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[要旨]

アパホテルは、新型コロナウイルス患者の受け入れをしたことで、社会的な評価を高めました。このような受け入れは、事業活動の遂行にあたってリスクが高いことですが、現在は、信念と行動を一致させることの方が、評価の比重が大きくなっていると言えます。

[本文]

今回も、前回に引き続き、PRストラテジストの本田哲也さんのご著書、「ナラティブカンパニー-企業を変革する『物語』の力」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。本田さんは、事業活動においては、「信念と行動の一貫性」が重要だと述べておられます。これは、「言っているだけでなく、行動せよ」という意味で、その事例で、アパホテルのコロナ患者受け入れについて紹介しておられます。「国内での新型コロナウィルス感染が拡大し、日本もニューヨークのように、医療崩壊が起きてしまうのではないかと危惧されていた、2020年4月3日、アパグループは、無症状者、及び、軽症者の受け入れを表明した。

緊急事態宣言が発出された4月7日よりも早い段階での決断だ。読者もご存じだと思うが、アパグループ、及び、アパホテルは、個性的な社長のキャラクターや、政治色の濃い活動、シェア寡占を目指す拡大路線などで、良くも悪くも目立ち、ファンも多いがアンチも多い。しかし、同社の新型コロナウイルス患者の受け入れを、普段は固有名詞など出さないNHKが異例の企業名を出しての報道をすると、ネット上では称賛の声があがり、アパホテルの名前はツイッターのトレンド入りを果たした。

アパグループは東日本大震災の時にも、全館営業して、食料品や、毛布、ベッドなどを避難者に提供し続けるという決断をし、困っている人たちを救済する活動をしている。新型コロナウイルス患者の受け入れも、政府に要請されたからというだけではなく、実は、以前からやっている、一貫性のある行動なのだ。アパグループとしては、このような行動はブランドマネジメントの一環であって、オーセンティシティは考えていないかもしれない。しかし、アパらしさ、自分らしさに基づいた行動をすることによって、結果的にオーセンティシティを示すことに成功している」(69ページ)

「オーセンティシティ」とは、辞書では、「真実性」という意味であると書かれていますが、本田さんは、ここでは、「人間として、裏表がないこと」という意味で使っておられるようです。ところで、アパホテルは、創業者の元谷外志雄さんは、信用金庫勤務を経て、不動産会社を起業し、ホテル事業に乗り出した方です。そのような、「よそ者」が業績を伸ばしている状態であれば、既存の宿泊業の方たちは元谷さんたちを疎んじることでしょう。しかし、新型コロナウイルス患者の受け入れをいち早く表明するという決断を行うことで、元谷さんたちは社会的な評価を高めています。

とはいえ、私は、元谷さんの決断は、100%正しいとは考えていません。新型コロナウイルス患者の受け入れをすることは、当時としてはリスクが高かったと思います。場合によっては、会社の存続にも関わることだったと思います。でも、元谷さんは、そのようなリスクを受け入れたことが、社会的な評価を高める結果になりました。繰り返しますが、必ずしも、新型コロナウイルス患者の受け入れとすることが正解で、受け入れをしないことは不正解ということではないと私は考えています。とはいえ、現在は、「一貫性」のある会社が評価されるようになっているということを、経営者の方は認識することが大切だと思います。

2023/1/9 No.2217

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