海外志願

 後のない試合を落としてしまった。すべては指揮官である私の責任だろう。もうこれですっきりした。ようやく重い荷物をおろして楽になれそうだ。マイクを向けられれば前向きな言葉が出てしまう。自分にうそをつくのにもいい加減嫌気がさしてきた。胸の中はため息であふれているというのに。わかる人にはわかるだろう。私の目をちゃんと見れば……。

「じゃあ訊きますが。逆にどうやったら首なんですか!」
 私がまだチームを率いていくだと?
「まあまあ。君しかいないんだよ」 
 人手不足だと? ふざけんな
「自分からやめるとは言えないよー!
 そこはわかってよ。
 駄目だこりゃって言えないよ」
 本当はだめだめなのにさ。

「まあまあ。結果はたまたまこうなっちゃったが……、
 次、頑張ってよ!」
 次だって? たまたまかー?
「えーっ。後のない戦いに負けたんでしょうが!」
「まあまあ。前を向いてよ。まだ次があるって!」
 うそだー! もう解放されたーい!

 海外旅行行きたーい!


#背水の陣 #小説 #海外旅行 #責任論

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