、私にとってRNR TOURSを続ける面白さのひとつだ。

「グアムにはメタルと呼べるサウンドをプレイするバンドはいないし、ましてやメタルコアやデスコアバンドなんてこれまで観た事もないよ。」そう話してくれたのは、バンドリーダーを務めるチャールズ。これまでにSLAYERやLamb of Godといったメタルバンドのライブを海外で観た事はあっても、グアムにはそういったバンドがプレイできる場所もなければ、リスナーもいないのだそう。過去に招集したアメリカのバンドがハワイにツアーに行った話は聞いた事があるけれど、確かにグアムへいった話は聞いた事がなかった。

念の為、メタルの様々な歴史をアーカイヴするサイト「Metal Archives」でグアム出身のバンドを調べてみた。いくつかグアム出身のバンドは存在するものの、どれも解散、活動休止、または現在どうなっているかがわからないものばかり。Surrender The Thiefはデスコアに弱いMetal Archivesには載っていなかったが、彼らが他にいないというのなら、本当にいないのだろう。

グアムにはメタルバンドがプレイできるようなライブハウスと呼ばれるものはなく、ライブをする時はバーの一角に設けられた小さなステージでプレイするのだそう。環境は悪く、通常レゲエなどがプレイされるステージでは彼らの求めるヘヴィなサウンドを鳴らす事は難しい。よってリスナーもメタルの良さを感じられる場所が存在しないグアムでは、デスコアといったタイプの音楽シーンが生まれる可能性は低い。

楽曲制作を務めるギターのダニエルは、海外通販で機材を揃え、YouTubeでその使い方を覚え、独学で楽曲制作を行っている。グアムでは十分な機材を手にいれる事は難しく、周りで同じような機材を使用しているバンドはいないので、すべて自身の感覚が頼りだ。

ドラマーのジュリアスはこれまでにメタルバンドに在籍した事はなく、自身もほとんどメタルを聴いた事がないという。ただ、デスコアだけは好きでSigns of the Swarmとの共演を知らせた時はとても喜んでいた。故に、オリジナリティ溢れる手数の多いプレイで、Surrender The Thiefグルーヴの要になっている。後から聞いた話では、周りでツインペダルを使っている人もいなければ、バックトラックを用いた演奏をしているバンドがいないかった為、それらがどのようにしてライブ演奏時に機能しているかはドラマー以外よく把握していないそうだ。

ハードなツアーを終えて、日本の様々なメタルバンドとの共演を経て、ライブでどんな機材を使っているかや、どんな風にしてオーディエンスを盛り上げるかなど、感じたことを興奮気味に語ってくれた。中でもMAKE MY DAYのステージには驚き、また彼らと共演する事を目標に頑張りたいと話してくれるメンバーもいた。

グアムは日本から約3時間。近いようで遠い場所で静かに活動を続ける彼ら。地元では「なんで君たちはメタルなんてやってるんだ?」と声を掛けられるなど、悔しい経験を何度も味わってきた。また、日本でプレイできる事を目標に、彼らは今日もストイックに活動を続けている。

Special Thanks : 横浜7th Avenue, 寝屋川Vintage, 彦根COCOZA HALL, 渋谷CYCLONE, MHz FEST, Far Channel Records, ガーデンホテル大和

海外アーティストの来日ツアーをサポートするRNR TOURSがパンク、メタル他様々な音楽について自由に書きます。