見出し画像

U2 - Songs of Surrender (2023)

 アルバムリリースの報を最初に見た時は果たしてこれは何ぞや?と不思議に思ったが、それはジャケットを見ると恐らく今の姿であろう二人と、昔の若い姿のままの二人が並べられていたからで、その後に本作品が以前リリースした楽曲のアコースティックな再録集だと聞いて、なるほど、このジャケットの意味はそこにあったのかと納得。

 ウクライナとロシアの戦争が勃発してしばらくしてからU2のエッジとボノは二人でキーウの地下壕へ赴いて二人だけでいくつかのU2の昔の曲を演奏して地下壕に避難していた市民に勇気を与えたようで、その模様はYouTubeでも見られるし、たった一本のギターとボノの歌声だけで奏でられている楽曲で、大して音も大きくないのに、物凄く生々しく熱い想いが伝わってくる素晴らしいパフォーマンスだったので、本作に繋がる理由も大いに理解出来る代物だ。

 アルバムは4枚に渡り、それぞれのメンバーがクローズアップされたディスクタイトルになっており、エッジはそれぞれを聞けばどうしてそうなっているか一発で分かると言っていたが、そこまで簡単に理由が分かるほどメンバーの音がクローズアップされているようにも思えないので、よく分からない。ただ、一人10曲づつ、合計40曲がアコースティックで収められているのでやや単調になりつつありながらもやはりU2の曲の良さがサイドフォーカスされた内容になっているのは間違いない。

 楽曲によってはドラムセットも入っているが、音の質感はどれもアコースティックなので疲れる事なくいくつもの曲が流れ出てくるが、冒頭の「One」「Where The Streets Have No Name」と立て続けにぶつけてくるあたりからして全部聞かざるを得ない仕上がりにしてくれている。

 それにしてもどれもこれも古い曲も割と新し目の曲も見事なまでに散逸させて解体再構築しているから、如何にこれまでの曲がよく作られていたか、アレンジに拘らなければ本質的にどれもU2らしい音が出来上がっているとは単純に分かり、逆に見ればどれもこれもがよく出来たデモテープ、楽曲の原型ではないかと思えるような生々しい味わいがキャリアの為せる自信。ボノの歳を重ねたからこその表現力の豊かさが圧倒的に深みを増している、これもまた何度も流していて疲れない傑作アルバム。


好きなロックをひたすら聴いて書いているだけながらも、聴くための出費も多くなりがちなコレクターの性は皆様もご承知の通り、少しでも応援していただければ大感謝です♪