見出し画像

ビジョンの明確化で優良顧客を獲得する

[要旨]

経営コンサルタントの佐治邦彦さんによれば、明確なビジョンを描くことで、経営者は不安心理に振り回されることなく、ビジョンに向かって社員全員が正しく行動することができるようになり、顧客離れを恐れてクレーム客に意識を取られることがなくなります。その結果、自社にとっての優良顧客に目を向け、その顧客の満足を追求できるようになり、さらに良質なお客様が集まってきます。そして、良質な顧客を獲得することは、社員のやりがいにもつながっていきます。

[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの佐治邦彦さんのご著書、「年商1億社長のためのシンプル経営の極意」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、これからの時代は、商品ではなく、サービスで差別化を図ることが重要であり、お客様の立場に立って、商品購入前のビフォアサービスや、商品購入後のアフターサービスを強化することで、顧客満足を高めていくことが重要となることから、これを実現するために、「裏の効率」・「表の非効率」という考え方で、事業活動の改善を行うことが求められるということを説明しました。

これに続いて、佐治さんは、経営ビジョンを明確にすることの大切について述べておられます。「経営とは、『本当に手に入れたいもの』を明確にすることから始まります。その一つをビジョンといいます。ビジョンには、『定性的なビジョン』と、『定量的なビジョン』があります。一般的に、『定性的なビジョン』は数字では見えづらい精神的な満足を表すもので、会社の存在意義を表しています。一方、『定量的なビジョン』は、物質的な満足を表し、数値で表現するものです。例えば、売上や店舗数や社員数などがよく掲げられます。どちらも重要ですが、『定量的なビジョン』より、『定性的なビジョン』が上位概念になります。

時に、『定量的なビジョン』しか掲げられていない会社と出合いますが、そうした会社には、利己的な社員が集まり、時として自社の売上規模ばかりに気を取られて顧客の信頼を裏切ることになりがちなので、注意が必要です。明確なビジョンを描きましょう。そうすれば、経営者の不安心理に振り回されることなく、ビジョンに向かって社員全員が正しく行動することができるのです。まずは、『顧客離れ』を恐れてクレーム客に意識を取られるのではなく、自社にとっての優良顧客に目を向け、その顧客の満足を追求しましょう。客層が良くなれば、店の評判も上がり、さらに良質なお客様が集まってきます。そして、良質な顧客を獲得することは、社員のやりがいにもつながっていきます。

次に、『社員の退職』を恐れ、場当たり的な評価や労働基準をつくるのではなく、共にビジョンを達成したい人物像を明確にしましょう。それにより、価値観を共有したスタッフたちが切磋琢磨し、共通の目的であるビジョン達成に向けて協力し合う組織になります。そして、『良質な顧客』と『良質なスタッフ』が集う環境が整うことで、その心地よさに新たなお客様やスタッフが集まり、業績が向上していきます。不安の三大要因にとらわれず、『売上の良い時をさらに伸ばし』、『良質な顧客との関係を強化し』、『できる社員をさらに伸ばす』ことが大切です」

佐治さんは、直接的には言及していませんが、経営者がビジョンを示すことで、それに賛同できる従業員は会社に残るし、賛同できない従業員は離れていくのだと思います。同様に、ビジョンに共感する顧客は、その会社の得意客になって、何度も商品を購入しますが、ビジョンに共感しない顧客は、商品はあまり買わないか、または、まったく利用しないようになるのだと思います。もちろん、ビジョンは会社や事業によって異なります。そこで、ある従業員は、ビジョンに賛同できる会社で働けば、優秀な従業員になることができることになりますが、ビジョンに賛同できない会社で働けば、あまりよい働きはできない可能性があります。

また、ある顧客が、ビジョンに共感できる会社の商品を買えば、その顧客は優良顧客になるかもしれませんが、ビジョンに共感しない会社の商品はあまり購入しないので、優良顧客にはならないでしょう。このように、ビジョンを示すことは、自社の事業に貢献してくれるステークホルダー(従業員や顧客)を自社に集める役割があります。したがって、ビジョンを明確にすることは、自社の発展を加速するということにつながります。一方、佐治さんもご指摘しておられるように、ビジョンを明確にせず、さらに、自社の事業に合わない従業員や顧客のために労力を注ぐことは、自社の事業の発展の妨げになります。

2024/1/25 No.2598

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?