わたしは長い間、浮気をされたら当たり前のように悲しんできた。
それはもう無意識に悲しかった。どんな浮気だって浮気だ。

でもそもそも、なぜ浮気がそんなに悲しいのか？

彼からの愛情を毎日感じる。
日々、愛されていると実感できる。
だとしたらもしかして、彼の浮気など大した問題ではないのではないか？

いやいや、愛情を感じていたからこそ、
2人の関係が上手く行っていたからこそ、
問題なんじゃないのか？
だって彼は、2人の関係を不満に思い浮気に走った訳ではないのだから。

むしろ例えば、付き合いたての蜜月、
結婚を間近に控えたワクワクする未来の前、
幸せな日々の最中に、
まるで、あらかじめ決まっていたスケジュールの様に彼らは浮気をするのだ。

という事は、私が何かを改善したからといって防げる訳じゃない。

私たちには、直すべきところなどないのだ。
こんな事を言ったら、傲慢に思われてしまうかもしれないけど、
でも実際に浮気をされて1番辛いのは、自分自身を責めてしまう事だと思う。
だけど私たちに非などない。

でも、私たちに原因がある訳じゃないなら、一体どうすればよいのか？
八方塞がり、出口のないトンネル入ってしまった気分。

もちろん、状況は人それぞれ、色々なケースがある。
自分が忙しくて、彼に長い空間寂しい思いをさせてしまった、心のケアも出来なかった。
長い間SEXを拒んでいた。など、
私たちに改善する余地がある場合もあるだろうし、それは浮気だけが問題な訳じゃなく、
2人の関係自体になにか別の問題があるのかもしれない。

でも、関係が上手くいっていた場合、彼の愛情をしっかり感じていた場合、
私自身と彼の浮気は関係ないと思う。

そりゃ、私にも悪いところは沢山あるし、
その事を彼が不満に思っていたかもしれない。いや、いたと思う。
喧嘩もしたし、ひどい事も言った。
でも、それはお互い様だ。
その事で気持ちが冷めたり、嫌いになってしまう事はあると思うし、それは仕方ない。
でも、だからといって、その事が浮気をする理由にはならないし、
それを理由にするのは卑怯だ。

浮気をする理由はそんなに複雑じゃない。

ただ、男の性なのだ。
本能レベルの性欲。

彼らには、私たちが感じるのとは違う強い性欲がある。
そんなの今や科学でも証明済の、みんなが知っている当たり前の事実だ。

でもそれを知っているのに、私たちが浮気を許せないのはなぜだろう。

世間が浮気を許さない雰囲気だから。

恋人は、自分だけを愛してくれるのが当たり前で、自分とだけSEXをするのもだと、私たちは大人になるまでにどこかの誰かに聞いたのだ。
小学生の時に読んだ漫画、ドラマ、親、まわりに居る大人たちから。

石田純一は、不倫は文化だと言ったけど、
不倫や浮気を許さない文化こそ、世界中にある。

文化にまでなってしまっているから、私たちは浮気を許す事が出来ないのではないか？？

さっきも言ったけど、浮気が許せない気持ちとは別に、浮気をされた自分、それを我慢している自分が許せずに苦しむ事がある。

浮気をされて悲しい理由は、
もちろん、彼が自分以外の女の子を抱きしめて眠る事だけど、浮気をされたと話した時の友達の反応、親には話せないけど、話したらなんて言われるんだろうという不安。
そんな不安が、浮気された事実に追い打ちをかけ、私たちの悲しみをより深くする。

大好きな人に浮気をされて、
辛い気持ち、怒りを友達に話せば、
きっとみんな、そんな男と別れた方がいいと言う。

浮気を許すなんてバカな女。ダメ男好きのレッテルを貼られて。

でも、浮気をされたからといって彼を嫌いになれる訳じゃないのだ。

友達や家族を心配させたくなくて、誰にも話せなかったり、友達には別れると宣言したのに別れる事が出来ず、その事に罪悪感を持ったりしなければならない。

だけど自分の本当の気持ちはどうだろう。

世界に共有されている文化に異論がないなら、浮気をされた時点で、あっさりとお別れしているはずだ。

だけど別れない事を選んだ。
きっとその時点で私たちは、世界の文化より、彼との間に生まれた愛を信じたのだ。
世界を敵にまわしても、私はこの人と一緒にいたいのだと。

でも、出来たら世界を敵にまわしたくなんてない。
友達や家族には、できるなら応援してほしいい。

世界共通の、この文化さえなければ、
私たちはもっと素直に、彼らが本能として持っている性欲を受け入れる事が出来ると思う。

この世界共通の文化には、無視されている事がある。
みんなその事に気がついていない振りをして、決して話さない。

私は我慢して浮気をしない訳じゃない。
彼は浮気を我慢しなければならない。
出だしから彼のが圧倒的に不利だ。

我慢しなくても普通に1人の男と付き合っていける私と我慢しなければ1人の女と普通に付き合うことが出来ない彼。なぜ私たちはこんな不公平を見て見ぬふりするのだろう。絶対ミスをしそうな仕事を新人に任せて、案の定ミスをした新人に、あ！ミスしたな！と責める。これはイジメに等しい。

私たちはそのことを心のどこかでわかっている。彼がこれから一生私としかセックスをしない、なんて本気で思ってる訳ない。
だけどその事実を受け止める覚悟も、乗り越える勇気も、自分を慰めるアイディアも何一つ用意しようとしない。
一度考えてしまえば面倒になってしまうし、今だけでもこの生温い幸せに浸かっていたいと思うからだろう。

だから、きっとこの人は違うだろう、私の為に変わってくれるに違いない、と信じてもいないのに信じている振りをして誤魔化す。

そしてやっぱり彼は浮気する。
信じていなかったくせに、相変わらず信じていた振りをして悲しむ。
それで可愛い私を封印する。
時間が経って仲直りする。
忘れた頃に彼はまた浮気をする。
これじゃあ永遠に続くループだ。

なら視点を変えてしまった方がずっと簡単。

私は今更そのことに気がつく。
彼を失くしてやっと気がつく。
いやでも、失くさなかったらきっと永遠に気がつけなかったのかもしれない。