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詩 鳥人組曲


#Out of Nowhere

どこから来て
なにを吹いて
だれが生きて
どこへ消えた
…というのだ


#Ornithology

天使も
天狗も
羽根をもつ
空を飛ぶ
けれど鳥ではない
オザーク山から帰った
その男だけが
鳥となった


#Bird of Paradise

迦陵頻伽が鳴くのは聴いた
夢では迦陵頻伽を捕まえた
けれど
迦陵頻伽の棲処はしらない


#Now 's the Time

いま!
ここ!
そう男が歌う最中に
永遠を見た
いや聴いたのか
居酒屋で
呑んで喋っていて
永遠は背中で鳴ったのだ


#Koko

無々
虚々
奇々
鷹の空を翔ぶ
鍵は
チェロキー
難解な




#Klact -oveeseds-tene

さあ
どんなことだか
じぶんのことも
たにんのことも
かいもくわからない
じぶんでいきて
なにをしたのか
なにがあったか
そんなことも
じつのところ
よくわかっていない


#Yardbird Suit

鶏で生きても
人で生きても
碌なことはない
地面をつつき
世界をつつき
時に美しい卵を産む
卵を孵したり
割ったり
食べたりは
また別の誰か


#Crazeology

ヒップデ
ホップデ
ジャンプスレバ
コレ
バッパーナリ
ラッパーナリ
狂騒カラ
タマニ
頓狂ナルモノウマレ
マレニ
風狂ノモノアラワル


#Anthropology

鳥に憧れ
魚を恋し
石や
樹になりたがる
じぶんを
肯定も
否定もできる
われを
忘れることもある


#Parker 's Mood

よくとおる
美しい声をもった鳥が
森で悩んでいる
ああしようか
いやこうだ
鳥は悩んでいるが
森の木々はみなしゃっとする
天に伸び
風に踊りたくなる
太陽が翳っても
空が凍っても
鳥が歌えば
森はいつでも発光する
発熱する


 チャーリー・パーカー生誕百年記念のジャム・セッションで演奏した──と夢想した曲名をタイトルに、曲順もそのままに詩を書いてみた。ちょっとサックスを咥えてアドリブで吹いてみるという案配で、そうしっかり構想したものではない。
 パーカーのオリジナル「ヤードバード組曲」は、組曲とはいうものの三分前後の一曲きりだが、これらの十篇はわが「ヤードバード組曲」の趣。


チャーリー・パーカー生誕百年記念ジャム・セッションは音座マリカの陶像を使った六角文庫の架空ライヴです。
Bird Lives!


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