見出し画像

パリ旅2020⑤iPhoneを盗まれた話(2)

前回の投稿から、もうだーいぶ時間が経ってしまった・・・!のだけど、海外旅行に出かけられない今だからこそ、その記憶を取り出しておこうと思い立ち執筆再開。

(時間が経ってしまったので、軽く)前回までのまとめ:

・わたしは海外旅行が好きで若い時分はひとり旅も楽しんだ
・ハハになって以来最大のピンチ(鬱)を海外ひとり旅で克服した経験から、第二子出産後はピンチ到来前にとりあえずパリに旅することに決め出発
・10年以上のお付き合いになる大切な人にもコロナ前の駆け込みタイミングで会えてよかった
・しかし、旅の2日目という序盤戦、(旅慣れているという自負があるにもかかわらず)人生で初めての「スリ」に遭い、命綱であるiPhoneを盗まれるという事件に直面・・・!


さて。

翌朝。

窓から見えるのは、寒々しくどんよりとした空の色。
旅先でiPhoneをなくし(盗まれ)、半泣き半笑いな、でもやっぱり不安でいっぱいのわたしの胃を、さらにきりきりとさせるようなお天気・・・。自分の不注意をはぁぁと憂いながら支度を済ませ、小雨の降る中、アパルトマンの外に出て、ただひたすら、Appleストアを目指す。

前夜に、事件現場近くのホテルのコンシェルジュさんから拝借したPCにて調べた結果、シャンゼリゼのストアが宿泊先から徒歩圏内だったので、そちらへ。

日曜朝の静かな路地をてくてくと歩き、まだまだ人気の少ないシャンゼリゼへ出て、すぐ隣の、明らかに観光客向けのカフェに陣取り、大きなオムレツのついた朝食をとって、開店を待ち・・・

自分が、(例え東京であったとしても)Appleストアの開店待ちをするなんて、一度も想像したこと、なかったよ!

Appleの新製品発売が、わたしの不運と重なっていなかったことだけは、不幸中の幸いだったと思った。本当に。お店の前で開店待ちをしていたのは数人で、それはたまたま、その日の都合で、朝早くにお店に来たであろう(おそらくね)人たちだった。

そうして、わたしはその日、4番目に入り口を通った顧客として(そして多分、お会計したのはその日1番早かったと思う!開店前に特別の事情などなければ)、世界中のアップル店舗の中でももっとも壮大(といわれている)な店内に足を踏み入れたのでした。何しろ、パリの中心部らしく、19世紀に建てられたアパルトマンを改装してつくったというのだから、それはそれは素敵で。スリにあったなんて悲惨な状況で来店していなければ、有頂天になりそうな店内で、例えスリにあったという悲惨な状況で来店しても、その傷がハラハラハラ〜と癒えそうな店内で、まぁ、とにかくそのようにうつくしいお店だったということです。

しかし、とにもかくにも、わたしの目的はただ一つ。

この旅を、楽しく快適に安全に豊かにやりくりするために、そのための全情報が入った通信機器であり生命線であるiPhoneを一刻も早く手にすること。

映画のセットのような店内に足を踏み入れるや否や、わたしはなんの色気もなく、一番最初に目が合った店員さんに、「iPhoneがほしいんです」と話しかけた。近々iPhone買おうという予定もなかったから、どんな機種が出てるとかそんな情報も持っていなかったし、いくらこんなお洒落なアパルトマン店舗だからって、ぷらっと周遊する精神的余裕なんてのも持ち合わせていない。なんでもいいからとにかく最短距離でわたしをiPhone売り場に連れてって〜!

入り口で対応してくれたアジア系のきれいなお姉さん店員さんから、iPhone担当らしいパリジャン(大括り)店員さんに引き継がれて、そこからは、もう、ものの10分で購入するものがすべて決まりました。

「きのう、iPhoneを盗まれちゃって。予定外の出費だから、今買えるやつでリーズナブルなのがいい。」みたいなオーダーで、じゃ、これですねー(カメラ3つは要らないね)、カバーはこの辺から選んで、保護フィルムも要る?みたいな。YES, YES, YES, みたいな。

パリジャン店員さんによれば、「この店舗は、そういうお客さん多いよ。スリが本当、多いんだよね。ほんと、接客しててもいつも申し訳なく思っちゃうし、この街のことが恥ずかしくもある・・・」とのことで・・・ 
そんな不名誉な“one of them”になっちゃった自分を改めて情けないと思いつつ、でも本当に、何度も何度も、デンジャラス含む、な旅もしてきて、ここに来て初めてスリにあったというのも、これまでがラッキー過ぎたのか、なんなのか。初めて「お金持ってぽけぽけしてそうに見えた」というのもマダムの入り口としては名誉なのかどうか(名誉なわけない)。


それにしても感動したのは、Appleストアで受けるサービスのオペレーションが、東京のそれをまったく同じで、言葉・文化が違ったとしても、全然惑うことなくスムーズに進んだということ。

新宿のAppleストアでお買い物をしたり、ジーニアスなお方にサービス受けたりするときとかと寸分違わず、こちらから出す情報は一緒だし(Apple IDあればなんとでもなる)、店員さんの業務の流れも変わらない。ストレスフリーで安心して接客を受けることができて、それがなんだかしみじみと、ありがたいことのように感じられた。特に、異国の地で痛手をおった心には、「非アウェイ感」がなんとも心地よかったのです。

前夜の、ピンチ直後のFacebookフル活用もそうだし、この後、iPhoneにさまざま情報を取り戻して「自分のもの」にしていく作業においてはGoogleさえあればなんとでもなる状況で、こ、これがGAFAの実力か・・・!と、わたしのインフラ!外付けHDD!身体の一部!っていう、もはや、いわゆるGAFA脅威論なんかは一気に飛び越えて、一個人のリアルライフ的にはもはやリスペクト(畏敬)しかなく、そうして、自分がいかに、(他方で何かを失っているとしても)ある意味シームレスで自由な、可能性に満ちた世界に生きているのだということを、まざまざと実感する出来事となったのでした。


入店から設定完了までものの1時間程度。無事にピカピカのiPhone(パリジェンヌと命名)をゲットし、偶然にも誕生日が一緒だった(生まれ年は10年以上違ったけど・・・)店員さん(2度ほど訪日旅行をして、好きな街は高円寺、次はお遍路に挑戦したいという、通)に別れを告げ、裏通りのタバコ屋でSIMカードを購入してセット。「海外ひとりぼっちで誰ともどうにも連絡取れないし手持ちの旅行情報ひとつもない状況に陥る」事件は、発生から約18時間で無事幕引きとなったのでした。

とてもとても長い時間、不安に過ごした気がするけれど、冷静にみると、そんなものなのか。

すごいな、現代世界の、都市の暮らしの便利さというものは(語彙力)。

そうして、帰国後も、わたしの失われたiPhoneの位置情報が、しばらくの間find my iPhoneにて表示され続けていて・・・うん、あなたはきっとそこに居残りしたかったんだよね・・・

なんて思えるほどには、いい思い出にもなって・・・いるような、いないような?
少なくとも、ロマンチックな話ではないデスね、はい。

みなさん、スリには気をつけましょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?