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未経験からのIT業界_4 「可愛がられキャラ」というスキルは諸刃の剣

可愛がられキャラは職場の生産性を上げる

誰が言い出したか知らないが「男は度胸、女は愛嬌」という言葉がある。しかし、これをサラリーマン風に言うならば「男は愛嬌、女は愛嬌、新入社員はもっと愛嬌」と言ったほうが正しいだろうか?

エンジニアなら人間性ではなく、スキルで勝負、そんなことを思っている人もいるかもしれない。私もそんな風に考えていた時があった。しかし、組織で働く上において「職場の雰囲気を良くすること」は職場全体の生産性を大きく押し上げる。そのビジネス効果ははかりしれない。

実力100%の世界と思われているスポーツの世界ですらそうだ。インテルミラノでレギュラーの座を勝ち取った長友佑都選手は、その人間性が愛されチーム内からもサポーターからも評価を勝ち取った。人間性でチームを盛り上げること、それは大きなスキルである。

こちらの記事でも書いたが、周りに応援されることはキャリアアップにおいてとても重要なことだ。これは「媚びる」とは明確に違う。周囲が力を出しやすい環境を作れるように努力し、それによって周囲からも応援されるようになることは媚びるとは違う立派な仕事上のスキルだ。

可愛がられキャラの落とし穴

だが、ここで大きな落とし穴がある。コミュニケーション力に過度に依存する人は、次第に大きな壁にぶつかる傾向がある。

「愛されないポンコツキャラ」と「愛されるポンコツキャラ」がある。「愛されないポンコツキャラ」は最初から怒られ続けるため、自分が職場で通用していないことに気付いているので、努力をしなきゃいけない、と奮起するきっかけを持ちやすい。ところが愛されるポンコツキャラ」は「自分は上司とも顧客ともうまくやれている。社会人生活は順調だ」と勘違いしがちだ。世の中は恐ろしい。上司も顧客もずっとシビアにあなたのことを見ている、と認識する必要がある。ある日突然使えないやつ扱いをされて面食らうことになる。

ある、パートナーのPMが新卒のプロパー(顧客正社員)に「技術的には分かって無くても大丈夫だよ、うまくさばければ何とかなるから」と言っているのを聞いていたが、彼は仕事ができないPMとして裏ではリストラリストに入っていた。人当たりが良く、顧客のマネージャーのタバコ仲間のため本人はうまくやれていると思っていたが、周りは評価していなかった。大企業のマネージャーは本音を表の顔で見せない人が多い。フレンドリーに話をしてくれるから、という理由でうまく出来ていると思うのは愚の骨頂である。彼らは狡猾で頭が良い。あなたの真の実力は見透かされている。

長友選手の人間性に対する評価は本質的なサッカーの実力の上に成り立っている。どんなに人間性が良くてもサッカーが下手ではインテルのレギュラーにはなりえない。

SESにおける可愛がられキャラの怖さ

ここで、SES社員ならではの怖さがある。「愛されるポンコツキャラ」はある日突然仕事を切られる危険性が高いことだ。大企業の正社員だと「あいつは使えないやつだけど、まあ悪いやつではないから、なんかあいつでも出来そうな簡単仕事をあてがってやろう」となるが、SESだと顧客先の契約を切られるとそのまま仕事がなくなってしまう(給料が出なくなるわけではないが、最悪待機になる)。そのまま別の仕事に移るわけだが、その時にコミュニケーション能力だけしか仕事で鍛えていない人は、スキルをアピールしてキャリアアップをする術がない。畢竟、これまでの仕事よりもキャリアダウンした仕事に就くケースも多くなる。

多くの人はこの時点で今までただダラダラと要領よく日々を過ごしていたことを悔いることになる。「資格でも取ってればよかったなあ」とぼやくことになるが、足りなかったのは資格ではなく、危機感である。

ポンコツ可愛がられキャラは己のポンコツを知ってからがスタート

結論として、愛嬌は重要だが愛嬌だけで生きていくのもそれはそれでいばらの道である。そして怖いのは愛嬌だけで生きてくのは年を取っていくほどにむずかしくなっていくことだ。

特に配属するプロジェクトが急に変わることの多い職場では、スキルを着実に積み上げていくことが重要になってくる。まずは自分がポンコツであることを認識し、少しでもポンコツを解消していけるように努力することが重要だ。



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