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JILIS/NFI共催 第1回情報法制セミナー in 京都

一般財団法人情報法制研究所(JILIS)一般社団法人次世代基盤政策研究所(NFI)共催、情報法制学会(ALIS)の後援で下記のとおり、情報法制セミナーを開催致します。コロナで中断しておりましたが、3年ぶりに京都大学での開催です。

今回のテーマは、医療データです。次世代医療基盤法改正仮名加工医療情報の二次利用法の制定は喫緊の課題です。
パンデミック対策におけるワクチンの重要性と調達の困難さはコロナに直面して身にしみたところですが、それ以上の感染症に再度見舞われるであろうことを前提とした取り組みが必要です。またそれに限らず、治療効果をあげていくための薬の開発は多くの患者とその家族が待ち望んでいるところです。そうした創薬を支える医療データの質と量と種類を担保するための法制度の整備が急がれます。また、医療AIの研究開発を進展させるためには、やはり教師データとなる医療データの質と量と種類を担保するための法制度の整備が必要となります。

一方、EUは、世界の個人データ保護法制をリードする個人データ保護規則(GDPR)の下で、今回EUヘルスデータスペース(EHDS)という医療データの特別法制定に取り組み、成立目前となっています。基本権(人権)保護を中心に据えながらも、仮名化された医療データを患者等本人の同意のないまま二次利用するところに踏み込んでいます。まさに、仮名データで質を担保し、同意を不要とすることで量と種類を担保することができるということです。
大手製薬企業を有するEUが、EU全域を単一市場とするところで、医療データの質・量を手にするならば、創薬及び医療AIの研究開発における国際競争力は、今以上に格段に増していくことは明かであり、EU域内の各国国民は、他国以上の医療サービスを享受することは間違いのないところでしょう。

さて、日本がそれに劣後すればどうなるか。スマホ、クラウド、プラットフォーム事業の外資依存が進んでいる現状の延長のように、創薬も医療AIも欧米依存が進むほかなくなることでしょう。かくして、日本人の医療データもゲノムデータも国外に流出するか、日本の製薬企業も開発拠点を国外に移転することになりかねません。また、日本国内の医療データの質・量の担保に限界があり、コスト高になる状況が続くなら、国外製薬企業も日本人向けにゲノム創薬含めて開発する意欲は低下し、供給されなくなるドラッグロス問題が発生することになります。

その意味で、厚労省は、現在重要な舵取りを担う局面にあるというべきでしょう。今回の立法政策のありようが日本のデジタル社会の帰趨を決めるといっても過言ではないと思います。

法学側は、仮名加工医療情報の本人同意なき二次利用法案にいかなる基礎理論を提供できるかが問われます。私は、自己情報コントロール権説で説明する限り、一次利用と二次利用の別もなく、選別利用と非選別利用の別もなく、あくまでも本人同意を貫くことを求めるのだろうと思います。それが理論の持つ力で、それがなければご都合主義になってしまいます。
しかし、それを貫くことで、具体的に人間を保護することや社会の課題を解決することにつながらないのだとしたら、単純に論理パズルとして演繹的に解答を出してよしとするドグマに過ぎないということになります。たとえ通説であったとしても理論の再考に踏み出す必要があるということだと思います。
自己情報コントロール権説を基礎に日本版EHDSの制定は可能なのでしょうか。医療データの特別法の議論を通じて、個人情報保護法の基礎理論が問われるところです。

【開催概要】

  1. 日時 2024年1月20日(土)13:30〜17:35

  2. 会場 京都大学 吉田キャンパス 法経第1教室(対面&オンライン)
    〒606-8501 京都市左京区吉田本町 京都大学吉田キャンパス本部構内
                            法経済学部本館
                    https://www.econ.kyoto-u.ac.jp /access/

  3. 交流会:FRIGO(〒606-8204 京都市左京区田中下柳町8-7)

  4. 会費 
    (1) セミナー(現地参加・オンライン参加共に)無料
    (2) 交流会(セミナー終了後に開催)会費:7000円(1月17日〆)

  5. 申込
    下記からお申込下さい。(オンラインの場合はURLをお返しします。)
    https://peatix.com/event/3800009/view

    【プログラム】

    13:15 受付開始
    13:30-13:35 
     開会挨拶
      森田 朗 NFI所長/代表理事・東京大学名誉教授

    13:35-14:35 
    講演1
    「我々は何を為すべきか ー北欧を鏡に日本の医療IT政策を顧みる」
     黒田 知宏 京都大学医学部附属病院 医療情報企画部 教授

    14:35-15:35 
    講演2
    「医療DX後進国からの脱却? :ドイツの最新立法の紹介」
     山田 哲史 京都大学大学院法学研究科教授

    15:35-15:50 休憩(15分)

    15:50-17:30
    パネルディスカッション(100分)
    司会
     曽我部 真裕 京都大学大学院法学研究科教授
            JILIS副理事長・NFI 研究主監
    パネル
     黒田 知宏 京都大学医学部附属病院 医療情報企画部 教授
     山田 哲史 京都大学大学院法学研究科教授
     森田 朗  NFI所長/代表理事・東京大学名誉教授

    17:30-17:35 閉会挨拶
     鈴木 正朝 JILIS理事長・NFI理事 新潟大学法学部教授


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