ん
世界でいちばんすきなひらがな。
なまえをよんだあとに「ん?」って言う声。
世界でいちばんすきなひらがな。
トトロで、カンタがサツキに傘を「ん」ってさしだすシーン。
世界でいちばんすきなひらがな。
考えながらしゃべっているときに「んー」って一生懸命にことばを探しているようす。
世界でいちばんすきなひらがな。
「んんんー」セカイイチノ大親友が、きっと今頃海のむこうで、いのちを生んでいる。
世界でいちばんすきなひらがな。
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セカイイチノ大親友と、初めて渋谷で遊んだ日。
「好きな人とハチ公前で待ち合わせだから着いてきて!」って言われたあの日。
『あれから10年』って、ハイライトにあがってきた。
あれから10年。
変わったこと。
渋谷公会堂が解体されたこと。
山手線外回りと内回りのホームが、一体化されていくこと。
その親友のおなかに、今、赤ちゃんがいるということ。
その他、ほぼ全てのこと。
無くなっては生まれて、また生まれては消される街、渋谷。あの頃行きたくてたまらなかった109は、今や雑居ビルのひとつとなった。
移り変わるこの街は、まるで渋谷を生きる若者たちを模倣するようでもあるけれど、それでもずっと心のトンガリの頂点みたいな場所に、佇み続けてくれていた街。
渋谷で遊ぶことがステータスだと本気で思っていた10代の私達が、叶えることのできたちっぽけな夢。
ハチ公前で、好きなひとと待ち合わせをすること。
宇田川カフェで、お茶すること。
長野にはないチェーン店、ねぎしの牛タンを、お腹いっぱいに食べること。
ちっぽけだったからこそ、叶えられた夢。
あれから10年。
変わらなかったこと。
ハチ公も、宇田川カフェも、ねぎしの牛タンも、変わりゆく街・渋谷に、10年間変わらず在り続けていたこと。
私達の友情も、変わらずに、在り続けていたこと。
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「ん」
五十音表、いちばん最後の、しりとりなら負けちゃう言葉。
10年、牛タン、山手線。
それでも私の、せかいでいちばんすきなひらがな。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。 このnoteが、あなたの人生のどこか一部になれたなら。