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「第2章 名前も知らない公園で」 アントニオ・タブッキの「レクイエム」で巡るリスボン

アルカンタラ桟橋で、詩人との約束の時間を間違えたことに気付いた主人公は、近くの公園へ向う。公園の名前は書かれていない。そこで、ここではこの章に出てくるいろんなキーワードに思いを巡らそうかと思う。

まず、主人公はアゼイタンにある友達の農場で昼寝をしていたところ、詩人に呼び出されて(おまけに彼は「幽霊」なのだ)ここに来た、と言う。アゼイタンという単語に聞き覚えがあるような気がした。調べると「アゼイタオン」と表記されることもあるという。「トルタ・デ・アゼイタオン」という名のポルトガルの伝統菓子で知られる土地だ。

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(写真は、京都のポルトガル菓子店「カステラ・ド・パウロ」のもの)

そしてそう、アゼイタオンは、チーズも有名なところだ。

さて、主人公は「ボーラ」を買って、公園のベンチで読もうとする。この「ボーラ」とは、「A Bola」というスポーツ誌のことだ。主人公は、「レアル・マドリッドから決勝点を奪ったベンフィカの戦いぶり」に関する記事を読む。

私も一度だけこの新聞を買ったことがある。2010 年ワールドカップ南アフリカ大会の年だった。泊まっていたアパートの隣の建物の1階にあった食堂に、ポルトガルvs 北朝鮮の試合を観ようと入ると、店の親父さんが何故かそわそわ、オロオロし始め、空いているテーブルはあるのだがいっこうに座らせてくれない。まあどこの国の人間か見た目では区別できないアジア人を、こういう状況でどう扱っていいかわからないのはよくわかるし、そういうときポルトガルの男の人って、割とヘタレである。結局夫が、アパートの部屋からポルトガルのセレサオンマフラーを取りに行って巻いて戻ってくると、やれやれ助かった、といった表情で私たちを席につかせてくれたのだった。

この翌日、大勝したポルトガルチームがもちろん1面。Bola を買ったのはこれが最初で最後だった。

今は、「A Bola」もネットで楽しむことができる。

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