ウエイトリフティングの魅力

7月末、私はウエイトリフティング専門のジム、
Black Shipsの平岡コーチ(全日本選手権7回優勝)のパーソナルセッションを受けた。

Black Ships Yoyogi | ウエイトリフティング&ファンクショナルトレーニング | ブラックシップス 代々木 Official Site

これまでにも、ウエイトリフティングの専門家の講習会も受け、自分自身も練習し、選手たちにも20年以上指導していた。しかし、今年からサポートさせてもらっている大学アメフト部では、ウエイトリフティングの種目を今まで以上に取り入れた。
特にパワースナッチという種目は、時々しか指導する機会がなかった。だから、私自身のデモンストレーションも下手くそだったし、指導の引き出しも少ししかなかった。
そこで、YouTubeでBlack shipsさんの動画を知り、いくつも視聴するうちに、やっぱりもう一度専門家のセッションを受けてみよう、いや受けなかあんかやろと思い、連絡させて頂いた。

そして、いざセッション。
とにかくまずは、苦手なスナッチの教えを乞うた。結局、ここまでに計5回のパーソナルセッションを受けたが、本当に受けで良かったと思う。
明らかにスナッチ、クリーンのフォームが変わった。今まで良かれと思ってやっていたことと、少し違う考え方も教えて頂いた。

それは、足裏の荷重だ。
私はずっとトライポット(母指球、小指球、踵)を意識してやっていたし、選手にもそう伝えていた。しかし、コーチの平岡さんが「バーベルの重みを踵でずっと感じて下さい」と、アドバイスしてくれる。今までより踵重心でやるだけで、明らかにバーベルは身体の近くを通り、感覚としてもむちゃくちゃ軽く感じた。

平岡さんは、こんな風にも言う。
「バーベルが前にあるので、バランスを保つためにも踵重心の方がいいです」と。
確かに、バーベルを持たないでデッドリフトをやるなら、トライポットでいい。しかし、身体の前側でバーベルを持っているのだから、当たり前だが少し踵重心にしなければ前方に持っていかれてしまうのだ。結果としてトライポットになるのだが、意識は踵重心で丁度よいのだ。

踵重心以外に、むちゃくちゃ大きな違いを感じたことがある。
それは、思っていた以上に、クリーンやスナッチのファーストプルとセカンドプルは膝の伸展も使うことだ。つまり、大腿四頭筋も使うのだ。
この感覚を覚えるのには、Deficit Deadliftが有効であることを教わる。Deficit Deadliftとは、下記写真のように、足の下にプレートなりを置き、その状態でデッドリフトをするものだ。ようは、普通のデッドリフトより深くしゃがまないといけないのだ。スクワットで言えば、フルスクワットをするようなものだ。大腿四頭筋だけでなく、大臀筋、ハムスト、内転筋を動員せざるを得ないのだ。単純にむちゃくちゃきついのだ。

このDeficit Deadliftをやった後に、パワースナッチやパワークリーンをやると、明らかに脚をより使っているのを感じ、より出力が大きくなるのを感じやすいのだ。だから、年齢と膝(両膝前十字靭帯損傷している)を言い訳に、長いことスクワットをサボっていた私に、平岡さんは「やっぱりスクワットやった方がいいですね」と。

スナッチやクリーンのレベルを上げるにはスクワットやデッドリフトのレベルを上げた方がいいのは、パワーバランスシートなるものを見てもわかる。

パワーバランスシートとは、上記の一覧表を見てもらえればわかるが、バックスクワットとクリーンデッドリフトを100%とした時に、例えばハイクリーンは68%。つまり、ハイクリーンで68kg挙げたければ、バックスクワットは100kgは挙げられる筋力が必要だという目安になる。
言い方を変えれば、バックスクワットが強いほど、ハイクリーンも挙げられる可能性が上がるというわけだ。
私の場合には、ハイクリーンの目標が80kgなので、バックスクワット(ここでのバックスクワットはフルスクワット)で118kg挙げるのが目安になるというわけだ。

平岡さんに言われるまでもなく、パワーバランスシートからもスクワットやデッドリフトで脚を強くする必要がわかるというわけだ。

もう一つ、平岡さんに教わったことで、むちゃくちゃ大切なことがある。
クリーンでも、スナッチでも股関節を伸展させる事が大切なのだが、伸び切ろうとするとキャッチが遅くなるのだ。特にクリーンは、セカンドプルでパワーを出したら、すぐにキャッチする意識でやる方がよいと。これは、以前にも講習会で別の講師に教わったことと同じだった。その方は、「脚、肘」の意識ですと。脚で力を出したら、すぐに肘を出す、つまりキャッチの意識だと。この股関節伸展しきらないでキャッチする意識というのは、実はフォースプレートという床反力がわかる上でクリーンとかをやった時にわかることからも理にかなっているのだ。

どういうことか。床反力計では、力と速度の両方がわかるのだが、1番力が出ているところと、速度が出ているところは違うのだ。1番力が出ているのは、まさに、セカンドプルで地面にグッと力を加えた辺り、そして、速度が出ているのは、バーベルが1番高くあがるくらいのところ。バーベルが高く上がるところが、股関節も伸展し切っているところなのだ。やっている本人の力感があるところが、おそらく力が1番出ているところ、その後にバーベルはだんだん加速していく。しかし、本人の中では、力を出した後は、もう沈み込む意識にならないと、キャッチが間に合わない、というかバーベルが挙がりすぎて、上から落ちるところで受け止めなければならなくなるのだ。
それだと、キャッチが難しくなるうえに、怪我のリスクも増えてしまう。だから、もう、まさに感覚的に言えば、「脚、肘」なのだ。
おかげさまで、平岡さんに教わってから、私も以前よりも明らかにキャッチが速くなり、かつ安定している。前までは、少し遅かったので、時々鎖骨が痛かったのだ。最近は、キャッチした時に鎖骨が痛むことはほとんどないのだ。

そんなわけで、7月末に平岡さんのパーソナルセッションを受けた後、8月中旬からようやくスクワットとデッドリフトもトレーニングプログラムに導入し始めた。とは言え、8月頭にはコロナに初めて感染し6日間の自宅療養、そして、少しずつではあるが重さを上げてきていた矢先、11月頭には腰痛になり、しばらくスクワットとデッドリフトを中断。ようやく、先週から再びスクワットとデッドリフトのトレーニングを開始したばかりなので、まだまだ私の脚の筋力は、か弱いまま。 
が、感覚的に、ここが伸びれば、クリーンとスナッチのレベルも上がる予感しかない。まあ、当たり前のことなのだが。

正直な話、スナッチは胸椎の伸展の可動性も低く、全くもって苦手意識しかなかったのだが、平岡コーチのおかげで、この4ヶ月(実質3ヶ月)、スナッチが楽しくて仕方ない。まだまだ、ほとんどバーベルのみ、つまり20kgでの練習が中心ではあるのだが、とにかく楽しい。
何が楽しいって、クリーンもそうなのだが、あの一瞬、重さを全く感じない時、そうフワッとバーベルが浮いて、その後にすかさずバーベルの下に潜り込めてバランスよくキャッチできた時の気持ち。これがたまらなく楽しいのだ。

選手への指導レベルを上げたくて、本当の本物にパーソナルセッションをお願いし、私のトレーニングを始めたのだが、もう完全に私の日常の中に、スナッチとクリーンが組み込まれてきた。もはや中毒のような感じで、時間さえあればやりたくて仕方ないし、場所を選ばすにシャドークリーンやスナッチをしているくらいなのだ。

当面の目標はパワークリーン60kg
パワースナッチ40kg

をカッコよく楽に挙げること。
いやー、マジでウエイトリフティング面白いぜよ。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?