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建築好きなら読み返したい、2019年のベストnote5選

令和元年の最終日、いかがお過ごしでしょうか。
今年話題になった建築系のnoteを振り返りたいけど、どんなnoteがあったか忘れちゃったよ~、というあなたのために、この1年間に発表された個人的におすすめなnote5選をまとめました!!

といってもやはり面白いnoteほどたくさんシェアされて、すでに読んだという方も多いと思います。
そこで何度読んでも繰り返し発見のあるものを厳選しようと、僕自身ももう一度読み直してみて、改めて面白いと思ったものを取り上げてみました。
寒くてなかなか布団から出られない…! そんな年末年始のお供に、すでに読んだよという方も、初見の方もぜひご一読ください!

◆建築への異常な愛情部門
ラブホは建築(たり得る)か?─建築家が設計したラブホに泊まりに行ったらとんでもないことになってた話|にゃんちあき さん

建築についてのnoteといえば、ある建築作品、あるいは建築家についてその魅力を伝えよう、という動機が定番。趣味として建築を見に出かける、あるいは旅行先で観光名所でもなんでもない、現代建築家による作品に立ち寄るといった話をすると、たいがい不審な目で見られるのです。
そんな状況を少しでも変えていきたいと、われわれ建築好きは見に行った建築物の魅力を語りたくなるんですよね。僕自身も、訪れた建築の魅力をnoteで書き綴っています。そして…2019年の締めくくりに自薦できるようにと力を入れて書いた記事があったのですが。完全に負けました!
対象として扱っている建築物や建築家に対する熱量、見に行った道程やそこで感じた印象を、エンタメとして昇華している。
なにせ扱っている建築が「ラブホ」なので、途中「なにを読まされているんだ」と思いながらもグイグイ引き込まれてしまいます。専門用語を避け、だれにでもわかりやすい文章を追求しつつ、作品や建築家のどこがすごいのかもきちんと伝わるテキストに感服しました。

「ラブホ」に強い興味を抱いてきた。食欲/性欲/睡眠欲という三大欲求の全てを満たしうるアルティメット空間は、自宅を除けばラブホの他にない、と口から泡を飛ばして訴えてきた。宿泊施設の体裁ではあるが、これは単に主役がベッドであるというだけであり、「休憩」なんて名目(?)で、数時間単位で借りられる「セックスしたくなったらおいで部屋」なんて、生命に訴えかける、超プリミティブでエキセントリックな空間だよね? そんなものがそこここに存在している、超クールジャパン。「ちょっと座りたいね、休憩しようか。酒買ってラブホ行く?」じゃねーんだ、いい加減にしろ。


◆だれだって”建築家”部門
新時代のごはん装置「ミングル」を自宅に作ってみた話|有賀 薫 さん

これからの建築はこういうところからイノベーションが起こっていくのだろうか、とハッとさせられたnoteでした。
スープ作家として、簡単に作れて栄養たっぷりのスープレシピを紹介している有賀さん。忙しく働く現代人が少ない時間と労力でいかにして豊かな食生活を送ることができるか、その回答としてあらゆる要素を削ぎ落としたミニマルなごはん装置を考案しました。そして、その小さな流しとIHコンロ、食洗機を備えたごはん装置を生活の場に実装する試みとして、自宅のリノベーションを敢行。有賀さんの食生活から考える現代の生き方に対する思想を種に、設計者の方がごはん装置を「ミングル」と名付け、ひとつのプロダクトとしても洗練されていき、ミングルのある食卓をデザインしていく過程が綴られています。
食のプロフェッショナルとして現代人の生活を見つめる有賀さんの、建築家としての一面を垣間見たような新鮮味を感じる文章でした。

ミングルは、このキッチンそのものを指すというより、こうしたキッチンを中心に繰り広げられる、人々の新しいライフスタイルの概念です。ミングルは、簡素でありながらも、家族のコミュニケーションや、料理の時間を楽しむことを大切にする生活をめざしています。
これからの時代は、こんな食卓のあり方が好ましいのではないか、そんなことをみんなで語り合うための場でもあります。ミングルをきっかけに、これからの新しい家族のくらしを発信したい。

ですから、これを使ってどんな楽しいことができるか、どんなクリエイティブな生活が考えられるかを、今からみなさんと一緒に考えてみたいのです。

◆建築的思考の実践部門
どうすれば「作り手」のように考えることができるのか?|臼井 隆志|ワークショップデザイン さん

ワークショップ・デザインを専門にする臼井さんが、ある建築家と対話したことをきっかけに、空間を使う際にどのようにすれば建築家の思考を実践できるのだろうかと考えたことから書かれたnoteです。
ここで臼井さんは、空間を構成する面をどのようにレイアウトするか、その工夫に建築家の専門性を見出し、ワークショップを通してその専門性を体得するためにはどのようにすればよいのかと考えを巡らせていきます。
建築の専門外の方がいかにして建築的思考を活用するのか、あるいはそのことによってどのような価値を生み出し得るのか。臼井さんが実践の場でどのような試みを行っているのか、非常に興味をもちました。いずれ潜入取材を試みたいところです。

ぼくたちはいつも空間を工夫して使おうとします。

子育て中の人なら家具のならべ方に頭を悩ませたことも少なくないでしょう。ビジネスマンであれば会議の席のならびに腐心します。ワークショップの会場づくりはワークショップデザインの最も大切な要素です。保育士の方々は、施設内の什器や遊具のレイアウトといつも格闘しているはずです。

そうかんがえると、ぼくたち素人に、建築家がもっている空間のつくりかたについての「暗黙知」をちょっとでも共有してもらえたら、ぼくたちはもっと建築を、いや、暮らしや仕事それ自体を楽しめるようになるはずです。そういうときに役立つのがワークショップなんだよな〜と。

※こうした建築的思考が建築以外の分野で発揮されている事例に興味がある方は、建築出身のブランディングデザイナー、西澤明洋さんの『アイデアを実現させる建築的思考術 アーキテクチュアル・シンキング』もおすすめです。

◆時代を切り拓く新鋭の貪欲な学び部門
「LOG」や「ONOMICHI U2」 尾道という街をデザインするホテルたち|SOCIAL HOTEL LAB. さん

リード文にある通り、ホテルに新しい価値観を提供し注目を集める、ホテルプロデューサーの龍崎翔子さんが、ホテル業界の第一線で活躍している方に会いに行く連載のひとつ。
ホテルの空間づくりやブランドの空気感をどのようにつくりだしているのか、あるいはスタッフの役割・モチベーションといった龍崎さんが本気で聞きたいと考える質問をぶつけていく本連載はどれも面白く、こうしてnoteで読めることがとても嬉しい。特にいま建築的にも話題作が立て続けにつくられている尾道において、まさにその話題の中心にある「LOG」(スタジオ・ムンバイ)や「ONOMICHI U2」(SUPPOSE DESIGN OFFICE)、尾道駅舎(アトリエ・ワン)などの事業を統括するTLB株式会社の吉田挙誠さんへのインタビューは、建築好きには必見の内容。
すでに街のブランドが出来上がっている場所に後乗りするのではなく、宿泊業を通して街の魅力を再発見し、街に還元していきたいという龍崎さんが、まさにその格好の事例として尾道に迫った、迫真の記録です。
建築の写真もたくさん使われているので、それだけ見るのも楽しいですよ。

談を終えてーー
ほんの数年前までは、ラーメンとロープウェイがあるだけの、半日で観終わってしまう街だったと言われている尾道。そんな中で生まれた「ONOMICHI U2」が街の魅力を丁寧に掘り起こし、光を当てたことで、時間をかけて街の景色が変わっていき、新しい旅のあり方が生まれてゆきました。「宿が拠点となって人の流れを生み、街の姿を変えていく」という思想が、決して机上の空論などではなく、これを実際に成し遂げた先人がいるということに、宿泊業の未来への希望を感じました。

◆とにかく騙されたと思って読んでほしい部門
徹夜明けに、知らない人とウイグルを旅した日々のこと|砂漠 さん

ちょっと僕の言語力では紹介しようがないのですが、とんでもないnoteに出会ったので紹介だけさせてください。2000以上のスキが付いているので、それを頼りに、騙されたと思ってなにとぞ…!
とにかくもう、冷静に、淡々と、世にもイカれた旅の話が、そして美しい建築の話が綴られているので。全3回を予告されているうちの2回分が公開されています。あぁ…この続きが読める幸せ…



◆さいごに
2018年の年明けからnoteを書くようになり、昨年も1年間で面白かったnoteの個人的ベスト5を紹介しました。
昨年は建築系の面白noteを毎月ピックアップして紹介する試みも行っていて、月によっては紹介したい記事の本数が揃わないといったこともありました。
今年は建築系の書き手もどんどん増えていき、多少話題になっていてもとても全部は読みきれない、さらに自分からまだだれも注目していないnoteを掘り起こしにいくなど到底不可能な状況になっています。
建築について面白い記事を書いているのにだれにも発見されていない人、建築の新しい面白がり方を提案している人も、僕が見つけられていないだけでどんどん増えてきているに違いありません。
noteで活躍されている方を見ると、noteだからこそできる新しい書き手同士のつながり方を生み出している人もたくさんいらっしゃる。僕も編集者として、自分の興味関心について書くだけでなく、いろんな書き手の方と楽しいことを考えていきたいなと考えた1年でした。
2020年は、1月に3本のインタビュー取材を予定しています。そちらもぜひお楽しみに!!


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