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個人情報保護法の小ネタ (その1) 「体制」と「態勢」のどっち使うの?

1.金融庁は「態勢」派
 金融機関向けの個人情報保護法対応の本では、昔から「コンプライアンス態勢」というように、「態勢」を使うんだけども、これ金融庁で使われることが多いですよね。例えば、みずほの処分でも「MINORI等の安定稼働に必要となるシステムリスク管理態勢の整備」というように使っています。

「みずほ銀行及びみずほフィナンシャルグループに対する行政処分について」
https://www.fsa.go.jp/news/r3/ginkou/20211126/20211126.html

 でも、一般的には、「コンプライアンス体制」という記述が多いように思いますが、この「体制」と「態勢」の違いって何だろうと。まぁ語義というか語感というか、そのニュアンスの違い、著者の趣味の違い、慣行的問題なのでしょうが、昔からちょっと気になってはおりました。

2.NHKはどう使いわけている?
 日本の標準語とアクセントの定着に絶大なる貢献をしてきたNHKでは、どういう使い分けをされているのか、検索してみたところ、「態勢」は「一時的な対応・身構え」を表すのに対し、「体制」は「統一的、持続的・恒久的な組織・制度」の意味で使い分けるているようです。

 下記サイトにその説明と具体例が掲載されています。
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/173.html

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●体制 [統一的、持続的な組織・制度、長期的な仕組み、システム]
 政治~ 支配~ 社会~ 責任~ 新(旧・現)~ 反~ ~側(派) 戦時~ 資本主義~ ベルサイユ~ 幕藩~

●態勢 [一時的・部分的な対応・身構え]
 受け入れ~ 独走~ 臨戦~ 厳戒(警戒)~ 着陸~ スト~ 選挙~ (○○選に向けた)~固め(づくり)
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 なるほどなぁと思いますが、個人情報保護法の解説等で使う場合は、この中間にあるような感じなのでやはり迷いますよね。

3.私は「体制」派
 私自身は、個人情報保護法問題においては、社内体制のように一貫して「体制」を使ってきました。なぜなら、苦情処理の条文で、その「体制」整備を義務付けているからです。
 ということで迷ったら法令上の用語である「体制」を使う、体制派なのです。
 なお、基本的にどっちでもいいので、金融機関向けの解説では、想定読者が慣れ親しんでいるお役所用語の「態勢」を使うかもしれません。体制派故に「態勢」派になるかもなのです。では。

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「(個人情報取扱事業者による苦情の処理)
第三十五条 個人情報取扱事業者は、個人情報の取扱いに関する苦情の適切かつ迅速な処理に努めなければならない。
 個人情報取扱事業者は、前項の目的を達成するために必要な体制の整備に努めなければならない。」
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