驟雨の挺進隊 -本多挺進隊インパール戦記-
昭和十九年三月下旬
ビルマ・インド国境付近
「おいっ、足を踏むなっ!」
「すみませんっ……」
そのようなやりとりがそこかしこで交わされている。
怒鳴っているのは第十五師団(部隊通称:祭兵団・以下『祭』)配下の歩兵第六十連隊(以下『松村連隊』)の兵士。それを急ぎ追い越そうとして怒鳴られているのは、同じ『祭』の本多挺進隊である。
足を踏んでしまうのは、無論、道が狭いためである。自動車などは通れないので装備は馬や牛に背負わせるか自分で背負っている。よって兵士一人当たりの装