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「制作会社の安定」と「個人の成長」の間にあるジレンマ


僕は社会に出てから独立するまでの約6年間で3社ほど「制作会社」という業態で働いていました。制作会社の定義は色々ですが、基本、その名の通り、「受託制作を主たる業務とする」会社です。

で、この制作会社というものを、いつの間にか自分が経営する立場になって(僕がやってるRockakuが制作会社なのかどうかはよくわからなりつつありますが)、「制作会社を安定させる方法」と、「所属するクリエイターたちを成長させる方法」って、極めて相性がよくないというか、合理的には交わりにくいってことに気づいてしまったんですよ。


ある時期、僕が働いていたB社は、大手旅行代理店のパンフレットなどを一手に制作する、単一業務に特化した制作会社でした。

つまり、旅行という季節性が明確なカテゴリで、かつ一社特化。つまり、入ってくる仕事の量と売上げの見通しが立てやすく、経営が非常に安定している会社ということになります。実際、(SARSや9.11などの事件で旅行業界が危うくなる状況をのぞいては)非常に羽振りがよく、勤怠時間をオンライン管理して、分単位で残業手当を払ってくれるほどでした。

しかしまあ、この経営手法は、明らかに「会社の安定」を目的に設計されています。僕も一応は経営者なんで、その構造は今ならはっきりわかりますし、それが悪だとも思いません。

が、この手の経営手法をとる制作会社では、大量に人が辞めていくんです。

それでもその制作会社は安定し続けます。実際、人が抜ければ現場レベルでは色々苦労もあるでしょうが、この仕組みで動く会社にとっては誰が働いていても、ぶっちゃけそんなに関係ないわけです。

これは、組織の構造としてはすげえ完成度が高いんですが、社員個人、とりわけ制作業に携わる職業クリエイターの成長にはあんまりよい作用がありません。

半分持論、半分一般論くらいで言いますが、職業クリエイターの成長のキモは、「変化への対応」です。
現場のディレクターや、デザイナー、コピーライターなどのメンバーが変化しないこと、クライアントが変化しないこと……その先にあるのは思考や適応力の硬直化と閉塞状態です。

じゃあ僕は「制作会社の安定」と「個人の成長」を踏まえた上で、どんなことを考えて経営をやってるかというと、全く迷うことなく「制作会社の安定」をばっさり切り捨てています。そして以下のようなざっくりとしたルールを設け、「個人の成長」の源泉たる「変化への対応」を経験しまくれる環境をつくっています。

(1)年間の売上げの20%以上を占めるクライアントをつくらない
(2)得意な分野は持っても、専門特化した分野は持たない
(3)社内にはコピーライターしか所属しない

(1)は案件のバリエーションを豊富に持つということでもあり、また、特定の大口取引先をつくらないことでパワーバランスを保つという意味があります。
(2)はクライアントの業種業態と、ウェブ、紙、広告、映像、企画、施策設計といった業務内容を固定化させないためのルールですね。
(3)は様々なクライアント企業、制作会社のストレージとして立ち回るというスタンスを取ることで、毎回、異なるチームに参画して、さまざまなプロフェッショナルと出会い、さまざまな現場を経験できるようにする……というとろにつながります。あとまあ、ウチの規模だとワンストップの制作体制を持つことは正直リスクが大きいとも言えます。

安定より変化を選択して「成長 or DIE!」な状況をつくる。
プレイヤー集団として会社を育てようと決めた、僕なりの逆説的成長戦略がここにあったりします。

まあ、零細企業のタコ社長が何を偉そうに……という向きもあるでしょうが、そんな見方もあるっすよ……みたいなお話でした。

※この記事は以前書いたブログを加筆修正したものです

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ありがたやー
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Rockaku森田

コピーライター事務所でおなじみかもしれない株式会社Rockakuの社長やってます。

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