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ラブストーリーは突然に

「お願いだから普通になって」
と、母から切願されていた子供時代。

《普通》という事が分からなくて、

自分の中では《普通》なのに、
他から見ると《普通》じゃない事自体が分からなくて、
《普通になって》と切願されても私も困るだけだった。

大人になって母は、
「いつも突拍子もない事ばかりする」

と、
半ば諦め、半ば受け入れ、
普通を求める代わりに《変人》カテゴリーに私を入れる事で

コントロール不可な娘を
どうにかコントロールしているつもりだったのかもしれない。
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《普通》なら絶壁に思えるような逆境さえも
直感に従って興味たっぷりに突き進んでしまうから
変人に思われたりするんだけれど、

そんな変人に向かって最近母は、驚くべき事を言い始めている。

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「こんなにも親孝行してくれて、本当にありがとう。」
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2月に父が他界し、一時帰国を終えてこちらに戻ってから
私は母に、頻繁に電話をするようになった。

でも私がしているのは、それだけ。
電話だけ。

それなのに、感謝の気持ちを込めながら「親孝行をありがとう」としみじみ深く言われたら、

思わず電話口で号泣しそうになるじゃない。

最近の母はLINEの使い方も分からなくなってしまったから
ビデオではなく声だけでの電話。

だから、涙をこらえている私の顔は、彼女には見えない。

「こんなに役に立たない年寄りなのに、皆親切過ぎるくらい親切なのよ。」

「パパのおかげで、私はお金の心配をした事は一度もなかったわ。不足しているものが何も無いの。なんて幸せなんでしょうね。」

「こんなに親孝行の子供たちがいるって、本当にありがたい。」

と、口から口から、ポジティブな言葉しか出てこない。

母との関係で長年悩んできた子供時代、
母のネガティブな言葉や、コントロールされている感覚に苛まされてきた過去の私がまるで慟哭する程

穏やかで、感謝に満ちていて、手に入れたくてたまらなかった母からの温かな《無条件の愛》が、今、ここに、こぼれ溢れる程感じられている。

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これが、本当の彼女なんだ
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良き妻、良き母、良き家庭を守るために彼女は自分の本質にさえ目を向けず、

ただただ頑張って生きてきたんだろう。

そんな母の生き方を思うと、私が昔感じていた母への葛藤等も全て綺麗に消え去るようにスーッとどこかへいってしまい、

様々なヒーリングやセラピーを私自身も受けてきたその賜物でもあると同時に、

私の魂が作り出してきた
《親子の愛の物語》に
明らかなエンディングを観ている感覚になる。

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母の本質は、本当は、愛でしかなかった。
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彼女が私に《普通》を切望していたように、

《無条件の愛》を切望していた子供時代の私。

《親孝行》と感じてくれる、電話。

彼女の中では、
《普通》の電話を超えた、《親孝行の国際電話》。

数えきれない程のドラマを経てきてた《親子の愛の物語》は、

本当はシンプルすぎて
愛に満ち溢れすぎていたからこそ

それをこんなにも感じさせてくれるように
コントラストであるドラマを沢山沢山生み出してきたのだと、今の私は、魂全体でほくそ笑んでしまう。

私は彼女の人生を尊び、愛し、とても大切に誇りに思う。

そして私自身の人生を、
丸ごと全て
大きく抱きしめ続けたい程
深く、深く、
愛してやまない。


ミッタークろみの著書


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