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安売りを止めると求める顧客が現れる

[要旨]

北海道のあるスーパーマーケットでは、店の名物のプリンの値上げをしたところ、販売数が2倍以上になったそうです。これは、値上げによって、店のポジショニングが明確になったことから、価格に鋭敏な客が来なくなり、一方で、品質のよい商品を求める顧客が増加するという効果が現れたと考えることができます。

[本文]

今回も、小阪裕司さんのご著書、「『価格上昇』時代のマーケティング-なぜ、あの会社は値上げをしても売れ続けるのか」を読んで、私が気づいたことについてご紹介します。前回は、小阪さんが、「顧客は選んでいい」と述べたことをご紹介しましたが、この、「顧客を選ぶ」ことの効果について、小阪さんは、別の事例をご紹介しておられます。「この店(スーパーマーケット)があるのは、北海道十勝地方の幕別町という、町の中の人口が5,000人しかいない小さな地域だ。(中略)にもかかわらず、値上げにはまったく躊躇がない。

この店の名物であるプリンは、値上げする前の2021年3月には、ひと月で、246個売れていたのが、値上げ後の2022年3月には、612個売れたという。(中略)店主は、『価格にうるさいお客さんが来なくなったので、いいお客さんが自然と増える好循環が起きている』、『確かに、1円、2円で動く人もいるが、そのようなお客さんは、自分の客ではない』と、言い切る。

なぜ、言い切れるのか、このようなビジネスをしていた結果、幕別町だけでなく、北海道の十勝地方全域から顧客が来るようになったからだ。かといって、別に排除しているわけではない。価格だけを言ってくるお客さんにとっては、『自分には合わない店、居心地の悪い店』になるので、自然と足が遠のくというだけの話だ」(128ページ)

この値上げによって、店主の求める顧客が現れるようになったという現象は、別の視点から見ると、ポジショニング戦略の効果の現れということが言えると思います。値上げをすることで、安売り店ではないということが明確になり、品質のよい商品を求める顧客から選ばれやすくなるのだと思います。すなわち、「値上げをする」ということは、値上げによる市場(=顧客)を選択するということであり、まさに、「顧客は選んでいい」ということになるのではないでしょうか?

2023/1/19 No.2227

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