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詩は熱いうちに

 目の前に置かれたコーヒーがすっかり冷たくなっている。ぼんやりと見えてはいるけれど、意識の中心からはすっかり離れている。本当の目的は最初から別にあった。だけど、最初にコーヒーは必要だった。コーヒーはお母さんだ。周りにいるものは人かロボットか鬼か河童か。それが何者であっても、いま掘り下げるべきは何よりも自分自身なのだ。「お母さん。僕は詩を書いて生きて行くよ」人間は命の入った器にすぎない。器の中に守られて私は生きている。

 コーヒーはもうすっかり冷たくなってしまいました。時々触れる唇の冷たさが、私がノートに書き込んだ詩の時間です。スケルトン人間の根性が曲がっている。痛みも弱さも見えている分だけ、打つ手もわかりやすい。だけど、私たちはすべてを見せたくはないのです。「お母さん。いつも気にかけています」どこまで遠くやってきても、あきれるほどの歳月が過ぎ去っても。もう、コーヒーは冷めた。俺の注文。俺の放置。ここに来た時から、俺は矛盾の中にいた。

まきそこねのペペロンチーノ! 

 一撃の詩を探して、俺は喧噪に飛び込んだ。「母よ。一口の温もりを俺は忘れない」発狂した責任者が椅子にしがみついても、純粋な個人が責任を負わされても。詩は終わらない。いつかのコーヒーがわしの目の前にある。誰がこんなに冷たくした? それはわしよ。わしはずっとここにおる。詩はわしをただぼんやりとさせるんじゃ。

 わしは宇宙人だ。我々も宇宙人だ。我々も我々も我々も……。私たちは詩を書くためにここに来た。「詩は熱い内に書かねばならないから」だから、他に置いていくものができてしまう。後から来た人たちが次々と目的を果たして、笑いながら去って行っても。僕たちはここにしがみついている。「お母さん。そのうちに帰ります」ずっと遠くから、僕たちの詩を見守っていてください。どうか元気で。お茶でも飲みながら。


#詩 #コーヒー #迷子

#ペペロンチーノ


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