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かなわない

将棋の世界を描いた羽海野チカさんの漫画、「3月のライオン」の中で、印象に残っている言葉がある。

獅子王戦で、天才と呼ばれる宗谷名人に挑む島田八段。
同い年である彼について島田八段はこう語る。

どんなに登りつめても決してゆるまず自分を過信することがない
だから差は縮まらない
どこまで行っても
しかし「縮まらないから」といってそれがオレが進まない理由にはならん
「抜けない事があきらか」だからってオレが「努力しなくていい」って事にはならない

羽海野チカ「3月のライオン」4巻より


到底自分には手の届かない事柄や相手が現れると、思考回路が停止してしまう。
元々持っているものが違うから、どうせ頑張ったって勝ち目はないから。
努力なんてする意味がない。
そう自分を納得させて、同じ土俵に立つことを諦め続けてきた。
その方が楽だから。
必要以上に傷付かなくてすむから。

けれど、島田八段のこの台詞を見て、どんなに突き抜けているように見える人でも、人目に触れないところで自分と戦っていることに気付かされた。
そして、相手に「かなわない」と思いながらも自分の可能性を信じて孤独に戦っている人たちがいることも。
努力は裏切らない、とは思わないけど、はなから向き合うことを放棄するのは自分にも相手にも失礼なのだと。

つまるところ、私は私に出来ることを積み重ねていくしかない。
それが人生。