Alan Westin先生に頂いたサイン:謹賀新年

新年あけましておめでとうございます。
2019年は「自分の好きな原稿を書く年」と決めましたので、ブログ(情報法 note)を本格的にはじめていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

ということで新年の情報法の話題を何からはじめようかと思いましたが、とりあえず(私が)めでたいものにしようということで、ちょっと最近某所で話題にあがったウェスティン先生のサイン本の話でも書こうということでこれにしてみました。
上記の肉筆サインをご覧下さい。背景の地の色も赤いので、めでたい感じもいたします。

コロンビア大学名誉教授の Alan Furman Westin (1929 –2013)先生は、Privacy and Freedom(1967)、Databanks in a Free Society(1972)、Computers, Health Records, and Citizen Rights(1976)などの著書があり、Arthur R.Miller先生などともに1970年代からの日本の学説にも大きな影響を与えました。*1

*1 佐藤幸治先生はこうした論考が発表される時期に在外研究で米国に滞在されております。そして帰国後に精力的に提唱されたのが「自己情報コントロール権」説ですが、両先生の影響も少なからずあるのだろうと思います。例えば、1972(昭和47)年に発刊された『現代損害賠償法講座 2 名誉・プライバシー』(日本評論社)に佐藤幸治先生の「現代社会とプライバシー」という論文が収載されておりますが注釈にArthur R.Miller先生などのお名前を見ることができます。

このサインは、2004年5月に外務省で日米官民プライバシー懇談会という非公式会合が開かれたときにPrivacy and Freedomという本を持参していただいたものです。個人的には、大変めでたい思い出なので、お正月にアップしてみました。

この会議は、日米貿易摩擦を背景にした日米構造協議の中で開催されたものの一つです。会場は外務省でした。会合の内容は、2003(平成15)年5月に成立した「個人情報の保護に関する法律」の下に制定された個人情報保護法ガイドライン(告示)が主務大臣ごとに乱立(?)されていることから、一種の非関税障壁になってはいないか?と米国側から懸念を示されたので、いやいや大丈夫ですよと払拭するためのものでした。

COCOM違反事件から橋本通産大臣時代の日米自動車交渉のような日米の対立が先鋭化した時代ではなかったため、終始和やかな会合ではありましたが、確かに非関税障壁ではないものの、主務大臣制の下で、省庁間の告示で示される政府解釈に揺らぎが出てくるような問題はあったわけです。例えば、「個人情報」の定義における照合性の判断基準として提供元基準を採用する伝統的な政府解釈の中において、厚労省のみが提供先基準的な考え方を一部採用しているような状態などもありました。この問題が顕在化するまでには、さらに数年を待たなければならないのですが、こうした問題の一部は、平成27年改正において一つに委員会制度へ移行することで(ガイドラインが一元化され)、また政府解釈があらためて提供元基準だると確認されることで解消されることになります。
個人情報保護法の越境データ問題は、昨今の欧州の個人データ保護指令やその後のGDPRにおける十分性認定との関係で注目されることが多い昨今ですが、当時は、日米関係においても非関税障壁という観点からも取り上げられておりました。いずれにせよ、今後は日米欧亜、欧米流の普遍的思想を継受する国々を中心にデータ流通を確保する方向でさらなる検討を進めていかなければなりません。

ちなみに、米国からの出席者は、商務省とUSTRそしてウェスティン先生とマイクロソフトなど北米系企業、なぜか夏井高人先生(米国大使館側からのお招き)でした。そして日本からは、内閣府、経済産業省、総務省、厚生労働省、金融庁、外務省のほか堀部政男先生、私とヤフーから別所さんほかが参加しておりました。

ウェスティン先生は、講演会などで遠目からは拝見したことはありましたが、直接ご挨拶できたのは、この時がはじめてでした。堀部先生とウェスティン先生は40年近く親しく交流がありました。その恩師の紹介がありましたし、会合も少人数で和やかでありました。ついでに終了後に時間的なゆとりがあったことなども幸いしました。最初からもらう気満々で本を持参しておりましたので、首尾良く目的を達成したというわけです。お宝本の一冊になりました。
悔やまれるのは、古本でしか調達していなかったことと、私の名前を書いてもらわなかったこと、渡した私のボールペンがイマイチだったことですね。完全に準備不足でした。
ちなみに、このPrivacy and Freedomという本ですが、最近、復刊されて入手しやすくなっております。名著の証でしょう。その冒頭には、Daniel. J.Solove先生が、The Legacy of Privacy and Freedomと題する前文を3ページ添えられております。米国を代表するプライバシー法研究者の新旧交代というか、バトンを渡す図をみるようですね。

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鈴木正朝

新潟大学 大学院現代社会文化研究科・法学部 教授、 理化学研究所 革新知能統合研究センター(AIP)情報法制チームリーダー(PI)兼任、 一般財団法人情報法制研究所 理事長 兼任、 個人HP:https://rompal.org/
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