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世界でいちばんすきなひらがな。


なまえをよんだあとに「ん?」って言う声。


世界でいちばんすきなひらがな。


トトロで、カンタがサツキに傘を「ん」ってさしだすシーン。


世界でいちばんすきなひらがな。


考えながらしゃべっているときに「んー」って一生懸命にことばを探しているようす。


世界でいちばんすきなひらがな。


「んんんー」セカイイチノ大親友が、きっと今頃海のむこうで、いのちを生んでいる。


世界でいちばんすきなひらがな。



🚃🚃🚃🚃🚃


セカイイチノ大親友と、初めて渋谷で遊んだ日。

「好きな人とハチ公前で待ち合わせだから着いてきて!」って言われたあの日。

『あれから10年』って、ハイライトにあがってきた。



あれから10年。


変わったこと。

渋谷公会堂が解体されたこと。

山手線外回りと内回りのホームが、一体化されていくこと。

その親友のおなかに、今、赤ちゃんがいるということ。

その他、ほぼ全てのこと。


無くなっては生まれて、また生まれては消される街、渋谷。あの頃行きたくてたまらなかった109は、今や雑居ビルのひとつとなった。

移り変わるこの街は、まるで渋谷を生きる若者たちを模倣するようでもあるけれど、それでもずっと心のトンガリの頂点みたいな場所に、佇み続けてくれていた街。

渋谷で遊ぶことがステータスだと本気で思っていた10代の私達が、叶えることのできたちっぽけな夢。


ハチ公前で、好きなひとと待ち合わせをすること。

宇田川カフェで、お茶すること。

長野にはないチェーン店、ねぎしの牛タンを、お腹いっぱいに食べること。



ちっぽけだったからこそ、叶えられた夢。


あれから10年。


変わらなかったこと。

ハチ公も、宇田川カフェも、ねぎしの牛タンも、変わりゆく街・渋谷に、10年間変わらず在り続けていたこと。

私達の友情も、変わらずに、在り続けていたこと。



🚃🚃🚃🚃🚃



「ん」

五十音表、いちばん最後の、しりとりなら負けちゃう言葉。

10年、牛タン、山手線。


それでも私の、せかいでいちばんすきなひらがな。



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