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戦記小説

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知られざる戦いを掘り起こし、また有名な戦闘の視点を変え、深堀りして戦争の本質に迫ります。
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記事一覧

生き抜く ー南極観測船『宗谷』秘史ー

昭和十八年一月二十八日 早朝 ニューギニア ブカ島 クイーンカロライン 日本海軍 特務艦『…

秋田しげと
3か月前
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雪の中の歩兵銃 ー八甲田山雪中行軍秘話ー

明治三十五年 一月二十八日 青森県 八甲田山中 弘前歩兵第三十一連隊・雪中行軍隊 「真っ白…

秋田しげと
3か月前
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ワレ戦闘航海ニ支障ナシ ー物見崎沖海戦ー

昭和十九年六月十四日 青森県下北半島 物見崎沖 「破口を塞げっ! 板切れ持って来い早くっ!…

秋田しげと
5か月前
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犠牲艦隊の海 ーサマール沖海戦ー

昭和19年10月25日 6時40分 フィリピン サマール島沖 第一遊撃部隊 戦艦『大和』 …

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『海戦』 -九州南西海上不審船事件-

平成十三年十二月二十二日 九州南西海上 「国旗を、掲げなさい。ただちに、停船せよ。本船は…

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とうもろこしの寿命 ー捜索第五連隊マレー戦記ー

昭和十六年十二月八日 零時 マレー半島 シンゴラ沖 輸送船『香椎丸』 「海軍より先に戦争…

武士の情けと五平餅  -宮崎支隊インパール戦記-

 戦争が終わった今、老将軍は茶碗などの陶器を販売して、なんとかその日の生計を立てている状態だった。  私が戦闘状況聞き取りのために訪問した際も、狭い店内に陳列されているおびただしい数の陶器を一つ一つ、丁寧に拭いていた。  そして聞き取りを始めたのだが、予想通り、話は要領を得ない。  噂では、モウロクして当時のことを聞き出すのは困難だと言われていたが、その通りだと思った。名将軍と言われたこの人も、時の流れと老いには勝てない、というところか。 「すると、宮崎さんは、祭兵団(

カレーの市民

……お前たちの指は、その手と同じに尊く、お前たちの足は体と同じく尊い。身体は手足の奉仕を…

視界とレーダーの狭間 -ルンガ沖夜戦-

1942年11月30日 23時 ガダルカナル島・ルンガ岬沖 日本海軍 第二水雷戦隊 駆逐艦…

サクラ・サクラ…… -歩兵第十五連隊ペリリュー逆上陸戦-

昭和十九年九月二十二日 二十三時三十分 ペリリュー島沖 北5キロ地点 歩兵第十五連隊 ペリ…

恐れ、知恵、戦い。弱小明治日本の見たもの ー日本海海戦ー

明治三十八年五月二十七日 四時三十分 対馬沖 哨戒艦『信濃丸』艦上  月明かりに照らされた…

届かぬ肖像画 -ニューギニア戦記-

-ジャワの極楽、ビルマの地獄、死んでも帰れぬニューギニア- 昭和二十年三月十七日 ニュー…

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鬼のまま、死す ー戦車第九連隊サイパン島戦記ー

昭和十九年四月一日 東京湾 戦時標準輸送船『加古川丸』甲板上 「ええと、戦車を舷側に並べ…

驟雨の挺進隊 -本多挺進隊インパール戦記-

昭和十九年三月下旬 ビルマ・インド国境付近 「おいっ、足を踏むなっ!」 「すみませんっ……」  そのようなやりとりがそこかしこで交わされている。  怒鳴っているのは第十五師団(部隊通称:祭兵団・以下『祭』)配下の歩兵第六十連隊(以下『松村連隊』)の兵士。それを急ぎ追い越そうとして怒鳴られているのは、同じ『祭』の本多挺進隊である。  足を踏んでしまうのは、無論、道が狭いためである。自動車などは通れないので装備は馬や牛に背負わせるか自分で背負っている。よって兵士一人当たりの装