生きること、学ぶこと


(問い)落葉、枯枝からの創作とは?


本郷旧岩崎邸のいちょうの黄色と緑のグラディエーションが見事である。

川村忠晴はこんな時、渋温泉にある工房から飛び出して山に入る。木洩れさす林や森を散策する。灯りの造形作家、灯りの職人、川村は今落葉広いをしている。

倉本聰脚本の「前略おふくろ様」(萩原健一主役)の演出スタッフとして映像の世界に入ったが、やがて自分の道として創作デザインの仕事を始める。若くから、アマゾンの熱帯雨林の保護活動を続け、アマゾンを西洋文明から守ってきた南研子、伝説のレゲエ・ロック歌手南正人、東日本大震災の記憶を残すために震災で汚れた着物のはぎきれでタペストリーを作るしおみえりこ、バティクの更紗染の伊藤ふさみ、鍛金の山口みちよなどたくさんの友人たちと一緒にコンサートやアート展、美術演出や制作を行う。

「ある時、道端で、枯れ朽ちて捨てられていた瓢箪を見つけ、たまたまそれを手に取り太陽の光に翳してみた時、想像を超えたその美しさに感動した。このことが大きなきっかけとなり、自然の植物そのままの素材と小さな光を結びつけて作る、いたってシンプルで心地の良い癒しの『あかり』スタイルができた。」(JIMギャラリー 川村)
 
渋谷、目黒、立川、横浜、益子、小布施、善光寺、安曇野、北杜などで展示会を行う。
ギャラリーの庭に芒が浮かび上がる。ほうづきのほんのりとしたオレンジ色、真っ赤な楓が壁に並び、水桶に浮かんだ薄緑の葉から灯りが透く。小石丸(古代種)という繭が青白く輝く。虫に喰われていろいろな文様をした葉がそのまま並ぶ。枯れ枝が並ぶ。じっと目を凝らすといろいろな形に見えてくる。躍動する人、考える人。
 
川村の作品づくりはきわめてシンプルである。なにもしない。葉っぱを拾ってきたら、ただ乾燥させるだけ。創作も自然でその場で落としてみる。林や森に落ちているときは、自然にそうなったのだから、それが一番である。自然そのもの。灯りは内側から与えるので太陽とは違う。そのときに影が新しい造形を生む。
 
川村とっておしゃれとは何かを尋ねる。「ぼくにとって、自然は神様です。落ち葉には、<土に帰るまでもうひと仕事してくださいね> と囁く。一番おしゃれなものは自然です。」と答えてくれた。何十年といくつかの森に入っているとその姿が変わっていくのがわかる。自然とこうして付き合っていくのである。



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